第85話 目を覚ませぼくらのベガスが何者かに侵略けも娘
※更新期間開きに開いて本当に申し訳ありません……またちょっとスランプでした、ええ、弁解のしようもございません……ひとまず切りが良いところで一回更新させてください……
とそんなこんなしているうちに先月の3/22でアミメキリンと謎のヒト一周年ですよ!!
本当に読者の皆様のおかげです。お返し出来るものは何も無いのですが……bentmenさんに頼んで一周年記念イラストを描いてもらったので良かったら下のリンクから飛んでダウンロードしてTシャツか何かにプリントアウトして着ると死ぬほど恥ずかしい体験が出来るでしょう(やらないでください)
アミメキリンと謎のヒト一周年記念イラスト
https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=73904385
ちなみに15000PVも突破しました!! 重ねて本当にありがとうございます!!!!
イカ本編です(イカ娘要素ここだけ)
ちょっとだけ未来のお話。ロッジアリツカのロビーには、いつの頃からかこじんまりとした本棚が置かれるようになった。
そこにはホラー探偵ギロギロ全話分を初めとする漫画の数々が納められているが、そのラインナップの中にひっそりと、一冊の童話が佇んでいる事を知るフレンズは少ない。
なぜそれがそこにあるのか? ロッジの管理者であるアリツカゲラに聴いても、誤魔化されてしまうんだとか。
三匹の小鳥 著:タイリ・クリスチャン・ワンデルセン
むかしむかしあるところに、小さな小鳥がおりました。
小鳥はいつもひとりぼっち。色んな木を飛び回っては、友達欲しいとさえずることしか出来ません。
天の神様は哀れに思い、彼女に声をかけました。
『君がとまっているこの木の虚(うろ)を、きれいにきれいにしてごらん。きっと友達出来るでしょう。君がこの木を大切に、ずっときれいにする限り、いろんな森のけものたちが、ここに遊びにくるでしょう』
小鳥はそんなことがあるのかと、天の神様に尋ねます。神様それに頷いて、そのあとにひとつ言いました。
『だけれど決してこの木の側の、あそこについた赤い木の実。あれは食べてはいけないよ。もし食べてしまったら、君に天罰がくだるでしょう』
小鳥はその言葉のとおり、虚をきれいに掃除しました。するとそこを寝床として、色んな森のけもの達が、やってくるようになりました。
特によくくる大きなのっぽと森で一番賢いけもの、小鳥はその二匹と友達になりました。
ある日出掛けた大きなのっぽ、なかなか戻ってきませんでした。それを案ずる賢いけもの、虚を出て探しにいきました。
帰ってこない二匹を想うと、小鳥の胸の中はまるでこの木の虚の様にぽっかりと穴が空いたよう。
少し会えないだけでこんな気持ちになるのなら、いっそ友達なんていらなかったのに。
そんな小鳥の気持ちに誘われ、現れたのは悪い悪魔。耳元でこうささやきます。
『あの赤い赤い木の実には、神の力が宿ってるんだ。あれをまるっと食べたなら、二匹をここに戻すのなんて、ままごとみたいに簡単さ。もし天罰がくだっても、二匹を忘れられるなら、今よりきっと良いはずさ』
甘い言葉に誘われて、小鳥は木の実を食べました。たちまち空は暗くなり、怒りの声がこだまします。
『あれほどダメだといったのに。食べずに我慢するだけで、全てが上手くいったのに。罪を犯した君にこれから、今までよりも遥かに大きい、苦しみが降りかかるでしょう』
その声が止んだすぐ後に、小鳥は煙に包まれて、それが消え去った後には、なんとその姿は増えて、三羽になっていたのです。
悪魔はそれ見て笑います。そして最後に言いました。
『一羽が三羽に別れたならば、魂だって三等分。そうは問屋がおろさない。いつかは一羽に戻らにゃならぬ。誰が残るか誰が消えるか! きっと一番人気のやつだけ、残して後は消えちゃうさ。神様の果実齧ったからにゃ、きっと最後は地獄いき! ああ面白い面白い!!』
