第73話 けっせん! メシマ作戦!
※いつも投稿遅くなり申し訳ありません……
今回は体内編最終回です。今までにないほどオチが下品な事を、お詫び致します。しかし後悔はしておりませぬ。
つなぎのお腹の中。そこに浮かぶジャパリまんや中華料理を始めとした無数の食べ物達。
それは、お腹一杯食べたいという欲望により、身長の数倍の大きさとなっていた。
「ありったけの料理で、やつらを討ち倒す。それがメシマ(ズ)作戦」
作戦の概要を復唱するアミメキリン。その前にあるのはゼンダマキン達に集めさせたとある料理の山。うずたかく積み上げられたそれは凄まじい存在感を放っている。
「ああ……本気でこの作戦に乗っている自分がバカらしい……」
頭を抱えるハシブトガラスだが、自分の事を見捨てなかったアミメキリンのことを放ってはおけなかった。
(それに、ヤタガラス様がわざわざ助けに赴く相手。パークにとって、何か重要な意味があるかもしれない)
口では夢のお告げで来たと言っていたヤタガラス。しかし、大したお告げでなければあまり気に止めない彼女がわざわざエリアを越えて助けに来たということは、それなりの理由がある筈だ。
「あとはどうやって誘き寄せるかだけど……」
そんなハシブトガラスの気持ちも露知らず、アミメキリンは作戦を押し進める。このポイントまでの誘いだし、それが作戦の最終段階であった。
最終手段は犠牲を厭わないというゼンダマキン達による囮作戦である。自分を助ける為に戦ってくれた彼女達にもう一度頼るのは心が引けるが、
「分裂で増える私たちは一人がみんな、みんなが一人。わんふぉーおーるおーるふぉーわん、なのでまた増えれば大丈夫だよ! 私がふえた!」
────とのこと。死生観違い過ぎてヤバいが、そういうことなんであろう。
「私が万全なら、どうとでもなるのだが」
先ほどのダメージが少し抜けてきたハシブトガラスだが、まだ動きがぎこちない。その様子を察したゼンダマキンが近寄って肩を揉む。違う、そうじゃない。
「おくすり様、たくさん誘いたいとのことですが、心配ご無用です! もう既に手配終えていますから! 私たち精一杯お祝いします!」
「……? なんのこと?」
突拍子も無いことを言い始めるゼンダマキン。この場面で何を祝うというのか。お誕生日か。フレンズにお誕生日はあるのか?
「二人でこの体内にきたこと、たくさんの料理の用意、ここにたくさん誘き寄せる……」
まるでアニメキリンの様に要素を一つずつ挙げるゼンダマキン。
「言わずとも分かります、お二人はここで結婚式をあげるんですね! おめでとー!!」
「わざわざ体内で式挙げるとか、にっちー」
「あの化け物(寄生虫)がご親族の方々だったとは……嫁いびりがはげしそー」
お腹の中に遊園地をつくる彼女達から素晴らしい答えが返ってくる筈が無かった。
「ちょっと待っておかしくない!? 寄生虫を倒す作戦がどうやったら結婚式の話になるの!?」
「どうやら、ゼンダマキン達の間で伝言ゲーム的に作戦が伝えられた結果、内容がねじまがってしまったようだな……」
ちなみにアミメキリンが結婚について知っているのは、かつてこはんにてビバプレがいちゃついてるのを見てつなぎが「あの二人ならいつ結婚してもおかしくないですね。あ、結婚っていうのは~」と懇切丁寧に説明した為である。
「ねぇゼンダマキン、貴方達おかしいと思わなかったの!?」
「我らスタッフ、プロですのでその辺プライベートには触れません!!」
「お客様もおくすり様も神様です! 神のような存在が何考えてるか分かんないって、それ古くから言われてるし!!」
例えば日本神話では、イザナギとイザナミが「俺の身体出っ張ってるところあるけどお前のへこんでるところに突っ込んで国つくんべ」という展開が繰り広げられている。神なのに生殖本能働き過ぎではないだろうか。
そしてこれは日本最古の無知シチュである。日本の文学史に最初に記されたのが無知シチュ。むかしのひとってすげー!
