♯30 平和の唄、そして


 そう、ギアンはかつてハルマキに帝国の情報を提供していた。その後、帝国に情報を漏らした事がバレたらまずいと、連絡を絶っていた。


 「リディア女王の情けで、帝国兵は今やセロリアの兵だ。俺は元々騎士だったから、そのまま騎士にしてもらった」


 アニスは首を傾げている。


 「あぁ、こいつのお陰で俺は女王に会えたんだ」


 「やめろよ。俺も帝国のやり方には元々賛同してなかった。いつか滅びちまえってな」


 ハルマキとギアンは久しぶりの再会で会話が弾んだ。アニスはギアンの助力に心から感謝した。


 「女王陛下の夕食の時間だな。お前らはどうすんだ?」


 「もうそんな時間か。夕食に誘われてる。お前もどうだ?」


 「はは、馬鹿言うな。ダンテやジャンヌは騎士長だから食事を一緒に出来る。俺みたいな平騎士が一緒していい訳がねぇ」


 「そういうもんなのか」


 「あぁ、そういうもんだ。おっと、俺も夕礼だ。遅れたら不味いから、じゃあな」


 ギアンは足早に去っていった。


 




 


 「ギアンは奪還戦争の立役者だったのね」


 「あぁ。帝国に居ながら俺に協力した命知らずだ」


 ギアンの話をしながら、二人は食堂へ向かって歩いた。









 二人は食堂へ到着した。既にリディアとジャンヌ、ダンテが席に着いていた。


 「ハルマキ。女王陛下を待たせた罪は重い。お前だけ犬の餌な」


 ハルマキは無視して席に着いた。ダンテが睨みを効かせてくる。


 「さ、戴きましょう」


 リディアの声で皆が食事に手をつけた。


 「やっぱ、ここの飯が一番うまい!」


 「当たり前でしょ、セロリアいちのシェフが作ってるんだもの」


 談笑しながら皆は食事を楽しんだ。普段は食事の際に談笑などあり得ないのだが、アニスとハルマキが居るから特別なのだ。


 皆が食べ終わったその時。城の警鐘がけたたましく鳴り響いた。




 




 

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