─────────────────
アミメキリンとつなぎは、けもベガス内の宿泊用の部屋に泊まることになった。タイリクオオカミは今までの事を冒険の書に記録したいとのことで、別部屋で書き物を行っている。
「ここがお部屋“すっごいみはらし“ですか。窓があるから見晴らしは確かに良いですが、すっごいと言うほどでも無いような……?」
ロッジ同様に各部屋には名前がついているようで、二人が泊まるのは“すっごいみはらし“なる名前の部屋であった。
高いところに部屋があるロッジと違いけもベガスは二階建ての家程度の高さ、窓からは木が見えるだけである。
「いよいよ明日ね。こっそり増やしてきた仲間と、地下からの応援組と、皆でここを運営している首謀者をとっちめる。アリツさんも助け出す。全部やらなきゃいけないのは辛いけど覚悟は出来てるわ」
今までの旅路ではなだれ込む様に唐突な激戦に突入していたため、しっかり寝て備えるのはなんだか新鮮である。
「ベッドも超ふかふかですよ! まるでトランポリンの様に高反発!」
「寝づらくない? それ……」
「ティッシュも高級品が置かれてますよ! 甘~い!」ムシャムシャ
「ヤギみたいなこと止めなさい! そんな紙が甘いわけ……甘っ!!」
保湿ティッシュの少年心をくすぐるあの甘さは一体何なのだろうか。これに限らず道端の花の蜜だったり、本来甘いものが得られなさそうなところから甘味を得るのはなぜかテンションが上がる。好奇心と言うのはいつでも人生を楽しむエンジンなのかもしれない。
つなぎは部屋の内装ばかり気にしていたが、アミメキリンは別の事を気にしていた。
「とってもしっとり、……まるでロッジと張り合うかの様な部屋の名前。カジノの設置や色んな種類の食べ物、お酒の数々…… 一体なぜこんな施設を作ったのかしら……」
もうすぐ首謀者を捕まえられる。そうすれば、なぜこんなことをしたのか聴くことができる。それはアミメキリンも分かっているのだが、何か得体のしれない不安感に教われていた。
その気持ちの正体は、この事件の全貌が全く掴めていない事である。結局、やったことと言えばイカサマを暴きコインを稼いだ位でその裏にある思惑等は全く検討つけられずにいた。
このまま行くのは相手の術中にはまっているのでは? そんな不安が晴れなかった。
「やっほう! ひゃっほう! ほら! アミメキリン! さん! ベッドで! 跳ねるの! 楽しいですよ!」
「ちょっと! ベッド壊れるから本当に止めなさい!」
「あっ! 着地ミスった……うわぁぁぁぁ!」
あらぬ方向に跳ね、窓から放り出されるつなぎ。
「つなぎぃぃぃ!?」
アミメキリンの不安は、つなぎがハリウッドばりの窓からジャンプをしたショックにより忘れられてしまった。
「ジョーカーから連絡は?」
別部屋のダチョウとディンゴは明日の為、準備を整える。
「何故か、タンチョウのフレンズが手紙を持ってきたが地下からの反乱の準備も整ったらしい」
一日外出録タンチョウ。手紙配達編。
「彼女実力はありますがムラっけが強いですからね……」
ダチョウは目を閉じ地下でのジョーカー……つまるところパフィンの様子に想いを馳せる。恐らく、パフィン直接地上に出てこなかったのはいつものご飯の食べ過ぎに違いない。
とにもかくにも準備は整った。後は明日を待つだけ。激動の一日を抜け少しぼーっとしているダチョウに、傍らから声がかかる。
「せっかくだから、明日の作戦が成功するか占ってみては?」
今まで色んな所で行ってきた作戦の際も、重要な所は占ってきた。ディンゴは今回の作戦も重要だろうと、占いを促したのだ。
「そうですね。それでは……」
ダチョウは金の卵を置き意識を集中し始める。占いは現実世界では胡散臭いものかもしれないが、彼女のものは違う。サンドスターという神秘な力は、見えるときには極めて正確な未来の姿を映し出すのだ。
やがて、金の卵が静かな光を湛え始めた。
