第77話 聞いてくれなきゃ嫌、ear(イヤー)、year(イヤー) 前編
※更新に日が空いてしまい申し訳ありません……ちょっと検定試験等でごたごたしていたので遅くなりました(なお検定があったのは一週間前なので言い訳にならない模様、重ね重ね申し訳ないです)
今回はフレンズで良く問題になるヒトとけものの分両方ついているアレに関してのお話です。
「る~るる~るるる、る~るる~るるる、皆さんこんにちは、つなぎの部屋でございます。よくいらしてくださいました。今日のお客様ですが建築家でいらっしゃいますオグロプレーリードッグのプレーリーさんにお越しいただきました」
「こ、こんにちはであります……」
「あぁた、アメリカビーバーさんと凄く仲睦まじくしてらっしゃるんですって?」
「そ、そうであります……多分」
「でもさっき喧嘩してらっしゃった」
「はい……」
「どうしてなのかしら?」
「わ、分からないであります。全く心当たりがない……」
「そうなの。それは大変ねぇ。はい。じゃ、次の話いきましょ! あぁた、いろんなフレンズにご挨拶ってのをしてるらしいけれど、ちょっとやってみてくださらな「ストップ、つなぎストップ」」
地の文さえ挟まず唐突に始まった謎番組に、アミメキリンは異例の会話途中ストップをかけた。
「はい、何ですか?」
「なにこれ」
「プレーリーさんを取り調べしたいってことだったんで少しでも和やかな雰囲気にしようかと思って」
頭に被っていたスーモみたいな丸い草の塊を脱ぎながらつなぎは答えた。それどっから持ってきた。
「ちょっと話を聞くだけよ! それにさっそく脱線して別の方に話いってるじゃない!」
何だかんだ目の前で事件っぽいことが起こったら放っておけない二人。前回のお話で、森の異変について知っているかもしれないとレズパレス21を訪れたが、そこでビーバーが家から飛び出してきた場面にでくわしたのだ。
取り敢えず全力ダッシュのビーバーは置いておき、プレーリーから話を聞こうとして今に至る。
「ただ、今のやりとりだけでも聞く限りプレーリー自身には……」
「うーん、全く心当たりが無いであります…… ビーバー殿、どうして……」
「やっぱり揉め事の原因が何なのかビーバーの方から話を聞くしかないようね、探してみましょう」
「うぅ……プレーリーさんは俺っちのこと嫌いなんす……ぐす」
「ほら、しっかりしなサイ。元気を出さナイト」
「目元赤くなってるよ。ほら、ハンカチ……」
ダッシュした跡を追いかけてみると、シロサイとハシビロコウに心配されているビーバーが見つかった。
「ぐす…… アミメキリンさん、つなぎさん、お久しぶりっす……ぐす……ちーん」
ハシビロコウから“の“のハンカチを貰って鼻をかみながらビーバーは二人に挨拶をした。この泣き顔をみるに、プレーリーの勘違いとは思えない。
「久しぶり、ビーバー。ねぇ、私達さっき貴方が家から飛び出してくるのを見たの。何かあったかと思ってプレーリーに話を聞いたら心当たりが無いって言うし、一体どうしたの?」
プレーリー側から話を聞き出せない以上、本人から聞く他ない。
ここでビーバーからも話したくないと断られたら八方塞がりであったが、流石にそんなことはなく。
「心当たりが無い、プレーリーさんはそう言ったんすか……」
がっくりと肩を落とすビーバー。そして、事のあらましを教えてくれた。
「あれは、数日前の事っす……」
───────────────────
「いやぁ、疲れたでありますな。これだけ大規模の建物をたくさん造ったのは初めですから、さすがにくたくたであります……」
「そうっすね…… でもほら、この森の側のちっちゃな家。しばらくはここで二人でゆっくり出来るっすよ」
ロッジのある森の側、小さく構えた木の家だったが、二人で暮らす分には十分であった。もう少ししたら島巡りに戻ってやがてこはんに帰る。一時の住まいと思えばわざわざ一軒家まで建てることは贅沢とも言えた。
疲れた体を休めるため、二人は早めに寝床についた。そして、その夜……
「プレーリーさん、起きてるっすか?」
「? まだ寝てないでありますが」
「そっち、行ってもいいっすか?」
「……!? ど、どうぞであります」
こはんよりも雪山に近いこの辺りは冷える。くっついて寝た方が暖かい。当然の行動でありヒワイではない。
ビーバーは、耳元で囁くように話す。
「プレーリーさん、聞いて欲しいっす」
一息つき、意を決して続きを話す。
「俺っち、プレーリーさんのことが好きっす。他のフレンズと比べても、特別で、大切で……」
目を瞑り、自分の気持ちを再確認してから最後の言葉へと繋げた。
