第62話 雪山のまぼろし

※更新一週間空いてしまい、本当に申し訳ありません……

今回だけはあれです、猛暑がいけないんです。頭が働かないんです……ほんっとうに熱中症だけは気を付けてください。

さて、今回は毛皮盗りに関するネタバラシ回なのです。解説多目でギャグ少な目なのでつまらないかも知れませんが、お付き合い頂ければ幸いでございます。


前回のあらすじ


 カピバラは震え、ギンギツネは歌い躍り、助手はカーテン一枚、それでも事態が解決しないのだから、ここはお狐二人に一肌脱いで貰うしかないのだ。




 

 温泉設備の温泉……つまるところお風呂にキタキツネとギンギツネの姿はあった。


「ふふふ……危うくアミメキリン達に言いくるめられそうだったけど、さすがボク……ピンチな状況を利用して逆に温泉に入る口実を作り出すことが出来るなんて……」


「自画自賛は良いけれど、本当にあの4人に任せて大丈夫かしら?」


「まぁ、捕まらなかったらそれはしょうがないよ……さぁギンギツネ、お風呂だよお風呂。ボクもう色々あってクタクタなんだよ」



 毛皮盗りを誘き寄せる為、ギンキタに毛皮を囮に使うから脱ぐように言ったアミメキリン。それに対し、キタキツネは反論したのだ。



「意義有り!だよ…… 僕たちだって毛皮を脱いだら寒いよ! つまり……毛皮を使うなら僕たちは……温泉に入るよ!!」


 アミメキリンの悔しそうな顔を思いだし、勝利の余韻を噛み締めるキタキツネ。思考の端で、ギンギツネが、あの4人が本当に毛皮盗りを捕まえられるのかと聞いてきていたことを思いだしそれに返答する。


「普段そんなに頻繁に会わないんだから、きっと毛皮で誘き寄せてもそう都合よくは会わないと思うよ……」


「……でも、今はこの温泉動いているっていってたわよね? にわかには信じがたいけれど……それなら、毛皮盗りもまだ温泉の中にいるんじゃあ……」


 その言葉に一瞬キタキツネは動きを止めるが、すぐ何事もないかのように話始める。


「…………ギンギツネ、洗いっこしよう」


「この子現実逃避始めたわね……あと貴方最近やめてって言っても尻尾の付け根洗うの止めてくれないじゃない、だからだーめ!」


「そう言うと思っていたけど、甘いよギンギツネ……ボクがどれだけギンギツネの背後を取り続けて来たと思っているの……?」


「へ?」


 ギンギツネは振り向くが、そこにキタキツネは居なかった。否、背後に回られていた。


「ここから先はクライマックスだよ……!」


「ちょ、ちょっと……クライマックスって何が……いや、そんなところから洗うなんて!ま、待って……! ちょ、ちょっとタンマ! 本当にやめなさい!! やめ」



 このあとめちゃくちゃ洗いっこした。




「前よーし! 後ろよーし! さあどっちからでも来なさい! この一直線の廊下なら不意をうたれる事無く毛皮盗りを誘き寄せることが出来るわ!」


「本当にうまく行くんですかね、博士」

「しかし毛皮を取り返さないと助手も再生するまでカーテンローブ生活です、ここは何としても取り返さないと……」


 ところ変わって温泉施設内部。アミメキリン、つなぎ、博士、助手の4人はギンキタの毛皮を使った誘き寄せ作戦を行っていた。


 配置は以下の通りである。


────────────────────────

アミつな   毛皮   博士助手

────────────────────────



「……って完全に挟んでたら囮もへったくれもないじゃない!! 迂闊だったわ。毛皮の配置を変えましょう」

「えー、完璧な布陣じゃなかったんですか?」


 アミメキリンとつなぎは毛皮の元まで歩きそれを手に取ろうとした……

 が、不意に頭上に影が差した事に気がつく。


「ちょっと電気切れてるじゃない……設備の老朽化ってやつかしら……?」


 顔を上げると、そこには茶色いファーのついたコートを目深に被った、身の丈3メートルは有りそうなフレンズがこちらを見下ろしていた。



 巨大なフレンズはこちらに手を差し出し、言う。



「それ、いらないならくださいな?」




「ぎゃあああああああ!!」

「で、出たあああああ!!」


 


