♯39 生還








 平原の外門。リディアらは皆の帰りをただひたすら待っていた。


 遠方の城門から、二人を担ぐ三人の鎧を着た者たちが出てきてた。ゆっくりこちらに歩いてくる。


 リディアとロウ、アニス、ギアンはその者たちに向かって走った。


 鎧を着た者はハルマキ、カムイ、ローズだと分かった。そして、担がれた二人はジャンヌ、ダンテだとすぐに分かった。


 「ジャンヌ!ダンテ!」


 リディアはジャンヌとダンテを交互に診た。ジャンヌは気絶しているだけのようだが、ダンテは。


 ダンテの心臓は止まっている。リディアは回復魔法を何種類も試したのだが、何も変わらなかった。そもそも蘇生の魔法などこの世に存在しない。


 「女王」


 リディアはハルマキを見た。ハルマキは自身が持つ力をまだ全て把握していない。だが。


 ハルマキはダンテの体に手のひらをあてた。黄緑色の魔力が放たれる。そして。


 ダンテの体がビクッと痙攣し、思いっきり息を吸い込んだ。


 「はぁ、はぁ……。ふぅ」


 ダンテは頭を掻いた。


 「死んだと思ったけど、生きてたか」


 リディアがダンテに抱き付いた。ダンテは両手をリディアの体と逆の方へ反り返した。


 「ばーか。お前は一回死んだんだよ」


 「な!まじか……。で、なんで生きてんだ?」


 リディアがダンテの体から離れた。


 「ハルマキさんの魔法で蘇生したのです」


 ダンテは鎧を纏った三人を見た。


 「なんだお前ら、その格好」


 「知らね。この鎧のお陰でリュークも倒せたし、大事にしまっとくよ」


 ハルマキが言い終わったその時、三人の鎧は砂のようにさらさらと消えた。


 「おい!お前が変なこと言うから鎧消えちゃったじゃん!」


 ローズが激怒した。


 「人のせいにすんじゃねぇよ!鎧!でろ!鎧!カンバーック!」


 ハルマキがおかしなポーズを取っていた時、リディアの膝の上で寝ていたジャンヌが目を覚ました。


 リディアの顔が最初に飛び込み、ジャンヌの瞳から涙がこぼれた。


 「女王陛下。ごめんなさい」


 ハルマキら三人はジャンヌの声を王の間で聞いている。だが、アニスらは初めて聞いたのだった。


 リディアはジャンヌの頭を撫でた。


 「ダンテは生きています。リュークも倒されました。ありがとうございます、ジャンヌ」


 ジャンヌはリディアの言葉を聞き、すっと立ち上がり、ニヤニヤするダンテの前に立った。


 パン、と乾いた音が草原に鳴り響いた。


 こうして、多くの謎を残して、後にセロリア城の戦いと名付けられたこの戦いは終わった。


 「なんで俺、殴られたんだ?」






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