第59話 オウルの動く風呂
※お待たせしました、今回は夏になるとロードショーでジブリ見るよね回です。筆者は千と千尋が一番好きです。勿論もののけ姫も好きです。
物語のつなぎの話なのでちょっと短くて面白くないかもしれません……ごめんなさいね……
前回までのあらすじ
何者かにあったかふあふあコートを奪われてしまったアミメキリンとつなぎ。取り替えそうと躍起になるつなぎは寒さからか地面に激突してしまう。かまくらの中で裸で暖め合っていた二人は、キタキツネに見つかってしまうのであった。
あとギンギツネはFAXしないと出られない部屋に閉じ込められた。
視界を真っ白に染めるほどの吹雪。
アミメキリン、つなぎ、キタキツネの三人は天候が落ち着くのをかまくらの中で待っていた。
前回きつく抱き合っていたところを見付かった(遭難しているところを発見してもらったと言った方が正しい)アミメキリンとつなぎ。
どうにかこうにか経緯を説明しキタキツネの誤解を解いたのであった。
(解けてないよ、話してる間も服こそ着てるもののまた二人で抱き合ってるからね。寒かったからかもしれないけど……ボクはまだ二人がデキている可能性を怪しんでるよ)
必要ならば温泉の部屋を用意しなくてはならない。両隣の部屋を空けた状態で。
「…………アミメキリンは知ってるけど、そっちのキミは誰……?」
ひとまずそのことは置いておいて、キタキツネは自分の知らない彼女に質問をする。
「あ、僕はヒトのフレンズです、皆さんからはつなぎって呼んでもらっています」
「ヒト……かばんと同じってこと?」
「そうみたいです。かばんさんがどんなヒトかは知らないですけど、いつか会ってみたいですね」
つなぎとしても、行く先々で名前が出るかばんの事は気になっていた。
「かばんは貴方よりも大分賢いわよ、少なくともびしょ濡れでゆきやまを歩いたりはしないでしょうね」
「そのことについては反省してますからぁ……」
二人の様子を見てキタキツネはため息をつき、立ち上がる。外の吹雪が弱まってきていた。
「取り合えず、ジャパリまんを貰ってくるからそれを食べたら温泉にいくよ…… 温泉でしっかり暖まらないと体に悪いからね……」
なお、雪山で本当に裸で暖め合うと、心拍数が上がって逆に体に悪かったりするので、真似しないように!(そもそも遭難しないように)
「取り合えずボクが出掛けている間はこれでも食べて待ってて。特につなぎは体力落ちてるみたいだからこんなものでも食べた方が良いよ」
そういってキタキツネが出したのは小さいニンジンとヤマイモだった。
実はラッキービースト達は、ゆきやまの気候を活かして一部の野菜を天然の冷蔵庫に保管しているのだ。
この付近にも芋類を保管する場所があり、キタキツネはそれを少し拝借して、おやつがわりにかじっていたのだった。
「うえぇ……僕、ヤマイモはともかくニンジンは生では食べられないんですよ……」
つなぎは顔をしかめる。
「好き嫌いはダメだよ。ボクも、元々ニンジン嫌いだったけどこのニンジンは甘くて美味しいよ」
天然の冷蔵庫のせいか、どの野菜も甘味が増していて美味しいらしい。絶望の味とかはしない。
「そうは言われても……どうしても青臭い感じがして苦手なんです」
いやいやと首を振るつなぎだが、
「ボクも元々ニンジン苦手だったけど、克服したよ。ボクがニンジンを食べられるようになったのは温泉に置いてあったDVDに感動したからなんだけど……じゃあ、その話を少ししてあげるよ」
キタギンロードショー
スタジオべジタブリ作品「ねものけ姫」
「ねぇちょっとこれ色々大丈夫なの!!??」
アミメキリンのツッコミを無視してキタキツネは語り始める。
「その身に受けた病気を治療する為に旅立ったニンジン一族の青年キャロタカ、彼は旅先で森が次々と畑にされていくのを見るんだけど……そこでキャロタカは、森でヤマイモ達に育てられたニンジンの娘サンポテトと出会うんだ。畑と森、双方が生きる道を模索する農業の環境破壊に関する問題を提起した力作だよ」
「なんで無駄に壮大なの!?」
「キャロタカがサンポテトに言った
“生きろ、そなたはみずみずしい“
や、二人の本気のやり取り
“そなたはニンジンだ“ “ちがう! 私はヤマイモだ!!“とか、ヤマイモの親玉がキャロタカを一喝する“黙れゴボウ!!“とかが名言として有名だよね」
「絶対そこ言いたかっただけよね!?」
「感動しました……僕ニンジン食べます!!」
「今の話の中のどこに感動要素あったの!?」
いつのまにか吹雪は止んでいたが、デイダラゴボウッチに首をお返しするところまで話は終わらなかった。
そしてこちらはFAXしないと出られない部屋に閉じ込められたギンギツネである。
「こんなことならキタキツネにもっとこれの使い方をしっかり教えてもらっておくんだったわ……」
ちなみにキタキツネに使い方を教えたのはかばんちゃんらしい。
