♯16 月明かり照らす平原






 王の間。


 「結界が破られました!」


 「ふむ」


 「兵士の数も半数に減っています!」


 「そうか。人形を出せ」


 リュークは不適な笑みを浮かべた。








 結界を突破したハルマキは再び、単身城内へ乗り込んだ。シバをなんとかしなければ、リュークは討てないだろう。


 シバがゆっくりとこちらに向かってきた。









 日は沈み、平原は静寂な闇に包まれた。


 「全然、攻めて来なくなりましたねぇ」


 ルナは陣営に戻っていた。


 その時だった。城の中から莫大な魔力を持った兵たちがぞろぞろと溢れてきた。


 「あれはまずい!魔械兵だ!」


 ダンテの言う魔械兵とは、魔力を注いだクリスタルをはめ込んで動かす人形だ。


 「やばいですぅ。二つ名クラスの魔力を感じますぅ」


 「くそ……。ジャンヌ、俺たちも出るぞ!」


 リディアとマルダを陣に残し、二つ名全員で魔械兵の討伐に向かった。








 「およそ100体か。俺が戦ってみる、人形の動きを眼で覚えろ!」


 二つ名クラスの魔力を持つ100体の人形。どんな動きをするのか。


 ダンテはツーハンドソードを構え、一体の魔械兵に斬り込んだ。魔械兵は難なく腕で剣を受け止め、剣でダンテの胸元を抉った。ダンテは素手で胸に刺さる刀身を掴み、魔械兵を両断した。


 ダンテは皆の元へ戻った。


 「あれはやばいぞ」


 「やるしかなかろう」


 ギルは大槍を構えた。


 ダンテ、ルナ、ロキ、ギル、グレンの二つ名を持つ者達は、魔械兵へ斬り込んだ。







 二つ名と魔械兵の戦いは激しさを増していた。


 皆全身から血を流し、満身創痍だ。


 「何体やった!」


 「全部で7体じゃ」


 こんな化け物があと90体も残っているのか。


 ルナは夜空を眺めていた。


 「ルナ!呑気に空なんか見てんじゃねぇ!ぐっ」


 ダンテが斬られた。


 「みなさん、もう大丈夫ですぅ」


 何がだ。皆がそう思った瞬間、ルナから溢れる魔力を感じた。


 ダンテは空を見た。満月が優しい光を帯びて浮かんでいる。


 ルナの瞳が光った。


 「みなさん、離れて下さい」


 皆はルナの背後へ回った。


 「突然魔力が、なんなんじゃ」


 「リストを見てみな」


 ギルはリストを広げた。二つ名のランク1位、ルナとなっている。


 「ルナは月の出てる夜になると、ハルマキやカムイを超える力を得る。それも満月に形が近ければ近いほどな」


 「ほっほっほ。いい満月じゃのぉ」


 





 ルナは手を翳した。無数の竜巻が出現して魔械兵を切り刻んで行く。


 あっという間にスクラップとなった人形たち。皆が感嘆の息を漏らした。


 「魔力使いきりましたぁ、もう動けませーん、陣で休んでますぅ」


 「ご苦労さん、ギルとグレンも一度陣へ戻れ。ここは俺とジャンヌが引き受ける」


 ギルはルナを背負い、グレンと共に陣へ戻った。







 「なんだい、戻ってきたのかい、情けない」


 「マルダ、そう言うな。ほっほっほ」 


 リディアの回復魔法で三人の傷を癒していた。


 「ハルマキも城に入ったし、あとはリュークの首が落ちるのを待つだけだねぇ!」


 グレンが冷静に言った。


 「嫌な予感がする。まだ何かある」


 「不吉なこと言うんじゃないよ!あんたの勘は当たるんだから!お先真っ暗かい!」








 帝城内部、シバの猛攻にハルマキは成す術がなかった。床に血が滴る。


 まずい、このままでは。





 

 

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