あまりの話の噛み合わなさに頭を抱えるアミメキリン。
「つ、ツッコミが追い付かないわ…… ってちょっと待って。さっき寄生虫を誘う手筈が整っているって……」
「はい、バッチリです!! もうそろそろ来る頃かと」
その言葉と同時、地の果てから一匹のゼンダマキンが走ってきた。近付いてきてアミメキリンに告げる。
「はぁ、はぁ、報告しまーす! あいつらの卵を見つけたので、利用しました!! 血相変えて追いかけてきています! これ以上ない誘き寄せっぷり! 誉めてくれてもいいですよ!!」
遠くから、地鳴りが聞こえてくる。何か丸いものを抱えたゼンダマキン達と、その後ろから目を赤くさせて追いかけている寄生虫型セルリアン達。
「……きゃあああああ!?」
「うわああああああ!?」
思わず悲鳴をあげる二人。
「こ、この作戦は避難する時間がいるのよ! あわわわわ!」
そう、メシマ作戦は超絶危険なのである。
「アミメキリン! お前の話が本当ならここにいたら私たち跡形も残らないんじゃないのか!?」
「そう! そうなの! えーと、えーと……!」
まだ距離がある今のうちに何とかしなければいけない。とはいえ遠くまでは逃げられない。
「仕方ないわ! ジャパリまんの中に隠れるのよ!!」
この夢の世界に存在する遮蔽物。それはつまり料理。中でも最も耐久性がありそうなフワフワ生地のジャパリまん。アミメキリンはこれに運命を賭けた。このハシブトガラスの魂も賭けるぜ!
「たまごはどうしますか!?」
「集めた料理のそばに捨てなさい!! そして貴方達も早く近場のジャパリまんの中に隠れるのよ!!」
速く走れないハシブトガラスを背負ってなるべく遠くのジャパリまんへ向けてダッシュ。そしてその中へ。
「ちょ、熱、熱い! 蒸したて!? まさかの蒸したて!?」
誤算だったのは、つなぎの“ジャパリまんよ美味しくあれ“という願いにより中がホカホカだったことである。流石に蒸したてでは熱すぎて入れないから誇張表現だったりするが、しかしフレンズでなければ耐えられないだろう。
というわけで71話冒頭、カレーピロシキまんの中で祈る二人につながる訳である。
──寄生虫型セルリアン。追いかけに追いかけて卵を取り返した彼らは、激しい動きによりサンドスターを消耗していた。
これまではつなぎの体を頂く(意味深)事でサンドスターを補給していたが、体の持ち主が弱っているせいだろうか、含まれる量が減っておりこのままでは再増殖は難しい。
増えるためには栄養がいる。何か、何かないか。
──なんと目の前に、おあつらえ向きに大量のサンドスターが詰まった食べ物が集まっているではないか。心なしか、自分達に似たサンドスターの気配を感じる。
寄生虫は、思い切りかぶりついた。
茶色く、固い皮で包まれたその食べ物へと。
カッ──────
ぱっっっっかーーーーーん!!!!!!!