普段ならうっかりこの部屋に閉じ込められても、ギンギツネがいないと気がついたキタキツネが探しに来てくれる。しかし今はそうはいかない。
「仕方ないわ、昔少し教わったし、何とか覚えている範囲で……」
複合機の電源を入れる。ブゥゥン……という音共に、メニューが立ち上がる。
「ひらがなだけは読めるのよね……読める所から情報を集めて、何とかFAXを事務所に送って長達に気づいてもらわないと」
ギンギツネがやらなければいけないのは、目の前の機械にてこの部屋に閉じ込められたという旨のFAXを送ること。
タッチパネルのメニューに目を落とす。
“コピー“
“スキャナー“
“FAX“
“本体設定“
「読めない…………」ズゥーン……
「なぜ!? ひらがなは一番使われてるから覚えておくだけでとても便利だって言うから覚えたのに……一文字も使われてないじゃない!」
奇跡的にひらがな無しのノーヒントである。
「ヤケになっちゃダメよ私……恐らく、これは博士達が言っていたひらがな以外の文字。漢字とカタカナとかいうやつね……確かごちゃごちゃしたのが漢字、カクカクしてるのがカタカナだったはず……つまり、下以外3つはカタカナね」←肝心のFAXだけ違う
「そしてひらがなとカタカナの文字数は同じ……つまり、ふぁっくす、と同じ文字数のこのボタン(スキャナー)が正解に違いないわ!」
割りと良いところまで推理できているが、英語の壁は厚かった。
「確かここに紙を挟んで……ボタンをポチ!」
ピッ 画像データが送信されました
「フフフ……これは来たわね、正解の手応えがひしひしと伝わってくるわ!」
数十分後、やはり間違っていたことに気がついたギンギツネは今度はコピー機能を作動させてしまう。
よくわからず数字キーを連打。印刷枚数上限の9999枚コピーがスタートした。
時は遡りギンギツネが閉じ込められるちょっと前、博士と助手は普段見慣れないシャンプーを頭でモコモコさせて遊び、アフロフクロウ化していた。
「しあわせアフクロウの博士です」
「しあわシミミズクの助手です」
「このシャンプーとかいうものは確かに髪の毛がすっきりしますが……もしかして羽の油分取れてませんか? 飛べなくなりません?」
「そこらへんサンドスターで飛ぶから大丈夫だと思いますよ、博士。しかしフレンズの体は背中が洗いづらいですね……」
上手く洗えない助手を見かねて、博士は声をかける。
「しょうがないですね、いつも助手には助けられているので、今日は背中を洗ってあげるのです」
「! いいんですか博士!?」
「身近なフレンズを労るのも長の器の見せ所なのです。それじゃあ、洗うです」
博士は助手の背後に立ち、手拭いを片手に彼女の背中をじっと見つめる。
(……半端ないって! ミミちゃん脱ぐと半端ないって! 後ろ姿抱き締めたくなるトラップやもん…… 洗う前なのにいい匂いしいへんやん普通…… そんなんする? 言っといてやするんやったら……)
おっと、心の中でなにかが暴走しそうだったのです。それでは背中を……
その時、突如激しい揺れが温泉を震わせる。
「おわわわわわ! な、何が起こっているのです!? 地震ですか!?」
「博士! 外の景色を!!」
助手に促され、外の様子を見る。すると、そこには驚くべき光景が繰り広げられていた。
「温泉が……浮かび上がっている!?」
先程まで見えていた景色よりも、大分高くなっている。
しばらくすると揺れがおさまった為に露天風呂の縁から下を見てみると、温泉施設が地下からせり上がり、下に戦車のようなキャタピラが付いているのが分かった。
「ま、まさか……」
そんなものが付いているということはつまりそういうことである。
ガゴン、と音を立ててキャタピラが前に進み始めた。フロが動いたのである。
「お、温泉が動く……? そんなことがあり得るのですか……?」
助手も隣に来て目を丸くしていた。そうこう言う間にも、温泉は何処かへ向けて移動を続ける。
「なぜ、どこへ、何のために……分からないことだらけですが、取り合えず風呂から上がるのです。こういう訳分かんない事はあのコンビの担当じゃないのですか!?」
「ともすれば近くに来ているのでは無いですか? とにかく、今はギンギツネとカピバラが無事か確かめるのです!」
二人はちゃんと体を拭き、温泉施設の内部へと戻ろうとした。
しかし、気配に敏感な二人でも、さすがに激しい揺れの中では不審なフレンズに気がつかなかった。
「「………………」」
二人は空になっている脱衣かごに絶句する。
もふもふで暖かい毛皮を狙うと言う毛皮盗り。長達の服はどうやらもふもふ判定をクリアしてしまったようだ。
二人はギンギツネよりもカピバラよりも先に、ひとまずの着替えを探さなくてはならない。
なぜなら、脱いだら凄い助手の裸体を長時間さらすことは非常に危険な行為のためであった。レーティング的にも、二人のこれからの為にも。
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