♯7 女王と騎士
「いてて……。女王陛下!無事か!」
リディアとジャンヌはその場に立っている。ジャンヌの魔法であの一撃を免れたのだろう。
「俺たちじゃあれには勝てないぜ」
魔剣シバはこちらにゆっくり歩いてきている。
「ジャンヌ」
ダンテは魔剣から目を離さずに言った。
「女王陛下を連れて逃げろ」
ジャンヌとダンテは前の王国の騎士だ。リディアを守る為なら、死ぬこともいとまない。
ジャンヌはこれに頷き、リディアの手を取った次の瞬間。その場が凍りつく程の殺気に当てられた。
ジャンヌとリディアは振り返り、シバを凝視した。
シバの背後に影が現れ、一筋の光の線が描かれた。シバの背中から大量の血飛沫があがった。
シバは膝を折り、やがて倒れた。
一同は何が起こったのか理解できないでいる。
そして、倒れたシバの背後に立つ者の存在に初めて気付いた。
「何者だ、てめぇ」
シバをあっさり倒した男は何者なのか。敵なら逃げることすら出来ないだろう。白髪の男はこちらをただ見るばかりだ。
「待ってください、ダンテ」
リディアが口を開いた。
「あなたは……。ハルマキですか?」
白髪の男はゆっくり頷いた。
「探したぜ」
リディア達は敵の追撃を避けるため、一旦近くの森に姿を隠していた。
一息付いてハルマキが口を開いた。
「ほんとに探したぞ」
リディアの瞳には涙が浮かんでいた。
「私たちも、ずっと」
リディアたちはハルマキがこの世界に来ているのかどうかすら分からなかった。
「アニスはどこにいる」
この場に居ないということは、どこかに隠れているのだろうかとハルマキは考えていた。
「幽閉されています」
ハルマキは目を見開いた。
「いつからだ!」
「あなたを探しに行った直後です」
俺をセロリアに飛ばした時にいた鎧の集団に捕まっていたのか。
「くそっ……」
ハルマキは拳で地面を叩いた。
「どこに幽閉されてるんだ」
「リュークのいる城です」
ハルマキは立ち上がった。
「助けてくる」
「待て、ハルマキ」
ダンテが呼び止めた。
「城には50万の兵士がいる。更にそれぞれの町には千から1万常時待機している。民を人質にされたら一貫の終わりだ」
ハルマキは行き場のない怒りを感じた。あの帝国ならやりかねない。
「だが、手がないことはない」
リディアが立ち上がった。
「二つ名を集め、更に砂漠の国に協力してもらいます。城へ突入して一日で帝王リュークを討ちとれたら各町に伝令が届く前に戦いは終わります」
流石のハルマキも50万の兵士を一日で倒すことは不可能だ。だが数名の二つ名と砂漠の国の兵士たちが加われば、話は別だ。
「分かった。協力させてくれ」
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