第2話

 起き抜けはあんなに寒くて身を縮ませて渋っていたのに、今じゃ体がぬくぬくして伸びが気持ちいい。熱くなりやすく汗をかきやすい体質の僕は夏場の汗に苦労するのだが、冬真っ只中なので、むしろ少しは風が吹いて欲しい、木枯らしでもいいじゃないかと思うくらいに気持ちも高揚してくる。

 ふとももに心地いい重みを感じ、そろそろ帰ろうかなと公園の出口に向きを変えた目線の先に人の姿があった。そこは白色の明かりに大きく照らされ小さな川の隔たりを越えるべく歩行者用の橋が架かっている。この公園は早朝ランニングする人がいて当然なくらい人気のあるスポットなので別段気にならず、すれ違いざまに会釈するぐらいな感覚でいたのだが、姿が近づくにつれ僕はつい、目を凝らしてしまっていた。その人の見た目は運動着とは程遠く、かといって繁華街で見かけるようなオシャレでもない、随分とラフな格好のようだ。近づくにつれ何を着ているかが分かってきて、フライトジャケットに下は無地のTシャツ、デニムのショートパンツに素足で履いてるかのようなロングブーツが見てとれた。顔がよく見えないくらいに前を伸ばし明るい茶色をした長髪の女性だった。夜通し遊んでお酒飲みすぎて公園で涼んでるのだろうか、なんにせよ不用心だなと思っていると、そこに一筋の風が吹いてその女性の顔を僕に示してきた。僕が驚いたのは、その女性が予想外に幼い顔立ちをしていたからだ。

 ひょっとしてまだお酒を飲める年齢にもなってないんじゃないかと訝しがっていると突然パトカーのサイレンが聞こえだして思わずドキッとした・・のは自分だけじゃなかったようで、その女性も気づくなりさっとその場を離れて車道から離れるようにしてこちらのほうへ早足で向かってきた。結果自分のほうへ近づくことになり

「ひゃっ」

と声を上げるとともに体をビクッとさせ、しまいにはその場にへたり込んでしまった。

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