第63話 ○○○フレンズぱびりおん

※………………………………………………………………(投稿が10日間空き弁明の言葉もないためひたすら土下座しています)


今回は超絶ネタバラシ回ですが、要素を詰め込みすぎてヤバイことになっています。ひたすらに分かりにくくなってしまい申し訳ありません。分からないことがございましたら、応援コメントやTwitter等で質問お受け致します。


 

前回のあらすじ


毛皮盗りの正体、それはイエティのフレンズのズ・ティであった。え、こんだけ?





 大きな木箱を担ぎながらみずべちほーを走る影二つ。

 もこもこの雛ペンギン毛皮。そう、アミメペンギンとツナペンギンである。つまりアミメキリンとつなぎである。


「全く重たいわね……何が入っているの?」


「ズ・ティさんですよ。ていうか知ってますよね?」


「ごめんなさい、言ってみたかっただけよ……しかしゆきやまちほーを脱出出来たと思ったらとんぼ返り……別のフレンズと交替したい気分だわ」


 あまり知っているフレンズに出会わなさそうな海岸沿いを選び走る二人。



 彼女たちの目的は変わらず化石燃料に汚染された海を浄化することだが、それにもうひとつ、イエティのフレンズであるズ・ティの凍らされた家族とは何か確かめることも追加されていた。


 三人がこそこそしている理由を話すには、場面を温泉が移動をやめた場面まで戻さなければならない。






 肌寒いものの、ゆきやまちほーよりはるかに快適な気温、ほどほどに生えた木々、そして眼下に広がる砂浜と海。


 温泉の軒先にかかる暖簾を潜ると、そこはみずべちほーであった。


「どんなとんでもポイントに飛ばされるかと思ったけれど、なんか拍子抜けね…… こうしてみると、黒い海はやっぱり異常ね」


 アミメキリンが海を見渡しながら言う。到着したのはまさにセルシップを打ち上げたあの海岸であった。


「なんで温泉はここに来たんでしょうか……?」


 止まってから数分経つが、新たな動きを始める兆しはない。


「我々、毛皮も取り戻したので少し辺りを見てくるのです」

「すぐ戻るのです」


 ズ・ティから取り戻した毛皮を着た長二人は温泉から飛び立つ。


 そして、彼女達の元へ近づくフレンズの姿があった。オイナリサマである。


「何が襲撃してきたかと思ったら、やはり貴方達でしたか」


「オイナリサマ……お久しぶりです、その……温泉が何故か勝手に動き出して……」

「ボク達悪くないよ、ホントだよ……」


 お風呂上がりでホカホカのギンギツネとキタキツネはしゅんとしながらオイナリサマに挨拶する。


「ええ、分かっていますよ。それよりも、施設に以上が無いか確認してきて貰えますか?」


「は、はいっ!」

「は~い……」


 施設の中に消えていった二人を見送ると、オイナリサマはアミメキリン達に視線を移す。


「どうやって動かしたのか見当もつきませんが、温泉の水質浄化装置を海の除染に利用する……考えた方だとは思います。しかし、残念ながら目的が全く違うので浄化は出来ないでしょう」


「ソウデモナイヨ」


「その声は……」

「元暴走ボス!!」


「コノ温泉ニハ間違イナク海ヲ除染スル装置ガアルハズダヨ」


 いきなり現れた元暴走ボスは、アミメキリン達の側へと近づき話を続ける。


「何故ナラ、コノ温泉ヲココマデ呼ビ寄セタノハ、ミズベチホーノラッキービーストダカラネ」


 続けて元暴走ボスは語る。非常に大規模な水質汚染が発生した場合、各エリアに設定されている水質浄化装置を持った施設が現場に急行し、汚染の除去を行うのだと。そしてそれがキョウシュウでは温泉施設だというのだ。



