番外編 ある日のアミメキリン探偵事務所 クリスマス特別編

※クリスマス特別更新! 本編の後編は今週中にあげます、遅れてごめんなさい!!



 ここはどこのちほーにあるかは秘密なアミメキリン探偵事務所。窓からはろっじが見える。やっぱりその辺やん。


 さきほども書いたが探偵事務所の窓から見えるアリツカゲラが営むろっじ。だがいつもと違う点があった。あちこちに飾り付けがしてあるのだ。

 そう、時はもうすぐクリスマス。暑くても寒くても洞窟の中でも水の中でもみんながみんなサンタクロースにプレゼントを願うそんな時である。


 キリストの聖誕祭だとかそんなことは彼女達には関係ない。プレゼントを送りあったり靴下をどこからか手に入れて枕元に置いたり、楽しいところだけを上手に味わうのがフレンズ流だ。


 普通ならば仕事の場であるため飾り付けを行うなんてとんでもないところだが、悲しいかなアミメキリン探偵事務所は閑古鳥のフレンズが在中するそんな場所、暇なので飾り付けもバッチリであった。


「クリスマスが今年もやって来る♪ 楽しかった♪ 出来事と♪ エビ♪ホタテ♪ウニ♪」


 パンダパワーでツリーの木を引っこ抜いてきて、イッカクスピアで剪定し、トキの羽で飛んで天辺まで飾り付けをする。


 クリスマスツリーのおはようからお休みまで全部一人でやりながらクリスマスソングを歌っているのはアミメキリン探偵事務所の探偵以外全部兼任の従業員、ヒトのフレンズつなぎである。今日も食への渇望で歌詞がねじ曲がる。


「良くそこまでストレートに自分の想いを歌詞に込められるわね、少し感心するわ」


「飴は夜更けすぎに……寿司へと変わるだろう、うぉぉう♪」


「話聞いていない上に魚介類ばっかじゃない!」


 飾り付けを終えたつなぎがふわりと降り立ち、うんうんと頷く。


「貝殻とかをメイン使って飾りましたからね。海に行ったせいで何だかそういったものがつい食べたくなって……」


 電飾は出来ないので、ツリーも当然ナチュラルな飾り付けになる。木の実で飾るのが今年のキョウシュウクリスマスのトレンドだが、皆と同じじゃつまらないというのがつなぎ流である。


「さて、また暇になっちゃいました。もうクリスマスパーティー始めますか?」


「いや今年はロッジでアリツさんとオオカミ先生とクリスマスやるって言ったでしょ? それに今日はまだクリスマスイブで、パーティーやるのは明日。さ、ここからは仕事よ。大人しく依頼人待ってなさい」


「ぶー。どうせ来ないんですから事務所閉めてどっか遊びに行きましょうよ。けもマもクリスマス仕様らしいですよ」


「うーん、それは確かに気になるけれど…… でもこんな所でサボっちゃうとクリスマスを心から楽しめないわよ」


「ぐっ、一理ありますね……」


 そわそわ落ち着かなかったつなぎも、アミメキリンにそう諭され大人しくソファーに座る。なおソファーはお客さん用に置いてあるやつなのでここに座るのも正確には正しくないのだが。


