第2話出会った女性って年齢不詳のばあちゃんだけだから…

 トラン山を下って、およそ10分、俺は目指していたトランベスタに着いた。


「ここがトランベスタ魔法学園がある街か…!」


 周りを見ると沢山の馬車や人が行き交い、露店のようなものも見当たる。俺にとってそんな光景は見たことがない、不思議な空間だった。


「おぉ…これが都会か。」


 田舎者が言いそうな言葉ランキング一位辺りにきそうなありきたりな言葉だが、俺は半ば無意識に呟いた。


「退いた退いたっ!!そこのあんちゃん!引いちゃうよっ!」


「す、すみません!!」


 後ろからバタバタと馬車が走って来たのを避ける、俺は道の真ん中にいたので邪魔になってしまっていたようだ。頭を下げて謝る。怖い都会、なんでこんな冷たいの?デアーばあちゃんならもっと優しさを知れと叱ったんだろうなぁ…


「いけないいけない!俺は村から出てきたんだ!今さらホームシックになったって意味ないぞ!!」


 さて、まずは魔法学園に行きたいのだが…道がわからない…そうだ、さっきの馬車のひとに聞いてみるか。


「あのー、すみません、ちょっと道を教えてもらいたいんですが…」


 俺は走っている馬車に追い付き、問い掛ける。走りながら。


「………うぉわっ!?さっきのあんちゃん!?……え?今走ってるの?」


「はい、それより道なんですが、魔法学園ってどこに…」


「ば、化けもんかよっ!」


 馬車のお兄さんがスピードを上げて走っていく、どうやら忙しかったみたいだ、申し訳ないことをした。


「どうしようかな…道わからないし、デアーばあちゃんから貰った町の地図…ちょっと違うんだよな。」


 地形ごと変わっている訳ではないが、書かれていない道があったり、逆になくなっている壁があったりもする。


「うーん…行く当てもないし……とりあえず歩くか。」


 やみくもに探し回っていたら着くだろう。それにしても本当に広い町だなぁ…でもなんで破壊音とか、落石とか、ドラゴンとかがいないんだろう?聞こえてくるのは人の声と足音だけだなぁ。




 しばらく歩いていても、学校と思わしき建物はない、デアーばあちゃんの地図に書かれている魔法学園の位置には関係ないお店が建っていたし…これもしかして大分古い地図なのかな?


「ねぇ…そこのあんた。」


「…速く出てきて良かったなぁ、これで遅刻とかなって受験できなかったりしたらダメだし。」


「ちょっと聞いてる!?あんたよあんた!」


 ふぅ、女の子ってあんなきつい口調なんだな…女性ってデアーばあちゃんくらいしか知らないからびっくりだよ。こんな感じの子に話し掛けられたりしたら怖いなぁ。


「ねぇ!さっきから話し掛けてるんだけど!!」


「…………俺?」


 自分を指差して聞き返す。え?俺?まさかね、こんな女の子知らないもん。


「あんた…見たところ私と同い年みたいだけど…もしかして魔法学園に入りに来たの?」


「え、ええまぁ。」


 俺のことだったのか…マジで気づかなかった。てゆうか同い年の女の子ってこんな肌が綺麗なの?デアーばあちゃんってシワだらけだから、女の子もそうなのかと思ってた…へぇ…凄いなぁ、この子綺麗だ。


 赤色の髪を腰まで伸ばしていて、胸も大きい、デアーばあちゃんとは大違いだ。身長は160位かな?俺より10センチ小さいくらいか、それに白くて綺麗な肌で、シワもなければ染みもないし…ダメだ、比べる対象がぱあちゃんしかいねぇ。


「…そんなじろじろと見ないでくれる?てゆうか、魔法学園ならこのままこの先に行けばあるけど、まだ受け付けてないわよ?」


「この先なの?よかったぁ、俺道知らなくってさ、君みたいな優しい子に会えてよかったよ!教えてくれてありがとう!」


 言葉はつんけんしてるけど、優しいみたいだ、学園の道を教えてくれたみたい。てゆうかまだ受け付けてないのか、まあまだ6時くらいだもんね。


「7時から受け付けは始まるのよ、今から速く行くなんて馬鹿なやつがすることよ。」


「君はなんでここにいるの?」


「え?それはさっきまで受け付けに……て違う!私は一時間速く行ってなんていない!」


「あ、そう…」


 声の大きい人だなぁ…それに声もだけど、目も大きい。赤色の目をしてる人は始めてみた。いや、今まで見たことある人なんて数人だけれど。


「それより、あんた、第一魔法学園の受験は筆記試験がないのを知ってる?」


「知ってるけど…確か、面接と実戦形式の2つだけだったよね。」


 魔法学園は実力主義の学校なので、筆記試験はほぼ必要がないらしい、もちろん入学すれば学力も必要あるが、それ以上に結果を残せば授業を受けるどころかテストまで免除されるらしい。


「そうよ、ねぇ、ためしに戦ってみない?あたし、こう見えても強いわよ?」


「えぇ、そんなの、戦うメリットないし…どうして戦うのか説明してよ。」


 必要もない戦いなんていらないだろう、可愛いし、優しい人だと思ったのに…そんな好戦的な女の子だったなんて。


「メリットとかそういう問題じゃないの!どうせ受験するなら戦う可能性だってあるでしょ!」


 なんだその謎理論…全然説明になってないし…


「そもそも名前も知らない女の子と戦うなんて、意味がわからないよ。」


「名前を名乗れば戦うのね?」


 いやそんなこと言ってないけど?なに勝手に自己解釈してるのこの子。


「私はクレア=アルフォートよ、得意な魔法は火炎魔法、そこらの火魔法とは格が違うわ!」


「へぇ、デアーばあちゃんの業火魔法とは違うのかな?」


「業火魔法?そんな魔法使う魔術師なんてこの世界にいるわけないじゃない、強がりかしら?それより、私の名前を教えたんだから、あんたの名前も教えなさいよ。」


 業火魔法が使われない?…は!もしかして業火魔法って最弱の魔法だったりするのか!?じゃあ火炎魔法ってどんな…


「火炎魔法って……もしかしてその魔法だけで風呂を暖めることができるのか…?」


「当たり前じゃない!舐めないでよね!そんな使い方してるの見たことないけど!!それより名前よ名前!!」


 そんな、馬鹿な…!業火魔法じゃあ風呂がなぜか気体になって消えていくのに…そんなの火炎魔法の方が強いに決まってるじゃないか!


「凄いな火炎魔法!」


「ふふん!そうでしょう?これを会得するには沢山の苦労が…て違うっ!そんな話をするんじゃないの!名前を教えろって言ってるでしょ!!」


う、うるさい…声がでかすぎるよ…そんな声だして疲れないの?


「俺の名前はスルヴァ=トルミニだ。別に覚えなくてもいいけど、呼ぶならスルヴァと呼んでくれ。」


「そう、じゃあ私のことはクレア様と呼びなさい。」


凄い上からだなー。まあいいんだけどさ、そんな女の子もいるってことか。


「分かったよクレア様。よろしく頼む。」


「じょ、冗談に決まってるじゃない!なに本当にクレア様とかいってんのよ!バカじゃない!?」


えぇ…じゃあどう言えばよかったんだよ。分からない子だなぁ…




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