恐ろしいほど美しい
自然に勝る色はないと、つくづく思う。
都会から遠く離れたこの場所は、豊かな自然が日々を彩る。
空は瞬く間に色を変え、つられる様に白い雲が染まっていく。
道端では、鮮やかなヘビイチゴが小さな赤を散らし、名も知らない可憐な花々が季節の移行を知らせる。
収穫間際の稲穂は風に揺られ、黄金の波が打ち寄せる。
大地を覆う真っ白な雪は、色も音さえも閉じ込める。
ところどころ茶色く変色した椿も、人知れず朽ちていくホオズキの実も、いびつな青いトマトも、どれも美しく見える。
自然は自ら完璧を目指していない。人に求められて、色付こうとは決してしない。
だからこそ自然は、何かを超越した圧倒的な景色を見せてくれる。
山が燃えるほどの夕日や、吸い込まれ深く落ちていくような星空は、恐ろしいほどに美しい。
東京は、色に溢れていた。
半歩先取りをしたショーウィンドウの洋服が、間もなく季節が変わると主張する。
個性的なファッションは、その色を他人の目に焼き付けながら、交差点をするりと抜ける。
繁華街では、看板たちが見てくれ!と言わんばかりに視界へ飛び込んでくる。
地下鉄の種類を色で覚え、指し示す矢印に従って歩いていく。
東京が色を失ったら、私はきっと迷子になるだろう。
日本橋で金魚を見た。
赤や青の光に照らされた金魚の群れは、何かに操られるように巨大なオブジェの中を泳いでいた。
その中で、息絶えた金魚の白い腹だけが、妙にリアルに感じられた。
日本橋のビルの中で、自然を見た気がした。
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