♯18 夜明けの為に 





 ハルマキは地に手をつき、倒れまいと歯を食い縛った。ここで俺が倒れれば全てが無駄になる。


 立ち上がったハルマキには、もう剣先を上げる力すら残っていない。


 シバは魔剣を振り上げた。


 しかし、シバは後方へ突き飛ばされた。


 ぼやける視界に入ってきたのは、幾度となく戦った相手だった。


 「お前はそこで死んでいろ。リュークの首は俺が取ってやる」


 カムイは手のひらを一瞬、ハルマキに向けた。ハルマキの体力が徐々に戻ってゆく。


 「お前一人じゃ無理だ、一緒に戦え」


 ハルマキは提案した。


 「黙れ」


 カムイは猛スピードでシバに斬りかかるが、剣を弾かれ胸を切り裂かれた。ハルマキの方をちらりと見た。


 「一緒に戦え」


 「だから最初っからそう言ってんじゃねぇか!」


 二人は剣を構えた。最強の男が二人、手を組んだのだ。


 攻撃の合図もなく一斉に斬り込んだ。幾度となく斬り合った二人の呼吸は、合わない筈もなかった。


 二人の動きに翻弄されるシバ。やがてシバから血飛沫があがり、心臓を突かれて力尽き倒れた。







 カムイとハルマキは王の間を目指した。大量の兵士を斬り伏せながら、ようやく王の間の扉の前へ到着した。 


 二人は扉を蹴破り、中へ入った。


 初老の男がこちらを見て不適な笑みを浮かべた。


 「もはや小細工は必要あるまい」


 リュークの魔力はあまり感じられない。まだ何か隠しているに違いない。


 「わしを逃してくれたら、好きなだけ金をやろう」


 ハルマキは開いた口が塞がらなかった。


 「あ?」


 カムイが剣を握ってリュークに歩み寄る。


 「待てカムイ!絶対罠だから!」


 リュークは膝を折った。


 「頼む、命だけは助けてくれ」


 カムイの剣先がリュークの首もとに置かれた。


 カムイが大きく剣を振り上げた。


 「待てカムイ!まだ聞くことあんだから!」


 「ちっ」


 「リューク。一つだけ聞きたい事がある」


 「なんじゃ?言ったら助けてくれるのか?」


 「……アニスはどこにいる」


 「地下の牢獄じゃ。ちゃんと生かしている。じゃから、な?助けてくれ」


 ハルマキは剣を振り上げ、そのまま振り下ろした。リュークの首が地に落ちた。





 

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