 ぽふり、とそのまま横になるつなぎ。しかし、その耳が何かをとらえ、寝ていた上半身を起こし直す。


「なんか、地鳴りみたいな音が微かに……」


 それを受けアミメキリンも耳を床にやる。確かにそうであった。ゴゴゴという音が微かにする。そして、それは段々大きくなってくる。


「ねぇ、こっちに近づいてきてない?」


「いやーな予感が……」


 やがてその音ははっきりと聞こえるまで大きくなり、爆音に変わり、そしてそのまま探偵事務所の扉を吹き飛ばした。


 バキバキと砕ける木の音が破壊の大きさを物語る。


「あああまだジャパリまんのローンの支払い終わってないのにいいいい!!!」


 アミメキリンの悲痛な叫びももう遅い、もうもうと煙が立つ向こうは外に通じており、そこにかつてあった出入口の面影は無かった。


「あああツリーも!!!」


 木っ端微塵である。事務所はクリスマス様式から一秒でさながら廃墟っほくなってしまった。


「この速度、このパワー、この突進力、もしかして……」


 未だ晴れない煙だが、その向こう側にいるフレンズが誰か、アミメキリンには検討がついていた。


「メリー……クリスマース!!」


 サンタというよりトナカイサイド、真っ直ぐ行ってぶっ飛ばすを信条とするへいげんの王、ヘラジカ。サンタコスチュームバージョンである。




「頼みがあるんだ!!」


 寒風吹きすさぶ探偵事務所では相談にならないので、ロッジに場所を移してヘラジカの話を聞くことになった。


「あんなに切羽詰まっていたってことは……クリスマスプレゼントの事とかかしら」


 アミメキリンは多少ぶっきらぼうにそう返す。サンタの格好であることも重なり、相談の内容がプレゼント絡みであるとそう思えた。


「そうだ! よく分かったな!! 流石だな!!」


 ストレートに褒められることがあまりないアミメキリン。その言葉に、嬉しさからか少し口角が上がっていた。


「ライオンさんへ送るクリスマスプレゼントのこと? それともちびレオ用のとかですか?」


 お茶をおきながらつなぎが質問をする。そちゃです。よろしくおねがいします。


「そっちは準備できてる!! 他の皆の分もだ! ……だが、一人分だけ準備出来ていないんだ」


 少し俯くヘラジカ。どことなく、申し訳なさげに見える。


「そもそもその格好は?」


「ああ、これか? 私の部下達は皆サンタクロースを信じていてな。でも靴下置いてもプレゼントが入っていないって毎年嘆いているから、今年は私がこっそり届けてやろうと思ってな」


 ヘラジカの辞書にこっそりという言葉があることにも驚きだが、その部下への配慮も驚きである。


「それでな、他の部下へのプレゼントは用意出来たんだが……」


 ヘラジカが懐から一枚の紙をだした。グシャグシャになっているが、何か文字が書かれているのが分かる。



“へらじかさまがくれた せっしゃのいのちをすくってくれたあれがこわれてしまいました なおしたいのでぶひんをください  ぱんさーかめれおん“



 紙に書いてある文章を何回か読み返し、アミメキリンはそれを机に置いた。


「なるほど。何となく話はわかったわ」


 つまり、パンサーカメレオン(以下カメレオン)が欲しいプレゼントが何か、推理して手に入れて欲しいということだ。


「皆にはサンタクロースへの手紙だと言って書いてもらった手前、直接聞けなくてな…… 余りにも昔のこと過ぎて、カメレオンの命を救ったとかいうやつに関しても、全然思いだせないんだ」


 情けなさそうに頭を掻くヘラジカ。それに対してアミメキリンは立ち上がり、手紙を自分のポケットにしまいながら言った。


「事務所をこわしたのはまだ許してないけれど、皆の為に動こうというその心意気には賛同したわ。任せて、この探偵アミメキリンがプレゼントの謎を解決してあげるわ!!」




 へいげんちほー


「まずは、カメレオンに直接聞いてみましょうか」

「まぁこれで上手く行ったら探偵はいらないんですけどね」


 素早い移動はフィクションの特権である。その日中にロッジからへいげんまで行けるかは意見が別れるが、今回はヘラジカトナカイの牽くソリに乗って来たので一瞬であった。


 先程話題になったクリスマスけもマに行きたい気持ちをぐっとこらえ、ヘラジカ城(正確には跡地)に向かう。


 そこでは竹林に飾り付けをしているフレンズ達がいた。オオアルマジロ、アフリカタテガミヤマアラシ、ハシビロコウ、シロサイ、そして目的のパンサーカメレオンと一同揃い踏みである。


「こうやってみると、ヘラジカの部下って多いわよね。やっぱり人望があるのかしら…… 私だったらライオンに付きたくなっちゃうけれど」


 ふと、そこら辺にぬいぐるみが転がっているのに気がついた。ハシビロコウ、オオアルマジロ、アフリカタテガミヤマアラシ、シロサイ……カメレオンの物だけ無い。


「あ、それ今流行っているアニマルぬいぐるみらしいです。カメレオンさんの分が無いのは、あれですね、爬虫類の方のは鋭意制作中らしいんですよ。ほら、アミメキリンさん、さっと調べてさっと解明してさっと遊びに行きましょう。出張先で遊ぶのはサラリーマンの特権……いや僕はサラリーマンなのか、果たして……」


