ろっじ アミメキリンと自由で平等な独立宣言 じゃ、湯無いけど、stayする? オブ アリツカ
第76話 デンジャラス・ラビリンス・フォレスト
※お待たせしました、新章開幕です! 導入部なのでおふざけ少な目です。
自分とは本当に自分だけか。ヒトの貴方達ならそれはそうだと一笑に付すことが出来るだろう。
だがフレンズだと少しばかり話が違う。自分と全く同じ顔、同じ姿の同種のフレンズが、居るかもしれないからだ。
そんな存在を暖かく迎えることが出来るだろうか? それとも同じ見た目を持つ者の中で自分こそが最優だと蹴落とすのだろうか。
争いは何にもならない。が、夫婦となれる伴侶は一人だけのように、居場所というものを得るために時たま争わざるを得ないこともある。
同じ姿の者が現れたときの私のオススメは、折り重なるように仰向けに寝て、片方が起き上がりながら幽体離脱と言う事である。
「寒くないことは素晴らしいですね!!」
「そうね、テンション高いわねつなぎ!!」
「アミメキリンさんもテンション高いですね!!」
「なんたってロッジに帰れるんだもの! 気分も晴れるわ! 貴方は?」
「僕はもう今この瞬間に対してテンション上がってます!! なんたって雪がなくてもう足が冷たくないですからね!! 雑草最高!! 食べちゃお、もぐ……ぺっ!? まずっ!!」
当たり前である。食べません、雑草。ムカデ人間も見ません。
足元に生えるは青々とした草。雪原から持ち込んだ靴裏の雪もポロポロと落ち、自分達がゆきやまを抜けたことを示していた。寒くない事がどれだけありがたいかをテンションで示してくれた二人である。タンバリンでもあれば、さらにスーパーハイテンションになっていただろう。
そろそろお腹もすく時間帯。さすがにお昼が雑草は嫌なので、ラッキービーストを見つけジャパリまんを貰い、適当に座って食べ始める。ちほーで担当ラッキービーストが別れるようで、つなぎは境界線を往復してラッキービーストの判断を狂わせたくさんジャパリまんをせしめていた。バグ技はやめましょう。
「今回のは普通のジャパリまんね。ロッジ限定のジャパリまんとかあったかしら……?」
アリツさんが用意してくれていたのは普通のジャパリまんばかりだったが、もしかしたらロッジ限定のものがあるかもしれないと想いを馳せる。
今日は野生解放を使っていないのでいつもより少食だが、それでも4つ目のジャパリまんにかぶりつきながらつなぎはエリアの境目を眺めていた。
「しかしちほーというのは面白いですよね。境界線によって気候が馬の背を分けたようにはっきり別れているんですから。ここから先は何ちほーなんですか?」
ロッジに行くとしか聞かされていなかったつなぎは、ふとその事が気になりアミメキリンに尋ねた。
「そうね。何ちほーかと聞かれると……返答に困るわ」
「そうなんですか?」
「キョウシュウエリアの東の方は、ロッジやゆうえんち、港とかがあるけれど、どれもちほーとは呼ばないのよね、不思議なことに」
「はえー、初耳です」
この“ちほー“というエリア区分に関しても、フレンズ達が自分でつけたのか、かつてヒトがいた時につけたのかは謎である。
「だからゆきやまちほーはここまで、とは言えるけどここから先が何ちほーかは、決まっていないわ」
アミメキリンにとってロッジはロッジであり、その事は疑問に感じたことさえなかった。しかし、改めて考えると“ちほー“として確立されても良いような気はする。が、現実誰も困っていないのだから些細な問題か。
「もう少し進むと森があるわ。そこに入って少し進んだら、アリツさんが管理しているロッジ、“ロッジアリツカ“に着くの。一時間くらいかしら」
「ちゃんとした宿泊施設に泊まるのは初めてですね。アミメキリンさんの家とも言える場所。そしてタイリクオオカミさんもそこに居る。今僕の中で最も熱いスポットといっても過言ではありません。行ってないけど旅ログ評価しちゃお。“ロッジアリツカ ☆5 いつか行ってみたいです!!“」
残念ながら、行ってない場所、買ってないものに関するレビューは価値がない。というかしちゃいけないしそもそもネットを見れるような物も持っていないし。
「まぁ、色んな部屋があるしきっとつなぎが気に入るところもあるわ。……ジャパリまん食べ放題の部屋とかは無いけどね」
「お菓子で出来た部屋は?」
「あるわけないでしょ! ふふ、全く…そもそもお菓子自体ジャパリパークではレアでしょ?」