「タダ、マズイコトニナッタヨ……除染装置ヲ動カセルラッキービーストガ、何者カニ破壊サレ装置ガ動カセナイ。ソレニ問題ガモウヒトツ……コノ映像ヲ見テ欲シイ」


 元暴走ボスが、両目から映像を映し出す。


※カタカナ表記が大変なので普通に記しています。


「ここだね、ガイシャが壊されていたのは」


 殺ボス事件調査担当ラッキービースト、通称デッカービースト、略してDBである。7体集まると何か起こるとの噂だがあいにく一体しか作られていない。


「ぐしゃぐしゃですね……これは酷い……本体のチップも丁寧に壊されています」


 こちらはそのDBの部下にあたるラッキービースト、通称ブッカービースト、略してBBである、動画の素材にもなるらしい。


「だが、幸いな事に壊れる直前の映像が残っているようだ、見てみよう」


 残骸の中から記憶媒体を取りだし、DB は映像を再生する。



────────────────────────────


「ハヤク海岸ヘ向カワナイト……施設ガ到着シチャウ」


 温泉が到着する海岸ヘと向かい跳ねるラッキービースト。

 その前に、人影が現れ道を遮る。よくわからないが、黒くて長い髪をしていて、他にケモミミのような特徴的なものは見当たらなかった。


「……? 君ハ……ヒト……?」


「困るんですよネェ…… ヒトがせっかくばらまいた物を綺麗にされては」


 バキッ! ガギッ……バキバキバキ……


 ブツンッ


────────────────────────────


「これは……ヒトのフレンズの仕業……?」

「こうしちゃいられねぇ……すぐに奴を捕まえるんだ!!」





 元暴走ボスは映像の再生を止め、つなぎ達の方を向きなおす。


「……トイウ訳デ、ツナギハ今、指名手配中ナンダ」


「なんでぇ!?」


「今回に関してはつなぎには犯行は不可能よ? 一緒に行動してたからアリバイもバッチリだし」


「今回に関してはってまるで前科があるみたいじゃないですかぁ!!」


「……ヒトダッタツナギガ上陸シテカラ他ニヒトガ来タ記録ハ無イ。ドウシテモ疑ワレテシマウ」


 悲しそうに元暴走ボスは語る。


「トニカク、ホトボリガ冷メルマデ隠レテイタ方ガ良イ。ラッキービーストノ目ハ変装トカデ簡単ニ誤魔化セルケレド、ミズベチホーノフレンズニモ話ガ広ガッテシマッテイルカラ、ソチラハ誤魔化スノガ難シイカラネ」


 その言葉を受け、オイナリサマは腕を組みながら話す。


「しかし、今から身を隠すとなるとしんりんちほーまで行くのはここからは遠いので、ゆきやまちほーになるのでしょうが……唯一身を隠せそうな場所である温泉はここにありますしどうするか……」


 またかまくら戻りかと思われたその時、


 「それなら、私の家はどうでしょうか……?」


 おずおずと名乗り出たのは話に取り残されていたズ・ティであった。


「私のおうちなら、恐らく誰にも見つからないと思います……誰も来たことありませんし。それに、凍ってしまった家族も、そこにいます。溶かすことを、手伝って欲しいのです」




 そうして、アミメキリン、つなぎ、ズ・ティの三人はゆきやまちほーの彼女の家へやってきたのだった。



 誰も来たことがない、という彼女の家であるが、温泉があった場所からは離れているものの特段隠されてはいなかった。

 ゆきやまの崖にある裂け目。それが彼女の家であった。


 自然にありそうなありふれた光景だが、しかし遠くから彼女達の様子を千里眼的なもので見ているオイナリサマの反応は違った。


(これは……彼女達、四神の張ったヒト·フレンズ避け結界……? なぜこんなところに…… しかし、一度四神が石板となったためか、結界が劣化してほぼ効力がきれているようですね)



「ここが、私のおうち…… 見せたいものは中にあります、ついてきて下さい」


 ズ・ティはズンズンと中に入っていく。


「とにかく私達も行くわよ」

「はい」

 つなぎとアミメキリンも後に続く。


 中は岩で出来た洞窟で、不思議と歩きやすい様に整備されている。

 しかし、奥へ奥へと歩いていくうちに壁には機械が見られるようになっていく。それは、人工的に作られた場所である事を意味していた。


「お見せしたいのは、この奥です……」


 洞窟を進んでいくと唐突に現れた大きな扉を開け、ズ・ティは奥へと向かう。二人も彼女に続く。


「……これは」

「全面機械でびっしりね……」


 奥は大きめの部屋となっており、たくさんのモニターや資料等が設置されている。

 そしてその一番奥。ズ・ティが立っている傍らには、透明なカプセルの中で眠る二人の姿があった。



 片方はギンギツネ達に似た姿をしているが全身白色の少女。


 そしてもう片方は────


「男……?」


 つなぎはカプセルに駆け寄る。確かに、それは成人の男性であった。


 アミメキリンもカプセルに近づき、その中を覗き込みカプセルを触り、その冷たさを実感する。


「二人が入っているもの自体がこんなに冷たいなら、確かに中に入っている二人は凍っているんでしょうね。……残酷な言い方をするなら、私には二人とも死んでいるようにおもってしまうのだけれど……?」


 アミメキリンはズ・ティにそう尋ねるが、彼女はそれを首を振って否定する。


「そこで寝ているのは、私の妹、ミ・ティです。私達二人は、お互いの事を離れていても感じることが出来ます。彼女はまだ、死んでいないと私にははっきり感じられます。そしてもう一人の男性。彼は…………妹のつがいです。私はあちこちから毛皮を集め、私の体温と毛皮で凍った二人を溶かそうと……」