 自分で声をかけておいて自問自答に入るつなぎ。アミメキリンはそれを放置し、早速、プレゼントについて聞いてみることにした。


「拙者もぬいぐるみ欲しい…… へ? プレゼント? そ、それは言えないでござる!! サンタクロースへお願いしたプレゼントを他の人に教えると、貰えなくなるでござる!! 去年まではそれで貰えなかったのでござるから!!」


「そうよねぇ……」


 直接聞けるとは思っていなかったが、せめて何らかの手がかりくらいは引き出したいところだ。


「命を救ってくれた……セルリアンに襲われているところを助けて貰ったときの槍とかですか?」


 長い長考の末、よくよく考えてみればサラリー(月給)は貰っておらず、全てローンに消えているためタダ働きなのでは? という結論に達したつなぎ。深く考えることは止め聞き込みに参加する。


「そ、そんな物騒なものじゃないでござる! 本当に貰えなくなるから、これ以上は話せないでござる!!」


 透明になって消えてしまった為、それ以降は聞き出せなかった。関係ないけれど枕元にバレずにプレゼント置くスキル一番高いじゃんカメレオン。




「物騒なものではない……」


「プレゼントに危険物をお願いするとは思えないですからね、あまり有意義な情報ではないですね……」


「まぁへこたれず、次行きましょう」




「カメレオンが大ピンチだったとき……?」


 次に話を聞いてみたのは、オオアルマジロであった。実は彼女はヘラジカ軍の中でも、古参のフレンズである。何か有益な情報を知っているのではないか。


「そう言えば、彼女が私たちの軍に参加してすぐの頃、倒れたことがありましたね」


「ほんと!? どうしてそんなことが起こったの!?」


「後から聞いたんですけど脱水症状だったらしいですよ。いきなり倒れたカメレオンを心配して、ヘラジカ様が背負ってとしょかんまで連れていって、治してもらったとかなんとか……」


「多分それで間違いないですね」


「次に話を聞くべきところが決まったわね」



としょかん


「おや、滅多にこない奴らがこんな日に顔を出すとは」


「メリークリスマスなのです。我々はサンタなので」


 としょかんまで来たアミメキリンとつなぎ。博士と助手もサンタコスに着替えていた。これからみずべちほーのPPPクリスマスライブにて、サプライズゲストとして出演してプレゼントを配るのだという。


 ならば善は急げである。アミメキリンはカメレオンが脱水症状で運ばれて来たときの事を尋ねた。


「その時はですね、実は我々にもお手上げだったのです」


「たまたま、別の種類のカメレオンのフレンズがいてそいつが何とかしてくれたのです。だから詳しい事は知らないのですよ」

「我々でも、知らないことはあるのです」


「ただ、そのカメレオンのフレンズがそこら辺をごそごそしていたのは覚えているのです」


 指差す先にあるのは、様々なプラスチック製品が入った段ボールであった。水差しとかが多い。園芸用品だろうか?


「この小さい水差しで水を流し入れたとか?」


 つなぎは口に加え流し込む真似をする。中にダンゴムシが入っていたらしく口に入ったようだ。涙目で口をすすぐ。


「私、考えたのだけれど……脱水症状の原因、カメレオンにしかわからない事だと思うの。つなぎ……貴方、どんな動物の知識も持っているのよね? 何か心当たりは無い?」


 アミメキリンは推理にアタリをつけた。このピースさえ埋まれば事件は解決できそうだと。そして、そこから先の知識面をカバーするのがつなぎの役目である。


「うーん、爬虫類は確かに湿度が大事ですけれど、フレンズになったときにそこまで極端に脱水症状に陥るとは考えづらいですよ」


「そうよねぇ……ハクション!!」


 古いものを取り出したせいか、ホコリが舞ってしまったようだ。

 アミメキリンは手で押さえる隙もなくおもいっきりくしゃみをしてしまった。

 