「だから、プレーリーさん、俺っちと、俺っちと……つ、つがいになって欲しいっす!……///」
恋人という言葉がフレンズ間に広く認知されているかはともかく、つがいになって欲しいというのは実質プロポーズである。一世一代の大告白。ビーバーは、恐れながらもプレーリーからの返事を待った。しかし、待っても待ってもその返事は返ってこない。
「……プレーリーさん?」
「……zzz」
プレーリーは、いつの間にか眠ってしまっていたのだ。
──────────────────
「そ、それは確かに酷いわね…… というかそこまで仲が進展してたのが予想外だけれど」
「何か最近恋バナ多くないです?」
世間がクリスマスムードだからだ、許せ。いや許してつかぁさい。
「その日だけなら、疲れていたプレーリーさんがすぐ寝たんだと思ったっすけど、連日、同じように知らんぷりされて……」
「うーん、こういうのもアレですけど、好きにしろ嫌いにしろ、好意を伝えられて全くの無反応でいられるなんてことあるんですかね?」
「オオカミ先生が前言ってたけれど、名探偵は事件は解決できるけどヒトの心はあんまり理解できないとか。私も分かんないわ……」
「それでさっき、俺っちの勘違いかもしれないと思い聞いてみたんす……」
──────────────────
「プレーリーさん!!」
小屋の中。少し離れたところにいたプレーリーに、大きな声で呼び掛ける。
「わっ!? びっくりしたであります!!」
「……昨日も、一昨日も反応してもらえなかったっすけど、今日こそは聞かせて欲しいっす! 寝床の上で俺っちが言った言葉への返事、してほしいっす!!」
「寝床での言葉……?」
驚くプレーリーの元へ、近づいてさらに畳み掛ける。
「お、お、お……俺っちはプレーリーさんとその……つ、つ、つがいになりたいって、そう言ったんす……ごまかさないで、はっきり返事してほしいっす!!」
言ってしまった、もう後戻りは出来ない。だけど、これで誤魔化されることもない。ビーバーは本気であった。
プレーリーはあまりの剣幕に目を白黒させていたが、やがてこう言った。
「何を言ってるでありますか? 分からないであります。そんな口をパクパクさせて、どうしたでありますか?」
理解できなかった。結局この気持ちは自分のひとりよがりだったのかと、そう思ってしまった。
「もうプレーリーさんのことなんか知らないっす! ばかああぁぁぁ!!」
─────────────────
そうして今に至ったのだという。
「うーむ、酷い! 酷いですね! アミメキリンさんもそう思いませんか?」
腕を組んでうんうんと頷くつなぎ。しかし、アミメキリンは顎に手をあて考えて込んでいた。
「いや、なんかおかしいわ…… その反応、まるでプレーリーには本当に何も聞こえてないみたいじゃない」
どうもそこに勘違いの原因があるような気がしてならない。
「でも普通に会話してるんですよ?」
「聞こえなくなる条件があるとか」
「条件……? そう言えば、ヒトの耳はあんまり高い音は聞こえなかったりすることもあります。ビーバーさんの声が可聴域外? いや、さすがに違いますね……」
「うーん、仕方ないわ。もう一度プレーリーの元へ行きましょう」
「そうでありますか……聞こえていなかった……自分では気が付かないでありますが」
現に今はこうして会話できている。何が聞こえて、何が聞こえないのだろう。
「という訳でここへ来るまでに色々僕なりに考えてみたので、実験タイムです!」
「実験? つなぎ貴方にしては真面目ね」
事件の解決は色々してきたが、その為に検証をしてきたことは意外と少ないかった。
「実は前々から気になっていたことがあるんですよ。フレンズの耳について。この実験でそれが分かる筈です」
言われてみるとなぜ両方の耳がついているのだう、そう思いアミメキリンは自分のけものの方の耳を触る。そんなことしてる間につなぎから声をかけられた。
「早速実験始めるので、アミメキリンさんそこに立ってください」
「分かったわ」
「ちょっとお耳を拝借」
つなぎはアミメキリンのさらさらヘアーをかき分け、ヒトの耳を出す。
ところでアミメキリンの髪のサイドにあるあの特別ふさふさしたところ、あれがなんなのかずっと気になっているのだがその謎は永遠に解けないであろう。
そして、つなぎは耳元に囁く。
「君の瞳に……乾杯🍶」
「いや何言ってるのつなぎ?」
アミメキリンからしたら意味不明だが、この行動に意味があるのだろうか。乾杯とはお酒を皆で掲げる行為だが、瞳となんの関係があるのだろうか……そう思考にふけるアミメキリンに、つなぎから不意討ち。
「ふぅー」
「ひゃん!?///」
ヒトの耳は敏感である、いいね?
