ハルマキ・ブレイク・キングダム
只野趣味介
1章 夜明けの為に
♯1 セロリア
──ここはセロリアという国。財宝を求めて一人の少女が単身、遺跡に足を踏み入れていた。
少女はトレジャーハントを生業とするトレジャーハンターだ。
だが、手強い骨の魔物スケルトンやウェアウルフといったモンスターと対峙するうちに満身創痍になっていった。
「さすがにヤバいわ」
思わず口にだした瞬間。4体の大柄なオークに囲まれていた事に気付いた。
とっさにダガーを構えたが、戦う体力など残されていない。
もう駄目だ。少女は心の声をもらした。
オークがゆっくり地響きを立ててこちらに歩いてくる。
少女は目を瞑った。
もう、終わりなんだ。
あーあ、おいしい食事でもしとけばよかった。
「おい」
彼氏の一人くらい作ればよかった。
「おいってば」
何よ、うるさいわね。……ん?
少女は目をあけた。そして、真っ二つになったオークの死骸とその中心に立つ少年の姿が視界に入った。
「これ……あんたがやったの?」
聞くまでもない質問だが、この少年はそう、アホに見える。オークを倒せるとは思えない。
「俺以外ここに居ねぇだろ」
たしかに。だが、あやしい。
疑心暗鬼になっていると、再び地響きがなった。先ほどのオークより二回り以上大きなオークが歩んでくる。
「なんかお前、俺のこと変な目で見てるから、ゆっくり動くからしっかり見とけよ」
そう言って少年は腰に帯びた漆黒の剣を抜いた。オークの頭上目掛けて飛び上がった。
少年の身の丈以上はあるオークのこん棒。それを少年に向かって振りかざした。少年は手のひらをこん棒に向けた。少年の手のひらが赤く光り、こん棒の太い部分が消滅した。そして少年の剣はオークの首を捉えた。
少年が着地するのと同時に、オークの首が地に落ちた。
少年が飛び上がってから着地するまでの間に、全てが終わっていた。
「化け物」
「二つ名だからな。化け物かもな」
二つ名。この世界に十数人しか居ない、たった一人りで国を潰せることが出来るほど、強き者。その者達は、古代に生み出されたリストで確認できる。二つ名になる方法は、ただ強くなればいい。そう聞いている。
少女はリストを取り出した。
「あんた、名前と二つ名は」
少年は白髪の頭をポリポリ掻きながら答えた。
「ハルマキ。
すぐにリストから見つけた。竜神ハルマキ、上から二番目……。
リストには上から強い順で名前が書かれる。
つまりこいつはこの世界で二番目に強い。
「あ、ちなみに。俺と一番上のカムイとは、しょっちゅうやり合ってるから、半々で一位になってるよ、俺」
そんな凄いやつがなぜ私のとこに。
「なんで、助けてくれたの」
「お前の姉さんから依頼を受けた。トリプル(SSS)で出てたから、俺が来たって訳だ」
ハルマキの言う依頼とは、ギルドと呼ばれる組織が、ギルドをこなす者に強さ別に依頼をこなしてもらう仕組みになっている。ランクはEからA、シングル(S)、ダブル(SS)、トリプル(SSS)とある。
「お姉ちゃんが……」
「じぁあ、サクッと財宝ゲットして帰ろうぜ」
「え、一緒に行ってくれるの?」
ハルマキは伸びをした。
「不完全燃焼で帰れるかよ」
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