「ちょっと、顔にかかったじゃないですか!」


 つなぎはさも当然の如くアミメキリンのマフラーのはしっこで顔を拭う。


「……くしゃみ。顔が濡れる……」


 そして、動きが止まる。


「くしゃみが、どうかしたの?」


「あーーーー!!」


 つなぎは再び、プラスチック容器がまとめられた箱を漁り始めた。


「これです、多分!」


 つなぎが取り出したのは、ボトルのついた片手サイズの小さなプラスチック製品であった。


「彼女がフレンズに成り立てでへいげんに来たんだとしたら、そして水があるにも関わらず脱水症状に陥った。それはつまり……」


 つなぎは、そこから推測されるカメレオンのとある生態について話した。


「それよ! すべての話が繋がったわ!! やるじゃない!!」


 ぐしぐしとつなぎの頭を撫でるアミメキリン、でへへと照れるつなぎ。一応断っておくと二人は相棒ポジなので付き合ってはいません。


「どーでもいーけどいちゃつくなら別のところでやるのです」


「そうなのです、我々はこれからフレンズ達にプレゼント配りにいくので忙しいのです。ヘラジカが待っているのでしょう?」


 遅刻しかけの長ンタに、めっちゃ普通に怒られたのであった。





「そうか、そうか……思い出したぞ! 何故かこれで濡らしてやったらカメレオンはそれを舐めとって、脱水症状から回復したんだ!!」


 ヘラジカはアミメキリンから依頼の品を受け取って、事の子細を思い出す。


「自然環境にいるカメレオンは、川や水溜まりのような“まとまった水“というものを認識出来ません。葉っぱについた露や、色んなところにつく水滴をから水分補給するんです。フレンズ化しても、彼女はまとまった水の飲み方が分からなかった。だから、水滴がつくような木が無い平原で脱水症状を起こしたんです」


 つなぎが説明をする。ヘラジカの手にあるのは霧吹き。水滴を、簡単に産み出すことの出来る代物であった。


「いやぁ、良かった良かった! これで夜にこれを枕元に置けば良いんだな!」


 胸を張り笑うヘラジカ。少し余裕が出たようだ。なんだかんだ心配していたのかもしれない。

 とその時、ヘラジカのポケットから何かが落ちた。アミメキリンはそれを拾い上げる。


「これ……」


 それは、カメレオンの編みぐるみであった。ぶきっちょで、凸凹で、かろうじてカメレオンだと認識出来るようなそんなもの。


「はっはっは、それは、もしプレゼントが分からなかった時用に頼んで作って貰っていたんだ! だが、プレゼントの内容がわかった今、こんな物は要らないな!!」


 いそいそとポケットにしまい直すヘラジカ。アミメキリンは気がついた。その指先にたくさんの絆創膏が貼られていた事を。


(流行っているからって、苦手な事にトライしてやらなくても良いのに。本当に、不器用なのね)


 ただ、少し心が暖かくなった。これが、ヘラジカが部下たちに慕われている理由かも知れない。

 ふと思った。この霧吹きと、あの編みぐるみ。どちらが、プレゼントに相応しいのだろうかと。



「ねぇ、ヘラジカ。一つお願いがあるの」

「うむ、世話になったからな! 何でも言ってくれ」





「私たちも、一緒にサンタクロースやっても良いかしら?」






 深夜、皆が寝静まった頃。

 カメレオンの枕元に、サンタコスのヘラジカ、アミメキリン、つなぎの姿があった。


 寝ているすぐそばに、緑と黒のしましまの靴下が置いてある。いかにも、パンサーカメレオンといった色合いの靴下だ。


(くれぐれも、静かにな。さあ、靴下に詰めるからさっきの霧吹きとやらを渡してくれ)


 ヘラジカが催促する。

 アミメキリンも頷き懐から霧吹きを出そうとする。しかし、その時……


「うわぁ、アシクビヲクジキマシター!!」


 つなぎが、何も無いところで凄まじい転び方をした。アミメキリンに激突し、霧吹きがどこかへぶっ飛ぶ。


「おわっ!! せっかくの霧吹きが!!」


 ヘラジカは探そうとするが、それだけ大きな音を立てれば何が起きるのかは自明の理。


「うぅーん…… 何事でござるか……」


 目を擦りながら上半身だけ起き上がるカメレオン。


「起こしちゃったわー」

「バレる前に退散しないとー」


 棒読みで撤退するアミメキリンとつなぎ。


「お、おい! お前たちどうするんだこれ!?」


「むにゃ……サンタクロース……でござるか……?」


 ヘラジカは焦った。霧吹きは無い。このままでは正体がバレる。手元に、プレゼントになりそうな品は一つしかない。


「メ、メリークリスマース!!」


 慌ててパンサーカメレオンの手元に編みぐるみを起き、もの凄い勢いで退散するヘラジカサンタ。


 後には、寝起きのカメレオンだけが残った。


「……これは……」





 翌朝、ヘラジカ軍の面々は貰ったプレゼントを自慢しに集っていた。アルマジロの昼寝用のさばく産高級砂、シロサイのヘラジカランスレプリカ(本物)、その他諸々皆欲しいものを貰えたようだった。


