♯32 賢者


 「あぁ。貴様に殺され、冥界へ落とされた。冥界の主にセロリアの人間100万の魂を土産にすると言ったら、冥界の力を与えられ甦らせてもらったのだ」


 リュークは甲高く笑った。


 「貴様らには見せしめになって貰うぞ」


 5人は魔物に抱えられ、運ばれた。








 リディアと兵士100万人は、3日間、地下をひたすら進んだ。そして、出口が見えた。


 リディアは天井の蓋を外し、外に出た。建物の中のようだ。外からは多数の人の話し声がする。扉を開き外へ出た。日の光が眩しく、目を瞑った。再び目を開き、ここは町だという事が分かった。


 リディアは兵士2千人だけを呼び、食料と水を調達して回った。そしてこの町はアニスとハルマキが店を持つ町だと分かった。


 城に残された5人は無事ではないだろう。早く打開策を考えなければと思ったその時、突然声を掛けられた。


 「久しいの、リディア」


 その老人の声には聞き覚えがあった。


 「ロウ導師……!」


 かつて日本にいるハルマキならば、帝国を終わらせる事ができると明言した賢者、ロウだ。


 「城が魔物に襲われています。私達を逃すために、城に残った者たちがいます」


 「ふむ」


 ロウは長い髭を撫でた。


 「わしの古代魔法でお主の兵全てを強化しよう。これで侵略者の兵は怖くない。じゃが、念のためまた精霊の言葉を聞く」


 ハルマキの存在を言い当てた、あの魔法だ。


 ロウは厚みのある古い本を取り出し開いた。


 開いたページから光が放った。


 そして光が消え、本を閉じた。


 「神の名を持つ三人の子。再び帝国を終わらせる」


 「神の子ですか」


 「心辺りはないかな?」


 リディアは考え込んだ。


 「竜神、鬼神、死神。どうじゃな」


 「神の名を持つ三人の二つ名」


 ハルマキは今、城にいる。無事を祈るが、無事かどうかは分からない。カムイは文を出せば来てくれるだろう。ローズは来てくれるだろうか。


 「時間はないぞ。二人に文を出すんじゃ」




 



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