♯26 死神の意図
ひたすら森を歩いていると、ハンスが立ち止まった。
「ここだ」
ハンスは首にかけた小さな石のついたネックレスを外した。
石から眩い光が放ち、目の前に光の壁が現れて、消えていった。
「結界が開いたぞ!」
ファントムローゼが4人、姿を現した。
ハルマキは手のひらをファントムローゼに向けた。ロキは人差し指を立てた。
爆炎が轟き、剣の華が咲いた。断末魔を聞きながら、四人は結界の中へ消えていった。
結界の中を歩いていると、すぐに里の入口が見えた。
四人はエルフの里へ足を踏み入れた。
木造の建物が連なる小さな里だ。里を歩いているエルフ達は険しい顔をしていた。
「みんな!ハルマキを連れてきたよ!」
エルフ達が一斉にこちらを見た。小走りに迫ってくる。
「ハンス、どれだけ心配したと思ってるんだ」
「急に居なくなるから心配したぞ」
すると建物から威厳を感じるエルフが歩いてきた。
「ハンス。この者たちは」
「族長。二つ名を二人連れてきました」
族長と呼ばれた人物は、頭を抱えてしまった。
「里に人間がやってくるなど、前代未聞。……だが、来てしまったものは仕方あるまい。皆さん、こちらへ」
族長の家に案内された四人は、テーブルを挟んで座った。
「ハンス、なぜ黙って里を抜け出した」
「族長が言ってたから。ハルマキなら、ローズに勝てるかもしれないって」
ため息を漏らしたあと、族長は茶をすすった。
「この方がハルマキさんかな」
ハンスは頷いた。
「確かに強い魔力を感じる。魔剣に呑み込まれたシバを倒した実力もある。この世で死神を倒せる可能性があるのは、ハルマキさんとカムイしか居ないだろう」
カムイはこういう面倒な戦いには絶対に参加しない。消去法でハルマキが選ばれたのだろう。
ハルマキは気になっていることを訊ねた。
「ローズの狙いはなんだ」
族長は俯いてしまった。そしてハルマキを見て言った。
「エルフの兵士を欲している。兵士を寄越さなければ里を滅ぼすと」
なるほど、それでファントムローゼは里を滅ぼしにかかっているのか。ハルマキらは黙って族長の話を聞いた。
「エルフの里を滅ぼし、兵士を得たら次の標的はセロリア城だ。奴らは国を乗っ取るつもりだ」
アニスが勢いよく立ち上がった。椅子が倒れた。
「これはもうローズとエルフだけの問題じゃないわ。リディアに知らせるわ」
族長はリディアを止めようとしたのだが、息を思い切り吐いた。
「ローズをこの場から撃退できたら、私もセロリア城へ行こう」
「あなたが、どうして?」
「ローズはまた襲ってくる。ローズを討たねばそれは変わらぬ。リディア女王に協力してもらう他はない」
「分かったわ。私は補佐官のアニス。文を出しておくわ」
アニスはサラサラと手紙を執筆し始めた。
ハルマキとロキはただならぬ気配を感じていた。
「なぁ、とりあえずローズを追い出すには倒さなきゃだろ?」
族長は頷いた。
「で、今さ。すげー近くにローズ居るんだけど、行っていいか?」
皆がぎょっとハルマキを見た。
「是非とも行って欲しいのだが、いいのか」
ハルマキは頷いた。そしてロキと立ち上がり、二人は入口へ向かった。
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