「何なんですかお前たちいきなり大声だして……何でもないとかいいながらチビりやがったら容赦しないので……す……」

「え、何あれでっか……」


 思わず助手の口調も崩れるが、ダークミミちゃんは5メートルあるので余裕で勝っているよ。


「え? 皆さんどうしたんですか……? わ、私何かしましたか……?」


 戸惑う巨大フレンズと、距離を取って警戒するアミメキリンとつなぎ。


「油断しちゃダメよ! ああやって私たちの警戒を解く気なのよ!」


「あんな巨大なフレンズさんがいるわけありません! 僕には分かりますよ! これもサンドスター・ロウの仕業です、違いありません! 根拠は無いですけど!!」


 前回みずべちほーで散々引っ掻き回されたからか、つなぎのサンドスター・ロウ警戒体制はMAXであった。


「…………確かに巨大でめちゃびっくりしますが、あれは……ちゃんとしたフレンズです」


「深めに被ったフード、顔付近が暗く見にくい様子…………恐らくは、未確認生物、いわゆるUMAのフレンズです。ツチノコと同じですね」


 ここに来て、数多くのフレンズに自分が何の動物か教えてきた事が活きる長たち。


「まず、あそこで震えている馬鹿二人は置いておいて…… 始めまして、私はアフリカオオコノハズクの博士、こちらはワシミミズクの助手です」


「二人でこの島の長をやっているのです」


 挨拶をしながらふわりと彼女の元へと飛び、その足元に降り立つ。近付いてきた二人に対し、彼女も困惑しながらも挨拶を返す。


「は、始めまして…… ええと、私はズ・ティと呼ばれています」


「ズ・ティ……それは動物名ではありませんね?」


「は、はい……」


「なるほど、自分が何の”けもの”か、分かっていますか?」


「い、いいえ……」


「ふーむ……」


「雪に適応した服装、巨大な体、そして未確認生物…………」


 何故か何の動物か当てる流れになっている。博士と助手の二人は、通路の端に寄ってひそひそと作戦会議を始めた。


「あいつでは?」「いやそれだとUMAの条件に……」



 一方つなぎも今の会話から、何か引っ掛かる物を感じとる。


「ズ・ティ? ……いや、ズーティ…………そうか!分かりました! 貴方は……」


「ちょいちょいちょいちょーいなのです!!」

「我々もバッチリしっかりくっきり分かったのですよ!! これは我々の役目なのです!!」


「ちぇっ…… 分かりました、なら博士たちに譲りますけど……」


 つなぎは渋々引き下がったが、その目は間違った答えが出た瞬間割り込んでやろうという気が満々であった。

 


「おほん、では改めて……ズ・ティと名乗るお前の正体は……」



「未確認生物……“ビッグフット“のフレンズです!」


 自身満々でそう言う博士。しかしアミメキリンの反応は芳しくなかった。

 


「ビッグフット……知らないわね」


「無理もないですね…………正確には彼女はイエティのフレンズでしょう。日本風に言うと雪男って言えば分かりやすいでしょうか。アメリカ等の雪山で目撃された大型類人猿がビッグフット、ヒマラヤ山脈で見つかったものがイエティと呼ばれていたりします」


 つなぎがめっちゃ補足説明を加えた所で、当の本人、イエティのズ・ティから声がかかる。


「え、ええと……よく分からないんてすが私はイエティと言うけもの、という事で良いんでしょうか……? それとそちらの二人は……?」


「すみません、自己紹介が遅れました。僕はヒトのフレンズ、皆からつなぎって呼ばれています。全く……こんなに純粋そうなフレンズさんがサンドスター・ロウに侵されていたりするわけないじゃないですか……」


 離れていた距離を詰めるつなぎ。


「一番疑っていたの、貴方だけどね…… 始めまして、私はアミメキリン。探偵よ、よろしくね」


 捕らえるだなんだ言っていたのは何だったのか、すぐに自己紹介を始める一行。ただ、フレンズとしては正しい姿なのかもしれない。


「それにしても、イエティ、雪男のフレンズって……」


「フレンズ化したから女の子やぞ」


「つなぎ、口調おかしくない?」


 背が高くて……ファー付きのコートでずんぐりむっくりに見える……点々模様は付いてないのがイエティです。いやオリフレなんで容姿とかは設定ないけどイエティと言えばドラクエのイエティが好きです。


「イエティは度重なる調査でクマやキツネの見間違いだって言われていないって結論がでてましたが……」


 つなぎはそんな存在もフレンズ化するんですか?という疑問の目で長たちを見る。


「我々はツチノコのフレンズも知っているのです。他のUMA同様にヒトの”いないかもしれないけど、いて欲しい”という願いとかから生まれたと考えられるのです」


 ヒトありきのフレンズ、というのは不思議な物だが、ある意味それはヒトがいるということの裏返しとも取れる。


「それで、話が少し反れましたがなぜお前は毛皮を盗って回っていたのです?」


 結局、論点はそこなのである。イエティに他の生物の毛皮を集めたりする習性があるわけではない以上、そこには別の理由が存在する事となる。


 そして、博士の質問に対し彼女は困惑しながらこう答えた。


「盗る……? 私は落ちていた毛皮を拾って集めていただけですけれど……」


 キョウシュウのフレンズ達にとって、毛皮が脱げることはかばんによって発見された。その情報を知らなければ、毛皮が誰かが脱いだものだと分からず持っていってしまうことは多いにあり得る。


「つまり他のフレンズのものと知らず持っていっちゃったって訳ね」


 アミメキリンがそう言うが、ズ・ティ自身はよく分からず小首を傾げていた。



「盗っているつもりがないのは分かりましたが……なぜ毛皮が必要なのです? お前自身の毛皮で十分暖かそうですが……」


「毛皮を無くしたフレンズがいるとか……? フレンズが風邪をひく話も無いことはないから、暖かい毛皮が必要ってのもあり得るかしら……」


 色々考えられる線を並べるアミメキリン。しかし、返ってきた答えは予想だにしないものであった。


「私が毛皮を集めていた理由は────────凍ってしまった私の家族を暖めなくてはいけないから、です」



「凍ってしまった……?」

「家族……?」



 アミメキリンとつなぎは意味が分からず顔を見合わせる。



 その直後、移動していた温泉の動きがゆっくりになり、止まった。

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