♯19 終局






 陣営内でリディアはジャンヌとダンテの傷を癒していた。


 「兵士もあれ以上攻めてこないし、ハルマキとカムイの連絡はないし。どうなってるんだい」


 空は薄明かるくなってきている。


 すると、帝国兵からどよめきが起き始めた。


 兵士たちは武器を捨ててゆく。


 二人の影がこちらに向かってゆっくりと歩いてくる。


 やがてその影はカムイとハルマキのものだと判別できた。その手にはリュークと思わしき首を持っていた。


 リディアの瞳に涙が浮かんだ。


 「ハルマキさん!」


 リディアは二人に駆け寄った。


 「女王。戦争を終わらせてくれ」


 リディアは強く頷き、帝国兵と自軍に向け叫んだ。


 「リュークの首は頂戴しました!帝国兵は武器を捨てなさい!そして、新たな王国を守る兵士となりなさい!ここに、終戦を宣言します!」








 「なぁ、ダンテ。案内して欲しいんだけど」


 「あ?今それどころじゃ」


 「地下の牢獄に行きたいんだ」


 「あぁ、そうだったな」


 ダンテを先頭に城の中を進み、地下へ地下へと潜っていった。


 やがて、牢獄が連なる場所へ出た。


 「よっ、アニス」


 アニスは鉄格子にぶつかる程の勢いでハルマキに近寄った。


 「鉄格子斬るから、離れてて」


 難なく鉄格子を切り裂いた。


 アニスはゆっくりハルマキに近付いた。


 「みんなは無事?」


 「あぁ」


 「一生出られないかと思ったわ」


 「わりぃわりぃ。なんの説明もされなかったからな。2年もかかっちまった」


 「仕方ないじゃない、焦ってたんだから」


 「はは」


 「ありがとね。ハルマキ」


 「うん、俺もこっちに来て良かったと思ってるぜ」


 「ハルマキ……。もう帰っちゃうの?」


 ハルマキにはこの質問には答えられなかった。アニスとリディアを見つけたら帰る。そう決めてはいたのだが。


 「まだ分からない」


 「そう。もし残るなら、私と一緒にお店やらない?」


 「え、まじか。店か……でもお前女王の補佐官じゃなかったっけ?」


 「常に城に居なくてもいいのよ。現にお店やってたし」


 そういうものなのか。


 「まぁ、残ることにしたらな!そんときはよろしくな」


 「うん!さ、みんなのとこ行きましょう」







 「アニス!」


 リディアはアニスの姿を確認するやいなや、走った。アニスも同様に走った。


 そして二人は涙を溢しながら抱き合った。


 終わったのだ、全てが。


 ハルマキは巨大な城を煽り見た。


 「よぉ、アホ」


 「なんだよ、握手はしないぞ」


 ダンテはハルマキの胸を小突いた。


 「帰るのか、故郷に」


 「いや……。まだ決められないから、しばらくアニスの店を手伝う」


 「そうか。たまには城に顔を出せ。ま、お前の相手をする暇な奴はいないがな!」


 これから何ヵ月かはリュークに荒らされた法を整え、国を創らなければならない。リディアらは寝る暇すらないのだろう。


 「はぁ、疲れた」


 ハルマキらは幸福感に似た、倦怠感を感じていた。


 「もう戦争はこりごりだ」


 ハルマキは城を仰いだ。





 

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