♯13 集う意思





 ローグの町から数キロ離れた荒れ地。ハルマキとロキは向き合う形で立っていた。


 ロキは武器を持たない。魔導士か、魔法剣を召喚するタイプのどちらかだろう。


 二人の間に緊張感が走る。


 二人は一斉に地を蹴った。ロキが手をカザした。やはり魔導士なのか。


 ハルマキの足元から無数の剣が突き出した。ハルマキは真上に飛ばざるをえなかった。


 真上から剣が現れた。まるで花びらのように回転しながら避けきれずに剣でなんとか弾いた。


 ハルマキが着地する直前に地面から剣の花が咲いた。全身が斬られた。


 「やるな」


 ハルマキの背から炎の翼が現れた。


 ロキが両手を翳した。


 四方八方から剣の群れが押し寄せて来る。


 ハルマキは反応を超える速度でロキの首元に剣を置いた。


 「やはり強いな。戦争は参加する」


 それだけ言ってロキは歩き去った。








 ハルマキは宿屋の部屋で手紙を書いていた。戦争への参加を要請する内容だ。


 だが、あいつは参加しないだろうと半ば諦めている。


 鬼神キシンカムイは帝国のままであろうと、王国が復活しようと関係ないのだ。


 ダメ元で手紙を小鳥の足に結びつけ、窓から放った。


 すると小鳥が窓から部屋の中へと入ってきた。戻ってきたのかと思ったが、この小鳥はリディアのものだと分かった。


 リディアから手紙がくるという事は、決行が近い。気を引き締めて手紙を読んだ。


 ──ハルマキさん。ザアラのマルダ女王の協力を得ました。砂漠の番犬と呼ばれる二つ名の二人も戦争に参加します。これでハルマキさん、ジャンヌ、ダンテ、ルナ、ロキ、ザアラのギル、グレンと二つ名が7名も揃いました。更にはザアラの兵士1万人が加わります。帝城の南に洞窟があります。地図にも載っているので確認しておいて下さい。この手紙が到着した丁度一週間後、その洞窟に集まりましょう。決行は一週間後の正午です。







 一週間後か。アニスをようやく助けだせる。ハルマキは全身から力が湧いてくるのを感じた。







 戦争になれば大量の人間が死ぬことになる。今は少しでも戦いから離れたかった。


 ハルマキはフードを被り町を散策していた。屋台で骨付き肉を購入し、歩きながら頬張った。


 武器屋に立ち寄り高価な剣をじっくり見た。ギルドに向かい、トリプルランクに目を通した。


 よし、もういいだろう。ハルマキの瞳に炎が灯った。


 そして、月日は流れた。







 ──決行日当日の朝。


 まだ誰も居ないか。ハルマキは一人、洞窟内で皆の到着を待っていた。


 1時間ほどして、リディアらが到着した。


 「早いですね、ハルマキさん」


 「なんか緊張しちゃってさ」


 リディアらと話しているうちに、続々と二つ名が到着した。


 「緊張しすぎて死ねそうですぅ」


 ルナが弱音を吐いた。


 「じゃあここで殺してやろうか」


 不適な笑みを浮かべるロキ。


 そしてザアラの女王と二人の番犬、ギルとグレンが到着した。


 「なんだい、もう面子が揃ってるのかい」


 「マルダ女王。この度は戦争に参加頂き、感謝します」


 「堅苦しいのは抜きだ。面子は揃ってるんだ、さっさと軍略を始めよう」




 


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