♯6 想い






 ──ハルマキが帝国兵を倒し、お訪ね者になってから二日後。ある町外れの洞窟に身を隠す三人がいた。


 美しい黒髪の女が手配書を握りしめて見ていた。


 「ハルマキ……アニスは無事に連れて来られたのですね」


 金髪の男がツーハンドソードを地に突き立てて叫んだ。


 「今しかねぇ!ハルマキはこっちに来たんだ、なぁ、女王陛下!」


 女王と呼ばれた女は頷き、天空に巨大な文字を書いた。


 ──ハルマキ。リディアはここに居ます。


 帝国はずっと女王を追っていた。この文字を見た兵士たちは間違いなくやってくる。ハルマキが早いか、帝国兵が早いか。


 「ハルマキさん……」







 リディアと前王国騎士団オウコクキシダンのダンテとジャンヌはただじっと洞窟でハルマキを待った。


 突然ダンテはただならぬ気配を感じて、武器を構えた。


 リディアを守るようにジャンヌが前に立つ。


 洞窟の入り口から現れたのは、漆黒の蒸気を纏った黒い鎧の男。手には巨大な剣が握られていた。


 「ジャンヌ!ここは任せろ」


 ジャンヌはリディアの手を引き、洞窟の奥へと退った。


 「魔剣シバだな」


 二つ名の階級でいうと上から三番目。ダンテとジャンヌも二つ名なのだが、上位三名の強さは桁が違うのだ。


 シバは無言をつらぬいている。


 「刺し違えてでも時間を稼がせてもらうぜ」


 ダンテは武器を構えた。


 ダンテは呼吸を整えた。そして一気にシバに詰め寄った。


 激しい火花を散らして剣と剣がぶつかった。


 シバの大剣を弾いて、脇腹を浅く斬った。


 シバの体から更に激しく黒いオーラが吹き出る。


 大剣を高く構え、振り下ろした。


 「ジャンヌ!」


 ダンテはとっさに叫んだ。次の瞬間、シバの魔剣の力で洞窟がまるごと吹き飛んだ。





   







 

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