「や め な さ い」
「ごべんなざい……」
耳に息を吹き掛けるいたずらをしてはっ倒されたつなぎだが、すぐ立ち上がり自分の思惑を話し始める。
「と、取り敢えずこれでけものの耳を持つフレンズでもヒトの耳は機能している事が分かりました…… ですが、同じ行動をプレーリーさんでやってみたらどうでしょう?」
「今と同じことを?」
「いや同じというかなんというか……」
アミメキリンがちょいちょいと手でつなぎを呼び寄せ、こっそり話す。
(心配になったビーバーが物陰からみてるから、勘違いされるようなさっきみたいな事は止めなさい。嫉妬させるわよ)
(フリですか?)
(マジだから)
(はい……)
つなぎはプレーリーの側に行き、耳元で囁く。
「俺様が本当のご挨拶ってのを教えてやろうか?」
「もっと普通のワード用意出来ないの!?」
けものの耳は良い為囁く声もしっかり聞こえる。その内容が聞こえたアミメキリンは突っ込まずにはいられなかった。物陰のビーバーもわなわな震えている。
「???」
しかし、プレーリーはなんのこっちゃ?という顔であった。
「無反応! …これは確実に聞こえていないわ」
これではっきりした。ビーバーに意地悪していた訳ではなく、本当に聞こえていなかったのだ。
「と、いうわけです。プレーリーさんは耳元で囁かれると聞こえないんです。囁きだけではなく、恐らく、ある程度近距離で話されると聞こえない。これはつまり……」
「そんな……」
突如、つなぎの言葉を遮るフレンズがいた。いつの間にか近くに来ていたビーバーである。
「プレーリーさんのお耳が……聞こえなくなってしまったなんて」
「ビーバー?」
「きっと、俺っちが自分の都合だけ考えて、無理を言って色んな工事をして貰ったせいで……」
思考は悪い方に加速することがある。少しの思い違いが深みにはまり、思考の坩堝を形成する。
「もうプレーリーさんと楽しくお話出来ないっす!! 俺っちのせいで! うわぁぁん!!」
「あ、ビーバー! 待って!!」
理由は分からないが、最近聞こえなくなったならそれこそ直近で一緒に過ごしていたのは自分であり、自分の責任である。そして元に戻らないと思い込み涙を流しながら走り去るビーバー。
作画が追い付いていないせいで前回のラストと同じシーンを使い回ししているが、小説なので文字で誤魔化せるところが幸いか。
「アミメキリンさん、プレーリーさんのことは任せてください!! その代わり、ビーバーさんを連れ戻して!!」
「大丈夫なのね!?」
「はい!」
そうはっきり言われたならば、自分は出来ることをやるだけである。
健脚自慢のサバンナでも、総合的に見て指折りの速さと言われたキリンの足。その見せ場が今だ。
「ビーバー! 待ちなさい!!」
渾身のアミメダッシュによってビーバーはすぐに連れ戻された。
これから解決編というところだが、文字数が5000を越えそうなので一旦区切りとさせていただく。
アミメキリンと謎のヒト、今宵は、ここらでよかろかい。
※後編はクリスマスまでに更新予定です。
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