♯8 それぞれの道へ






 数十キロ離れた森の中に四人は飛竜で降り立った。


 「リディア……。女王」


 リディアは笑みを浮かべた。


 「リディアでいいですよ」


 ハルマキは疑問に思っていた。なぜアニスは俺の名前を知っていたのか。なぜ剣と服を装備していた。なぜ魔法が使える。


 「なんで俺の名を知ってるんだ?」


 リディアはすぅっと息を吸い込み言った。


 「あなたの事は賢者ロウ導師の古代魔法で知りました。帝国を終わらせるにはハルマキという者の助けが必要だと。ハルマキさんの住む世界に渡った時も、古代魔法が使われています」


 なるほど、古代魔法でいつでも帰れる訳か。


 「髪の毛が白髪になったり、魔法使えたり剣持ってたりしたんだけど、それも古代魔法?」


 





 「いえ、古代魔法ではありません。あなたは、この世界に生まれる筈だった。しかし輪廻リンネの中で何かしらの力が加わりあちらに生まれた。だから、あなたはこちらに来た時に姿が変わり魔法が使えるようになった。剣と服は魔力が具現化したものです。あなたの今の姿はあなた本来の姿と言えるでしょう」


 ハルマキは戸惑った。俺は日本人じゃなかったのか。いや、日本で生まれているから日本人なのだろう。セロリアは第一の故郷ということなのか。


 「た、ただいま」


 リディアが吹き出した。


 「お前、ぜってぇアホだろ」


 「ダンテつったか?お前チャラ男のくせにアホとかぬかすなよ。お前に似合ってるよ、アホは」


 「あぁ?こちとら女王陛下をお守りして10年、立派な騎士様なんだよ。だからお前がアホだ」


 ダンテとハルマキの間に激しい殺気が入り交じった。


 「仲がいいんですね」


 「どこが!」


 二人でハモってしまい、顔を赤らめた。







 「私たちは北の砂漠の国ザアラへ向かいます」


 ハルマキを除き皆が頷いた。


 「それなんだけどさ、俺別行動するわ」


 リディアが困惑したように表情を曇らせた。


 「いや、団体行動苦手だからさ。俺は南に二つ名探しに行くよ」


 ダンテが呆れたようにため息をついた。


 「アホの考えることは理解できないでいいんじゃないっすか?女王陛下」


 リディアは一拍おいて頷いた。


 「分かりました。ハルマキさん、どうかご無事で」


 「女王とジャンヌも気をつけて」


 ハルマキに名前を呼ばれなかったダンテが憤慨フンガイした。


 「はいはい、俺は眼中にないってか!ハルマキとか変な名前すぎるだろ。ぶっ、ハルマキだってよ!ハルマキ!はっはっは!」


 「馬鹿はほっといて行くわ、じゃ」


 ハルマキはリディアらと別れた。






 

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