「……見えました」
「どうだろう? 作戦の成否は……」
勿論占いの結果はこれからの行動によって変わる。その為、良くない結果が出れば何か対策に動かなければいけない。また、集中して占いを行うとセルリアンに気が付かず襲われてしまうこともある。戦いが多い彼女にとってゆっくりと占い出来るのはある意味新鮮であった。
ディンゴがその内容について尋ねる。険しい顔をしていた彼女は、弾かれた様に思い切り顔を上げ、見えた未来を述べ始めた。
「明日最もラッキーなのは、うお座のあなた! 仕事も恋も絶好調! 意中のあの子から、大胆なアプローチがあるかも~♪ そしてごめんなさ~い、アンラッキーなのは、てんびん座のあなた……大事にしていたものが、跡形もなく消し飛びます……」
「占いの方向性が違う!?」
そしててんびん座が不幸すぎる、ヤバい(適当に書いただけなので読者の方のリアルラックには影響しません、あしからず)。
「も、もう一回やってみます」
ダチョウは再び占うが、どうしても未来がよく見えなかった。
「うーん、ダメですね。わりと失敗もあるので、あまり気にする必要はありませんが……」
少し考え、ある可能性に思い至ったダチョウ。
「運命が揺らぎやすいフレンズがいると、特に見えにくくなります。もしかして……」
全体の行方を占う事を止め、個別のフレンズについて占いをするダチョウ。そして……
「アミメキリンさんとつなぎさん、二人の行く先が、全く読めません。これでは、作戦の成否など占い様も無いでしょう」
ディンゴが良く分からなさそうな顔でこちらを見ていた為、少しだけ補足する。
「二人の行く先は、暗い何かに包まれそして突然消えています。これが、良い未来を指し示していると良いのですが……やはり、いやな予感は消えません」
かつて、一度だけ暗い闇に包まれた未来を持つフレンズを占ったことがある。さばんなで出会った、アードウルフ。後から知った話だが、彼女はセルリアンにのまれ元の動物に戻ってしまったという。
それから占いの技術をもっと磨くようにしたのだが、それでも見えない未来もあるらしい。
そして、この事を知った上で、放置することも出来る筈がない。彼女は不吉な未来を変える為占いの技術を磨いてきたのだから。
「仕方ないですね。金の卵よ、私があの二人の未来の為に、出来ることを導きたまえ……」
明確な未来ではなく、少しでも良い方に傾く可能性を探る方針へと変える。
やがて、卵が示したのは────
翌日、けもベガスの広間にはつなぎ、アミメキリン、タイリクオオカミ、ダチョウ、ディンゴ、キングチーターが集まっていた。
「……あら? ツチノコとスナネコは?」
「ねむ……二人には別の場所で仕事を頼んであるわ……ふわぁぁ」
早起きが得意じゃないのか、眠気を隠すことなくキングチーターは答える。
「お腹空いたわ、なんか食べるものないかしら……むにゃ」
「うーんそうですねぇ、確かロッジの倉庫から持ってきたおやつシリーズの中に……」
つなぎはつなぎについているポケットの中をがさごそ漁る。実はこのポケット、サンドスターパワーによって見た目よりも沢山のものが入るのだ! 4とは言わずとも3.5次元くらいのイメージである! いやそれは流石に入りすぎだな3.25次元くらいかな……
「ありました! 愚民グミ!」
「あえて訊くけれどそれなに」
「人がひれ伏したポーズを模したグミです。テーブルにたくさん並べてひとつずつ食べると、征服感を味わえる優れものです!!」
「そんな趣味悪いグミさっさと捨てなさい!!」
「もきゅもきゅ……ほのせひふくかん(この征服感)、病み付きになるわね!!」
「まさかの好評!?」
気分は王様、愚民グミ。税込93円でジャパリパーク内の売店で販売中。
「はぁ、実際、これから何をするの?」
アミメキリンは気を取り直してダチョウに尋ねる。
「伝えていませんでしたね。このけもベガスを取り仕切っているのは、ゲランプ大統領と自称する謎のフレンズです。普段は表に姿を見せませんが……」