────食べたが最後、お腹全土がハルマゲドン。
その日つなぎのお腹の中は、春巻きの爆風に包まれた。
そう、メシマ(ズ)作戦とは、ジャパリパークのイカれた料理10選に選ばれたつなぎ史上最悪の料理“セル巻き“の爆発により、全ての寄生虫型セルリアンを消し飛ばすヤベー作戦なのである。
─────────────────
体外
「………………ごっふぅっっっっ!?」
「うわぁ! つなぎ、しっかりしてください!!」
「いきなりお腹から爆発音がしおったぞ!?」
─────────────────
再びつなぎの体内。
吹き飛ばされながらも爆風に耐えきったジャパリまんの中から、無事生還したアミメキリン達は姿を表す。
「等身大の状態で食べても凄まじい威力で爆発するセル巻き。それがミクロの世界で炸裂したとなればその破壊力は言わずもがな、ね」
どんなものでも役に立つ可能性はある。
つなぎ自身の食い意地とメシマズが彼女の命の危機を救うとは夢にも思ってなかった。しんりんちほーの頃の自分達に料理が命を救うことを伝えても、絶対信じないであろう。
あちこちに転がるジャパリまんからも、ゼンダマキン達が這い出してきていた。
後から出てきて全身ジャパリまんの具まみれになった状態で、ハシブトガラスは言った。
「私、こういうときにどういう顔をすれば良いのか分からないのだが……」
「……笑えば、良いと思うわよ」
いや、お風呂に入った方が良い。
辺りにはもう寄生虫型セルリアンはいない。ぱっかーんの連鎖がぱっかーんを呼び、連鎖爆撃で一匹残らず殲滅した。積み上げる幸福も一緒にどうぞ。
「……ふふ、最初は絶対倒しきることまさかこんな方法があるとはな。しかし、春巻きが必ず爆発するかどうかはわからなかっただろう? その時はどうするつもりだったんだ?」
ハシブトガラス自身焦っていて気が付かなかったが、よく考えれば不確定要素満載の作戦である。
「え? ……さぁ」
「ま、まさか確証も無く次の策もないまま決行したのか……?」
「……」
「黙って目をそらすのはやめろぉ!!」
空からパラパラと降ってくるセル巻きと寄生虫型セルリアンの破片の雨。何はともあれ、二人は打ち倒したのだ。今までの中でも最も厄介な敵を。
だから、良いではないか。細かい事など。命の危機は去ったのだ。
なお、細かくない事項もあったりする。
「このこの! 失敗したときの策が無いなら事前に言っておけぇ!!」
抗議の為にアミメキリンにポコポコパンチをするハシブトガラス。
「し、仕方ないでしょ時間も無かったんだし!」
「うるさいうるさ…… ちょっと待てこの中に入って今どれくらいたった?」
「え? たぶん二時間くらい……」
ハシブトガラスは自分の体を見る。少しずつ、巨大化しているような……
「うわああああタイムリミットだ!! アミメキリン、急いで脱出しないと!!」
「そうだわ! このままだと元に戻ってつなぎが爆散しちゃう!?」
アミメキリンは急いでゼンダマキン達に尋ねる。
「貴方達、出口はどこなの!?」
「えーもう帰るのー」
「もうちょっとゆっくりしていけばいいのにー」
「なんなら泊まってく?」
「あ、そこまで言うならそうしようかしら。……って友達の家に遊びに来てるんじゃないのよ!? 早く、出口早く!!」
「一番近いのは校門とか言う場所です!」
「最終手段すぎる!? 他には無いのか!?」
「しょうがないなー。じゃあアレにします!」
ゼンダマキン達が、突然地面をあちこち攻撃し始めた。といっても本気の攻撃ではない。軽い攻撃である。
「……まさか、くしゃみか咳で外に吹き飛ばすの?」
それならばすぐに脱出できるけども面白くない(作者都合)。
「あー、もうちょっと入り口に近ければそれでいけるんですけど、ここストマックの辺りなんで、それじゃダメなんです」
「ストマック? ……胃か。まさか……」
ハシブトガラスは気が付いた。自分達に待ち受ける運命に。
ガバッ
セル巻きがお腹で爆発した反動でぐったりしていたつなぎだが、突然起き上がる。
「あ、つなぎ目を覚ましたのですか? アミメキリン達がまだ戻らないのです! このままでは……」
しかし、顔を真っ青にしたつなぎはオイナリサマとヤタガラスを押し退けて、口を押さえて洗面所へとダッシュした。
そして───────────
※ただいま大変お見苦しい光景が繰り広げられております。しばらくお花畑の映像をお楽しみください。
何が起きたかは明言は避けるが、校門を通ったのとたぶんどっこいどっこいの方法で二人は生還した。
おかえり! アミメキリン、ハシブトガラス!
次回、ゆきやまちほーエピローグ
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