と、他愛ない会話をしながら、お昼ご飯を食べ終えた二人はロッジへと向かう……筈だったのだが。
『立入禁止』
でかでかと赤くバツが書かれ、その下にそこから先に進むことを禁じる文字が入れられた看板が、森へ行くことを邪魔していた。
「なにこれ」
「立入禁止看板ですね」
「文字が読めなくても何となく分かるけれど!! 何で進んじゃいけないの!? というか何で立ってるの!?」
全てのフレンズに通じるかは怪しいが、立入禁止なもんは立入禁止である。アミメキリンの反応を見ると昔から立っていた訳ではなく何者かが最近になってから意図的に立てた様だ。
「これはまさか、ロッジに対するえーぎょーぼーがいとか言うやつ……」
ぐぎぎ、と顔をしかめるアミメキリン。
「あ、本当に来た」
「そうですわね」
声が聞こえたので振り替えると、そこに立っていたのは、少し前にかまくらで出会った二人組であった。
「シロサイさんとハシビロコウさん! なんでここに?」
「この看板立てたのは貴方達なの?」
「ちょ、ちょっとお待ちなサイ! 質問はひとつずつでナイト答えられませんわ!」
慌てるシロサイの代わりに、ハシビロコウが質問に答える。
「えっとね、かまくらで貴方達とあってへいげんに引き換えそうとしたんだけど、ロッジに向かって走るちびレオの姿を見たって情報を聞いたから、ここまで来てみたの。それで、この森に入って────」
───────────────────
「ちびレオ、何処にいったんだろう。宛もなく探すのは難しいから、まずはロッジで情報収集だね」
「それにしても、薄暗いですわ。それにとても静かです…… 他のフレンズの方はいらっしゃらないのですか?」
「分かんない。でもロッジなら誰かいるはず…… わっと」
「ハシビロコウ、ちゃんと前を見て歩きなサイ。木の枝にぶつかったのですか」
「折れちゃった…ね。ごめんね、そんなつもりは無かったんだけど」
物言わぬ木であるが、傷つけてしまったことを謝る。ハシビロコウは優しいフレンズなのだ。
「仕方ないことですわ。先を急ぎましょう」
「うん」
二人が異変に気が付いたのは、森に入ってから1時間ほど歩いた後の事だった。
「……お、おかしいですわ。どこまで歩けど森、森、森……」
「景色も変わらないね、どうしてだろう…… あれ? この木……」
「枝が折れている……まさか」
「同じ道……? いやでも、まっすぐ進んできた筈だよ!?」
道に迷ったとしても、全く同じところに出るのはおかしい。
「しかしこれはどう見ても────ハシビロコウ! 伏せなサイ!!」
「えっ!?」
咄嗟にしゃがむハシビロコウの頭上を、シロサイの槍の一閃。
ぱっかーん!!
「セルリアン……いつの間に」
ハシビロコウの後ろに現れたのは、1メートル程の中型のセルリアンであった。
「大きさの割には簡単に倒すことが出来ましたわね。しかし、いつまで経っても到着出来ない事といい、突然のセルリアンといい、一体何が──」
「……待って、なんか嫌な予感がする」
ハシビロコウは地面をじーっと見つめる。何か、様子がおかしい。地面が動いているような……
と、そこまで考えていると突然大きな変化があった。地面が大きく盛り上がる。そしてそこから、ポコリ、ポコリと次々沸いて出てくる大小様々なセルリアン。
「うっ、セルリアン、しかも数が多いよ! シロサイどうしよう……?」
「ヘラジカ様なら勝てるでしょうけれど……逃げるべきですわ、この数、遅れをとりかねません」
以前は突撃一択だったシロサイも、様々な経験を経て撤退の選択肢も取れるようになっていた。
「でも────」
───────────────────
「そのまま逃げてもまた道に迷っちゃうわよね?」
アミメキリンの疑問も最もだ。出口の分からないまま逃げても一時しのぎにしかならない。話を聞いている限り、どうしようもなさそうな状況だったが二人は無事にここにいる。ということは何とかなった筈だ。
「その通りですわ。だから、考えたのです。横に逃げるのが駄目なら」
「縦に逃げる……木の高さを越えるまで飛べば迷わないんじゃないかなって」
見上げれば上にあるのは青空。出口が見えているならばさすがに迷うことはない、というわけだ。
「でもシロサイさん重いですよね? 抱えて飛べなくないです?」
「つなぎ貴方聞きにくいことをいとも簡単に聞くわね」
普段の聞き込み等でも踏み込んでいくのはつなぎだったりする。ある意味で彼女の長所でもあり短所でもある。
