♯2 故郷





 ──二年前、俺は日本で暗い思春期を堪能タンノウしていた。そのせいか、この頃から群れでの生活にうんざりしていた。


 学校では整列から一人外れて、毎回教師に怒られていた。


 嫌気がさしていた。周りと同じ生活を強要されることに。





 足取り重く自分が通っている中学校に向かっていた。気だるい。


 歩いていると路地から女性の甲高い声が響いた。


 「離さないと焼き尽くすわよ!」


 あぁ云うめんどくさいことは嫌いだ。しかもコスプレをしている。鎧に剣を持った大の大人3人が、お嬢様風のドレスを着た女の子一人に群がっている。


 だが、それ以上に群れる奴は大嫌いだ。


 「離せよ」


 俺はとっさにコスプレイヤーの腕を掴んでいた。思い切り顔面を殴られた。


 すると少女が。


 「あんた、ハルマキ?すぐに答えて!」


 殴られた拍子に尻餅をついた。なんで俺の名前を知っている。


 「だったらなんだよ」


 オレンジ色の髪の長い少女は頷き、塀に向かって杖を振った。人が通れるくらいの穴が空いた。


 なぜハルマキの名を知っているのかは分からないが今の状況はヤバそうだ。男たちの剣の刃は鋭い。おそらく本物だろう。


 男たちが一斉にハルマキ目掛けて剣を突きだして突進してきた。


 ハルマキはたじろぎ、躓いて穴に入ってしまった。


 穴の向こうから少女が叫んだ。


 「私はアニス!リディア女王を助けて……お願い」


 穴はゆっくりと閉じた。 








 見知らぬ森の中。ハルマキはただ座っていた。


 腰に帯びた剣と、布の服を纏っていた。


 「本物かな」


 試しに木を斬ってみた。数秒遅れて音を立てて倒れた。


 剣の刀身は黒く、重い。


 ハルマキはしばらく歩き、数時間で森を抜けた。


 視界に広がる大地に、美しさを感じた。遠くに町のようなものが見える。ハルマキは町へ向かうことにした。


 そしてハルマキは知る。


 この世界は地球とは違う、帝王リュークが統べる世界だということ。以前はリディア女王がこの世界を治めていたが、リュークに玉座を略奪された。リディア女王は死んだと噂されている。だが、アニスはリディアを助けてほしいと言った。アニスもリディアも探しだす。そして、俺をこの世界に放り込んだ意味を聞き出す。それまで俺は、絶対に帰らない。





 

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