2章 死神の影

♯20 女王の誘い






 王城奪還戦争と名付けられたあの戦いから3ヵ月後。ハルマキとアニスは城に一番近い町で酒場を開店していた。最初の1ヶ月で空き家を探し、改装を終え、更に1ヶ月後にオープンした。


 「買い物行ってくる」


 ハルマキは手のひらをアニスに差し出した。手のひらに紙切れが落とされた。


 ハルマキは町へ繰り出し、メモを見ながら次々と食材を購入していいく。


 ハルマキがアニスと共に営んでいるのは酒場だ。酒の他にステーキやパスタなども提供している。しかし客は少なく、常連は二人だけだった。


 買い物を終え、アニスに食材を渡した。


 「ありがと。ん、どうしたの?」


 ハルマキは最近、ぼーっとしている事が多い。アニスは気になっていた。


 「いや、平和すぎて調子狂ってる」


 「そのうち慣れるわよ」


 ハルマキはこの3ヶ月、剣を握っていない。最初のうちは何かあるかもと剣を腰に差していたのだが、今では自室に眠っている。


 丁度その時、窓から小鳥が入ってきて、アニスの肩に止まった。


 「戦の匂いがする」


 アニスは小鳥の足から手紙を外し、拝見した。


 「残念。リディアから延び延びになってたセロリア復活祭の招待状よ」


 「はぁ」


 「ため息つかないでよ!ん?」


 アニスは招待状の終わりの方を見て、ニヤニヤし始めた。


 「なんだよ」


 「読みましょうか?」


 「いいから早く」


 こほん、と一つ咳をしてアニスは淡々と読み上げた。


 「今、3つの武道大会のトーナメントを開いています。優勝特典は王城奪還戦争の英雄と試合が出来る権利を得られます。ハルマキさんには是非、優勝者と試合をして頂けませんでしょうか。よい返事を待っています。だって」


 「二つ名もトーナメントに出るかもな」


 「いや、それはないわ。二つ名はトーナメントに参加出来ないって書いてあるもの」


 ハルマキは落胆した。それなりに強い者としか戦えないとは。


 「出ないの?」


 「いや、出る。絶対出る」


 アニスはさらさらと返事を書き、小鳥を放った。


 ハルマキは店の中で剣を持って素振りを始めた。


 「そんな事しなくても負ける訳ないのにねー」


 「うるせー。こっちはブランクあるんだよ」





 

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