♯28 双刃






 細身の鎌が太く頑丈なものへと変化した。


 「これで、なんでも斬れる」


 ハルマキは剣先を再びローズに向けた。巨大な炎の竜が一匹、ローズに迫る。


 ローズは地を蹴り巨大な竜に突っ込み、切り裂いた。


 ハルマキの元へ迫ったローズは囁いた。


 「なかなか面白かったよ」


 ハルマキは胴体を切断されたと思った。しかし直前に体を引っ張られ、かわしていた。


 ハルマキは首根っこを掴まれたまま、地上に降り立った。


 「もう離せよ、カムイ」


 いきなり離されたので、ハルマキは顔から落ちた。


 ローズはゆっくりとカムイの前に立った。


 「カムイ君だね。君ら僕より弱いからさ、二人で来なよ。もし勝てたら城とエルフは諦めるよ」


 カムイはハルマキを見た。


 「おい」


 「はいはい、二人でなら余裕だな」


 カムイとハルマキ。日頃から殺し合いを行ってきた二人だ。呼吸のタイミングから癖まで全て互いに分かりきっている。


 「じゃあ、行くよ」


 ローズはカムイに向け飛んだのだが、ハルマキに邪魔をされ、その隙にカムイに脇を斬られた。


 距離を取ろうと後ろに退ったが、二人は追ってきていた。カムイを斬ろうとすればハルマキに斬られ、ハルマキを追えばカムイに邪魔をされる。


 「なんなんだよ、お前ら……」


 ハルマキがおどけて言った。


 「俺とカムイを相手にしたのが運のつきだ」


 ローズは突然笑いだした。


 「君らには勝てない気がするよ。……今はね。今度こそ貰いにくるよ。君たちの首をね」


 






 ローズらファントムローゼは外門へ消えていった。


 踊場で見ていた族長とリディアは手を取り合って喜んだ。


 「これでエルフの里も平和になる!」


 「よかった、ほんとに」








 ハルマキとアニスは店でダラダラと過ごしていた。ファントムローゼが城に攻めてきて、ハルマキとカムイが撃退した事は記事になったが、エルフの里に関しては最上位機密扱いとなっていた。


 「飯食いに行かねぇ?」


 「いいけど、ゼペルさんが」


 常連客のゼペルは手のひらを上に向けた。


 「ほれ、鍵をよこせ」


 「ありがとう、じいさん!」


 ハルマキとアニスは賑やかな街道へ出ていった。


 「なんちゅう店じゃ」


 ゼペルは幸せそうにウィスキーを口に含んだ。








 人が行き交う街道を二人は歩いていた。


 「肉が食いたい」


 「私はスープとパンがいいわ」


 肉もスープ付きのパンもある、いつもの店に決まった。


 食事を終えた二人は、また店へと帰っていった。





 

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