「カメレオンは、何を貰ったの……?」


 ハシビロコウに尋ねられ、カメレオンは編みぐるみを出した。


「それ、カメレオンのぬいぐるみ……? 可愛いね。でも、確かカメレオンの欲しいものって……」


 聡明なハシビロコウは、実は彼女が霧吹きを欲しがっていることを知っていた。


 カメレオンは、ポケットから霧吹きを取り出した。寝床の側に新品が転がっていたのだ。


「そう、それそれ! じゃあ、サンタクロース、本当に来たんだ……?」


 カメレオンは、ハシビロコウの方を向き、こう言った。


「霧吹きは、本物のサンタクロースがくれたと、思うでござる……」


「良かったね。じゃあ、そのぬいぐるみは誰から……?」


 カメレオンは答えなかった。ただ、編みぐるみをほっぺたにあててこう言った。


「……ふかふかで、暖かいでござる」


 結局その日、それ以降彼女はポケットから霧吹きを取り出すことはなかった。編みぐるみは、ずっともふもふし続けた。


 カメレオンは気がついたかもしれない。凸凹のぬいぐるみと、指先に怪我をしたヘラジカ。気が付かなかったかもしれない。



「本当に、あれで良かったんですか?」

「答えは、彼女自身が選ぶわ、きっと。あの編みぐるみがプレゼントじゃないと思いたいなら、近くを探して霧吹きを見つけるでしょう」


 探偵事務所に戻る二人は、あのときの事を話していた。


 結局、今回は逃げ帰って来たようなものなのでタダ働き。丸損である。

 しかし二人は楽しそうであった。


「このサンタコスも、そろそろ着替えようかしら」


「あっ、じゃあその前に……」


 つなぎはごそごそと何かを取り出した。


「僕から、メリークリスマス!」


 濃い青色のマフラー。アミメキリンが普段着けているものよりも、数段暖かそうである。


「寒さに応じて、付け替えれるようにと思って」


「マフラーを持っている相手にマフラーを贈るなんて、貴方らしいわね」


 ふふふと笑うアミメキリン。


「あ、要らないなら返してください!」


「ダメ、もう貰ったから」


 早速巻き付ける。いつものマフラーの上から巻き付けたせいでめちゃくちゃモコモコである。でも、暖かかった。


「それじゃあ、私のクリスマスプレゼント……は帰ってからのお楽しみ!」


「えー! 何ですかそれ気になるから教えてくださいよー!」


「ほら、そうやって悩む時間が楽しいんじゃない♪」


「楽しくないですよー! 気になるー!」


 そんな話の最中、ささいな変化が現れた。


「あ、雪……」


「そうね……」


 ふわふわと落ちる雪。二人の頭につもり、段々と白く変えていく。



「空も、クリスマスを祝っているようね……」

「そうですね……」







「ま、ここ今ゆきやまちほーなんで降るのは当然ですけどね!!」

「ちょっと!! それ言わなければいい感じで終われたのに!!」






 サンタクロースとは、一体何だろうか? 赤い服でトナカイが牽くソリに乗り、煙突からやって来る。それがサンタクロースなのだろうか?


 そこに定義は無い。けれど、ここキョウシュウでは、何回ものクリスマスが行われることでいつの間にかこう言われるようになった。


“プレゼントを持っていれば、それだけでサンタクロースである“


 世界を飛び回るサンタも素敵だが、感謝の気持ちを込めてプレゼントを贈ってくれる大切な誰かも、同じように素敵である。


 そして、誰かと過ごしていないでひとりぼっちだと思っている貴方も、普段から何かに頑張り何かを楽しんでいるのだろう。自分の頑張りに自分で感謝する事こそ、自分へ贈るクリスマスプレゼントかもしれない。


 筆者も良い人はいないので、聖なる夜には、ちょっと高めのチキンとケーキをお供にしようと思う。


 すべての読者の皆様に、メリー、クリスマス。









 え? クリスマス以外に読まれたらどうするんだって? いや正直そこまで深く考えてはいな(ry

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