 しかし、その言葉をつなぎは遮る。


「ズ・ティさん。…………残念ですが、この二人は凍ったまま眠っています。毛皮で暖める方法では、起こすことは出来ません」


「つなぎ、これが何か分かるの?」


 アミメキリンもこれはヒトの領分だと察し、つなぎの意見を求める。


「通常、生き物を凍らせると体のあちこちが壊れて死んでしまいます。しかし、特殊な方法で凍らせるとそのままの状態で保つ事ができ、そしてさらに特殊な方法で解凍すれば生きている状態に戻すことが出来るんです」


「つまり、生き物の冷凍保存ってことね」


「そうです……確か、ヒトはこの技術を……」


「ヒトはこの技術を?」


「……フリーズドライ、そう名付けていたはずです」


 美味しさそのままな保存法、フリーズドゥルァァイィ……

 大事な所で食に傾倒してしまうつなぎちゃんなのであった(正しくはコールドスリープ)。



「とにかく解凍方法を探さなくちゃ…………」


 つなぎがカプセルから手を離した時、ジジジ……という音と共にどこからか謎の音声が流れ始める。



『───こんにちは、未来のヒト』


「うわっ!?」

「な、何っ!?」


「この声、義弟の……?」


『四神の結界を抜けてここに来たということは、結界の経年劣化、若しくは四神の彼女達が自主的に結界を解いた、ということになるのかな。

 とにかく始めまして。これはそこでコールドスリープしている私が残した、音声記録である。返答は出来ないので容赦してほしい』


 音声は、アミメキリン達の反応を待つことなく進んでいく。



『ここで眠る私達に関しては、そこの本棚に記録を用意しておいた。そちらを読んでもらえれば、大方の事は分かるだろう……

 そして、この部屋まで辿り着いた君たちに聞きたい。外の世界はフレンズとヒトとが手を取りあって生きている世界だろうか?

 もし、そうでないなら、もうしばらくそっとしておいてくれないだろうか。身勝手なワガママを、どうか許して欲しい。

 その代わりと言ってはなんだが、君たちの生きる時代に価値のあるものかどうか分からないが、私の研究成果の一端をお教えしよう』


「そういえば私……義弟達が何故凍っているのか、覚えていません…… 二人が私の家族であるということしか…… もっと色々あったはずなのに……なぜ忘れて……」


 流れる音声に対して疑問があるのか、ズ・ティは頭を抱えてしまう。


「ねぇ、つなぎ…… この話の意味分かる?」

「多分、言っていた通り記録を読まないとわからないと思います。それよりも、研究結果っていったい何でしょう?」


 そのつなぎの言葉に呼応するかの様に、音声が再び始まる。



『私は試行錯誤の末、最初火山から噴火したときは大きなサンドスターを、細かくする加工技術を生み出した。そして、特定の大きさに細かくしたサンドスターを昆虫や魚に当てると、今まで存在しなかったそれらのフレンズを産み出すことに成功したのだ』



「「…………は?」」


 あまりに唐突な新しい概念の登場に、二人は思わず聞き返してしまった。


『しかし、それらのフレンズはサンドスターの消耗が非常に激しく、すぐに元の生き物へと戻ってしまった』


「ど、どうやら上手くいかなかったみたいですね」


 ほっと安堵するつなぎ。


『しかし私はサンドスターの加工による可能性をひしひしと感じ、さらに研究を続けた。その結果、実用可能な技術をひとつ生み出すことに成功したのだ。こちらを見て欲しい』


 唐突に側にあるモニターの電源がつき、映像を映し出す。


 そこには、楽しそうに歩くフレンズの姿があった。しかし、どことなく獣っぽくはない。そしてなんかデフォルメっぽい頭身である。


 映像がいきなり引き、そして再度別の場所をアップにして映す。同じ様に色んなフレンズが歩いている。モニターの右側には×500と記されている。


「ねぇつなぎ、この映像の何が凄いの……?」


「拡大……500倍……まさか……?」


 つなぎは目を見開いてモニターのすぐ前へと移動する。信じられないものを見ているかのように、画面を両手でペタペタと触る。


「わかったの? つなぎ」


「アミメキリンさん……僕たちが今見ているのは、500分の1の世界、つまり─────」





『私は、サンドスターを加工し削った時に出る本当に小さな粉末が、微生物と呼ばれる大きさの生物をフレンズ化させることを発見した。


 目視出来ないはるか小さな世界。新しく生まれた微生物のフレンズ達は集まって、彼女達が住まう楽園を自ら構築した。私はこれを、ミクロフレンズぱびりおんと名付けた。



 このぱびりおん、小さいながらも無限の可能性を持った魔法の力だ。どうか、正しいことに使って欲しい』





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