「大統領の名前不味くないですか?」
「つなぎさんがおっしゃることも分かりますが、本人が名乗っているらしいので……取り敢えずそこら辺スルーでお願いします。100万枚の景品は簡易な授与式が行われ、そこで大統領より直々に手渡されます」
けもベガス中央にはステージがあり、そこで様々な出し物がされていたり目玉景品の御披露目があったりするのだ。
「その場を利用し、協力してくれるフレンズ達で大統領を囲み、捕まえた上で何故こんなことをしているのかを問いただす、というわけでございます。詳しい姿は見たことがありませんが、この恐ろしいけもベガスを作るほどのフレンズ、鉄の様な冷たい心を持ち、非道で情け容赦ない恐ろしいやつでありましょう」
ディンゴの言葉に、一同はごくり、と唾を飲む。しかし、例え恐ろしいフレンズだとしてもアリツカゲラを助けだしこのけもベガスを支配から解放するためには、避けては通れないのである。
授与式はもう少し昼に近くなってからとのことで、その時間まで怪しまれないように各々自由に過ごすこととなった。
アミメキリン、つなぎ、タイリクオオカミの三人は、これで最後になるかもと思いフリシアンのバーを訪れていた。
「もうすぐ、皆自由になると思うわ!」
「本当ですか! 良かった……」
アミメキリンの言葉に、ほっと胸を撫で下ろすフリシアン。
「これで君の瞬間ミルク淹れともお別れ、という訳だ。流石にビールにまで入れるのはどうかとも思ったが、あって数日なのになんだか懐かしささえ覚えるよ」
「なら最後はミルクだけでも頂いていきますか?」
「ああ、お願いしようかな」
タイリクオオカミは何も割らない純粋なミルクをもらい、その濃厚さを堪能しながら飲み干す。
通常牛乳は、牧場単位で様々な牛から採れたものを混ぜ、味を均一化してから出荷していたりする。
やましいこと抜きにしてフリシアンはミルクの品質に自信を持っており、混ざりけのない自分のミルクだけの味ならどんな乳牛にも負けないと断言しているのだが……
(ん? 私の舌がどうかしたのだろうか? 昨日よりも味が落ちているような……)
ふと首をもたげたその疑問だが、タイリクオオカミはそれ以上そのことについては考えなかった。
ミルクを淹れ終わったフリシアンは、それを飲む一同の様子を見ながらぽつりぽつりと喋りだす。
「今だから言えますけど私、やらなければいけないことの最中にここに留まらなければならなくなってしまって……これで、地下に捕らわれたフレンズさん達も助かりますし、本当にあのときあなた達に声をかけて良かった……!」
「やらなければいけないことってなんだい?」
タイリクオオカミは会話の流れで、当然抱くその疑問について尋ねた。
「私、このキョウシュウにいる全てのフレンズに会いたいんです! えーと………牛乳の美味しさを少しでも広める為に」
「なるほど。いや私はそのマッハミルク淹れテクニックを色んなフレンズに見せた方が良い顔頂けそうだと思ったんだが」
「これはあくまでもバーをやる上でのスキルなので……」
てへへと頭をかくフリシアン。バーのマスターとしては少し幼い印象を受けるが、しかしそんな人当たりの優しさがこの荒んだけもベガスでも生き残れた秘訣なのかもしれない。
「ふふ、いや冗談だ。あと出会っていないフレンズって誰がいるんだい?」
「それは……秘密です♪ さて、そんな感じなら皆さんがの見終わったら店じまいしてしまいますね」
作戦の成功を信じているので! フリシアンはそう言って荷物をまとめ始めたのだった。
かくして、時間は昼へと移る。
今日、この場所で100万JPの景品が引き渡されると聞き、多くのフレンズがステージ前に集まりその瞬間を弛い喧騒の中待っていた。
勿論、アミメキリン一行もそこにいた。作戦、決行の時である。
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