♯4 手紙
飛竜に乗り町へ降り立ったハルマキは、宿屋の厩(うまや)に飛竜を預けて部屋に入った。ハルマキは自分の家を持たない。アニスとリディアを探すため町と宿を転々としている。
備え付けのテーブルに向かい、さらさらと紙に字を書いてゆく。こちらに来て一年くらいで文字の読み書きを習得した。
布のバッグから小鳥が入った籠を取り出した。小鳥をゲージから取り出し、手紙を足にくくり付けた。
「ギレン」
小鳥は一鳴きして窓から飛び出した。
この小鳥、名前を言えばその者の元へ飛んで行く。かなり高価な鳥なので、一般市民には馴染みがない。ハルマキは暇さえあればランクトリプルのギルドの依頼を行う。トリプルなら一回4から5ゴルン。セロリアの通貨は1ブロン100円、1シルン10万円、1ゴルン1億円の価値がある。それぞれ銅貨ブロン、銀貨シルン、金貨ゴルンとなっている。銅貨千枚で銀貨、銀貨千枚で金貨となる。
「あとは待つだけか」
ギレンに書いた手紙の返事を、ハルマキは気長に待つことにした。
二日後の朝。ハルマキは宿屋で返事を待っていた。
窓をくちばしで叩く音がして、窓を開けた。小鳥はテーブルの上に降り立った。
小鳥の足から紙を丸めた包みを外し、それを広げた。
──よう、ハルマキ。お前んとこに小鳥が着いた次の日に、ナハトの町が狩りに合う。恐らく昼頃だ。事情は前から知ってたが、この情報をお前に教えたのがバレれば俺の首が飛ぶ。悪いがもう手紙はよこさないでくれ。あんまり無茶するなよ。
ありがとう、ギレン。心の中で感謝の言葉が溢れてくる。
明日から俺も犯罪者か。ハルマキの瞳に力が宿った。
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