♯27 くすぶる炎




 結界の外、ハルマキとロキは戦闘体制に入っていた。


 「負けるかもな。俺らより強いみたいだし」


 「負けると分かったら怖じ気づくのか」


 「んな訳ねーだろ。カムイより強い相手だ。シバより強いかな?」


 「知らん、俺から行くからな」


 その時、赤いローブを纏った集団が、ハルマキらの前に現れた。


 先頭には大鎌を持った少年がいる。


 「やぁ。ハルマキ君、ロキ君」


 あいつが、ローズ。


 「僕はファントムローゼのリーダー。死神ローズだよ」


 ロキの瞳に炎が宿った。両手を構え、ローズを囲むように剣の華を咲かせた。だが、ローズの鎌で全ての剣が砕かれた。


 一瞬でロキの傍らまで移動し、鎌で腹を抉った。


 大量の血を腹から流し倒れるロキ。


 「これで二つ名なの?」


 ハルマキは炎の翼を背中に出現させた。


 剣と鎌が激しくぶつかり、火花を散らした。


 





 


 ハルマキの手のひらから炎の球体が弾けとんだ。だが、ローズの鎌で難なく切り裂かれた。


 そして、ハルマキの肩から脇腹にかけて深く鎌で抉られた。


 「弱いね。最強の二つ名さん」


 薄れ行く意識の中、ローズの言葉だけが残り、意識を失った。








 目を覚ましたハルマキは、ここがまだ族長の部屋の中だと分かった。


 「どうなった」


 ハルマキの傷は痛むが、治りかけている。


 「あなた達にはエルフの秘薬を使わせて貰ったわ。それとローズは森から立ち去ったわ」


 「何か取られたのか」


 「いえ、何も。傷は平気?」


 「あぁ。急いで城に行かないと」


 エルフの兵士は諦めたのだろう。ファントムローゼの次の標的はセロリア城だ。


 族長が中に入ってきた。


 「これを」


 ペンダントが渡された。


 「このペンダントがある場所に、私は転移できる」


 ハンスと別れてアニス、ロキ、ハルマキの三人は飛竜に乗り込み城を目指した。








 セロリア城、王の間。リディア、アニス、ハルマキ、ロキと族長はテーブルを囲んで話し合っていた。


 「ハルマキさん、ローズの力はどれ程のものでしたか」


 「強い。でも勝てない相手じゃない」


 皆がハルマキを見た。


 「俺の得意とする戦い方は、超広域魔法でエンジンをかけながら、速さと力を徐々に上げてくんだ。城の平原なんかは丁度いい広さだ」


 「次やったら勝てるとでも言いたいのか」


 共にローズと戦ったロキが言った。ロキには勝てる勝算がなかった。


 「あぁ」


 リディアらはハルマキとローズを戦わせる事を第一の作戦とした。そして、念のためカムイや他の二つ名に手紙を送った。









 翌日の朝、皆の元に伝令が届いた。


 「伝令!外門の警備兵がやられました!侵入者です!」


 ハルマキとロキは急いで外へ出た。平原をゆっくりこちらに向かってくる集団が見えた。


 「ロキ、巻き添え食らいたくなかったら、離れててくれ」


 そう言ったハルマキは、炎の翼で天高く舞い上がった。


 「やぁ、ハルマキ君。何度やっても同じだよ」


 ローズは地を蹴り、猛スピードで空に浮くハルマキに迫った。


 ハルマキは剣先を迫りくるローズに向けた。剣先から一瞬で炎の刀身が伸びた。ローズは鎌で防いだが、肩を斬った。


 ハルマキは頭上に剣を掲げた。一匹の炎の竜が雲に消えた。そして、数百の炎の竜が地上に降り注ぐ。


 「これが君の本気かぁ。いい、いいよ」


 ローズは凶悪な笑みを浮かべた。


 数百の炎の竜の全てをローズに向けた。最初の一匹は斬られたが、残りは全てローズにぶつかり爆散した。


 激しい爆発は数秒続いた。土煙がはけた。


 全身から血を流すローズ。


 「ふふ。やってくれたね。……じゃあ、僕も本気を出すよ」


 


 

 

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