♯25 薔薇を持つ亡霊





 四人を乗せた飛竜は、少し重そうに飛んでいた。


 「完全に定員オーバーだな」


 エルフの森は意外と近く、飛竜で半日の場所にあった。今まで里を誰も見たことがないのだから結界はかなり強力なのだろう。


 そうこうしている内に森の入り口へ到着した。


 多数の魔力を感じる。ファントムローゼのものだろう。


 「戦闘と二人の護衛に別れよう」


 「俺が戦う」


 「言うと思ったけど、少しは話し合いも」


 ロキは森へ足を踏み入れた。


 「なんで二つ名って、あんなんばっかなんだ?」


 「あんたも二つ名でしょうが」


 ロキが敵と対峙し、ハルマキは二人の護衛役となった。四人はハンスの指示で森を進んだ。


 しばらく歩いたとき、気配を感じた。


 ロキは人差し指を立てた。


 「待て、ロキ!まだ敵かどうか」


 奥の方で剣が地面から突き出た音と、悲鳴がこだました。


 四人は急いでロキが葬った者の元へ駆けつけた。


 赤いローブを纏った男が気絶している。


 「赤いローブを着てる奴らがファントムローゼだ」


 ならば、こいつも。


 「ロキ、敵かどうか分からないのに攻撃すんなよな!」


 「殺していない」


 殺さなければセーフとでも言いたいのか。


 「赤いローブは殺っていい。それ以外は攻撃すんなよ!まじで!」


 ロキは軽く頷いたが、本当に分かったのだろうか。


 四人は森を進んだ。








 「ハルマキ。ロキ兄ちゃんって強いけどちょっと怖い」


 「ハンス。あれは怖くない、敵と味方の基準がちょっとズレてんだよ。話しかけてみたらどうだ?」


 ハンスは恐る恐るロキに近付いた。


 「なんだ」


 「あの、ロキ兄ちゃんって若いけど、何歳?」


 「竜神と同じくらいだ。17だ」


 「竜神?あ、ハルマキの二つ名か。……そんな若いのに二つ名だなんて、凄いよ」


 「なればいいだろ。お前も」


 ハンスは俯いてしまった。


 「俺、弱いから」


 ロキは鼻で笑った。


 「最初から強いやつはいない」


 ロキの言葉が胸に刺さった。


 「俺、頑張ったら二つ名になれるかな?……初めてのエルフの二つ名になれるかな!」


 「さぁな」


 ロキはその後何も言わなかったが、無言のエールを送ったに違いない。


 


  

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