「緊急事態でしたので、鎧を全てぱっかーんとパージして軽くなって離脱ですわ」キャ○トオフ クッコロアップ
「それでまたインナーだけなんですね……」
描写していなかっただけで最初からインナーであった。
インナーシロサイはいいぞ。インドサイではないぞ。
「それで脱出したらね、博士と助手にちょうど出くわして」
みずべちほーでわちゃわちゃやっている間、博士と助手は近くのちほーを見回っていたようだ。ゆきやまエピローグに出てこなかったのはそういうことなので、作者のうっかりではない、本当だよ。
「この森がおかしいことを伝えたら、調べるから他のフレンズが入らないか見ていてくれと言われたのですわ。看板を建てたのも博士たちですの」
「貴方達がきっと来るから、この看板に反応するだろうって」
見事に博士達の術中にはまった気がするが、前情報無しに突撃していたら酷い目にあったかもしれない。ひとまずその点は感謝である。
「ロッジにすぐ行けるかと思ったら、またこれは事件ね…… つなぎ、どう思う?」
もしかしたらタイリクオオカミやアリツカゲラも大変な状況かもしれない。森に行かないという選択肢はアミメキリン的にはあり得ないが、つなぎの意見も聞いておこうと彼女に問いかける。
「ま、迷いの森だぁ……モノホンの迷いの森だぁ……」
そこにはなぜか目を輝かせるつなぎがいた。
「え、予想外の反応。迷わない方が良くない?」
「迷ってこそナンボですよ! 迷いの森があるものは名作って大抵……」※この小説は含まれません
「はぁ……まぁ森に行くのに反対ではないってことね」
ならば善は急げと森に行こうとするアミメキリンを、ハシビロコウが呼び止めた。
「待って。そのまま行っても迷うだけ。実は、この近くに、この森がおかしくなる直前に森から出てきたフレンズ二人が滞在しているの」
「森の異変について知っているかも知れませんわ。その方達に話を聞いてから森に行くのが得策でしてよ。きっとお二人が以前に会ったことがあるフレンズですわ」
事前情報は多い方が良い、予習は大切である。ちなみに筆者は学生の頃塾も行ってないし予習とか一回もしたことないのでどれくらい大切かは実のところ全く分からなかったりする。予習しないとわからないとか授業の意味ないじゃないですかやだー!!
「そうなの、わかったわ。じゃあそこに行ってみるわね。……ところで、貴方達はそのフレンズから話を聞かなかったの?」
アミメキリンの問いに、二人は顔をしかめて答えた。
「ちょっとだけ聞いたけど、居心地が悪くて出てきちゃったんだ……」
「ええ、あそこはリア獣の巣……ですから……」
「「リア獣……?」」
アミメキリンとつなぎは顔を見合わせる。今まで出会ったフレンズの中で、その称号がふさわしいフレンズと言えば────
「ここね、そのリア獣の巣というのは」
ハシビロコウ達に場所を聞いてやって来たのはこじんまりとした木の家である。使っている木が新しいことから、比較的最近建てられたのが分かる。
「獣の巣……何が潜んでいるか分かりません。大豆粉末の匂いがしますよ」
「…………………………多分、きな粉臭いって言いたいとおもうんだけど正しくは“きな臭い“よ」
ちなみにきな臭いとは物騒な事が起きる気配がすることを言うらしい。あらゆる面で分かりにくいボケである。
そして、あんまりのんびりしてもいられない。早速誰か中にいるかと扉をノックしようとしたところ、逆に内側から扉が勢いよく開いた。そして、中から一人のフレンズが凄い勢いで飛び出してきたのだ。
「もうプレーリーさんのことなんか知らないっす! ばかああぁぁぁ!!」
そして、その後を追うようにもう一人。
「ま、待って欲しいでありまぁぁす!!」
二人はアミメキリン達に目をくれることなく彼方へと走り去ってしまった。
「や、やっぱりあの二人だったのね。あれは、噂に聞く痴話喧嘩とかいうやつ……」
「犬も食わないというやつですね。でも最も小さい品種と言っても犬は犬です。怪我しかねないので喧嘩は止めてあげた方が良いですね」
「……………………………………………多分貴方が言いたいのはチワワ喧嘩よそれ」
再三に渡るツッコミに頭を使うボケは止めて欲しいし、犬も食わないのは夫婦喧嘩である。
こはんに続きまたトラブっているのかと思いながら、飛び出していったアメリカビーバーの後を追うアミメキリンなのであった。
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