第60話 追跡するなら桶でおっけー(審議中)

※前回の更新から日が開いて申し訳ありません……ちょっと軽い熱中症でダウンしていました、皆さんもお気をつけください

今回でようやく温泉に到着します、進行速度遅すぎぃ!? 次回からもう少しストーリー早く進めます。おいカピしバラッってんのか?




前回のあらすじ


キタキツネは謎の映画の話をして、博士と助手は服をギられ、ギンギツネは白い何か(コピー用紙)まみれにされたのであった。





「あったか……湯……うま……」



 吹雪がおさまった中を歩くキタキツネ、アミメキリン、つなぎ。


 冷えきっていたつなぎの体だが、現在はだいぶぽかぽかである。その秘密は二つあった。



「キタキツネ、こんな暖かいものがあったんなら早く出して欲しかったわ」


「キミ達自分が発見された当時のこともう一回思い出してみて……? アツアツってああいうことを言うんだと思う…… あとボクもそれないとちょっと寒いんだからね」



 ひとつ目の秘密は、キタキツネが懐に入れていた湯たんぽ(×2)をつなぎとアミメキリンに貸し出しているからである。




 ところで本筋には関係ないが非常に大事な事として、アニメではギンギツネだけが湯たんぽを持っていた。つまりはギンギツネの方がキタキツネよりも寒がりさんである可能性が上がる。


 キタキツネに対してお姉さん感を出しているギンギツネだが、実はキタキツネの方が寒さに強く、ギンギツネが無理をしている……お姉さん感を必死に演出しているのでは? 湯たんぽひとつとってもこれだけの考察ポイントがある……けものフレンズ、恐ろしい子……!




 脱線はそれくらいにして、二つ目の秘密はつなぎが食べているご当地ジャパリまんにあった。



「このピロシキと、カレーが半分ずつ入った”ゆきやままん”…… 冷えた体も一瞬でぽかぽかです!! あったか……湯たんぽ……うまい…… かゆ……うま……」


 血行が良くなってきて指先がかゆくなってきたのは本当である。ゾなぎちゃんになったりはしない。


「キミ達二人は呑気でいいけど、ボクは急いでるんだよ…… さっきの揺れ、尋常じゃなかった。温泉で、何かあったのかも……」



 キタキツネはだいぶイライラしていた。

 目の前の二人が見せてくる光景、わずかな時間ながらもギンギツネに会えないギン姉ロス、そして謎の揺れ。

 早く温泉に帰りギンギツネしっぽをもふりゲームをしてから温泉で暖まらなくてはならない。彼女の心はそれでいっぱいであった。



「そうだ、こんな面倒なことは早く終わらせよう。ボクは帰るんだ、あったかいあの場所に」




 やっとの思いで温泉にたどり着く一向。しかし、残念なことに彼女の願いは叶わない。そう、風呂は現在移動中なのである。




「いやいやなんで!? こんなことありえない……」



 愕然とするキタキツネ。それを尻目に離れたところにいるアミメキリンとつなぎは、どこか気の抜けた声で会話していた。



「へー、温泉って移動するのねー」


「なんか巨大移動基地みたいでかっこいいですね。あれ?もしかしてふもとで待ってたらそこまで来ていたかも……遭難は無駄だった……?」



「訳わかんないことばっかいって……二人ともいい加減にして!! ボクもう怒ってるんだよ温泉が動くわけ……ほ ん と だ」



 ズズズズズと音を立てて動く温泉(withキャタピラ装備)。あまりにもあまりすぎる光景にしばし三人はぼーっとそれを眺めていたが、ふと我に返る。



「いやあれは異常だよ……? 今まで温泉で過ごしてきてあんなことあった覚え無い、ボクあれの中に行くよ! ギンギツネ達がきっとあの中にいる!」


 普段はどこかマイペースなキタキツネも、今だけは焦っていた。帰宅したら家が自走していたのである、無理もなかった。


「そうね、私たちも温泉に用があるし、追いかけて中に侵入しましょう!」


 キタキツネの言葉に同意を示すアミメキリン。しかしそれには問題があった。


「でもアミメキリンさん、キタキツネさん、だいぶ遠くまで行ってますし追いつくの大変そうですよ」


 そう、単純に走って追いかけるには距離があったのだ。


 つなぎの言葉を受けて、キタキツネは辺りを見渡す。自分の記憶が確かなら、あれがおいてあるはずだ、と。


「─────あった! 二人とも、あれに乗って追いかけるよ……!」





「こんな大きな桶があるなんて! しかも結構速い!!」


 かばんちゃんがかつてセルリアンから逃れる為に使った巨大な桶。それが今度は温泉の追跡の為に使われていた。


「オフロカートだよ──(←ここダッシュ記号二つでダブルダッシュ) 普段は乗ると怒られるけど緊急事態だから良いよね……!」


 運転には獣中型免許が必要、道に落ちてるジャパリコインを拾うたびにスピードが上がる。


 幸い動く温泉まではずっと下り坂、桶はドンドンスピードを上げていった。


「もうすぐ追いつくわね! どうやって飛び移るの? 側面はキャタピラがあって無理そうだけれど」


 質問した瞬間、アミメキリンを既視感が襲う。こういう時は大抵……


「あっ……そこまで考えてなかった……」


「……やっぱりぃぃ!!!」


 後のことはその時に考えるのがフレンズクオリティなのだ。


 キタキツネは一瞬考え、そしてこう言った。


「こうなったら…… つなぎ、桶の右側に寄って!」


「体重を寄せて取り合えず衝突を避けるんですね!」


 指示に従い右に移るつなぎ。いやつなぎちゃん重くないからむしろおもさマイナスだから。


 そういうことならとアミメキリンも移る。しかし、肝心のキタキツネは移らなかった。


「キタキツネさんもこっちに来ないと重さが寄らないですよ!」


「……前ゲーム雑誌で見た。激突しそうな時にはインド人を右にって。この3人の中で一番インドなのはカレーピロシキを食べたつなぎ。だから……」


「いやあれは誤植ゥ!!」


「ちょっと! ぶつかるわよ!!」


「えっあれは嘘なの……? もうボクギンギツネに会えないのか……」


「諦めないでぇぇ!!」






「ぐぇっほ……おええ、ぜぇぜぇ……ひゅうひゅう……」


「た、助かったわつなぎが飛べなければヤバかったわ……」


「すごいねつなぎ……本当にヒトなの……?」


「ぐぇふ……今……返事…………無理…………」


 激突寸前にアミメキリンとキタキツネをつかんで飛んだつなぎは、そのままスピードにのって温泉へと着陸した。

 彼女のトキモードのパワーは普段はフレンズ一体持ち上げる程度なので、二人をつかんで急上昇した反動で体力を使い果たしぐったりしていた。


「つなぎには悪いけどボクギンギツネ探しにいかないと……」


「待って、一人じゃ危ないわ、私も付いていくから一緒に行きましょう。つなぎは私がおぶっていくわ」


 ゆきやまに入ってからだいぶ運ばれてばかりのつなぎ。


「ゆっくり……運んで……出る、ピロシキ出ちゃう……」


「背中で吐くことだけは止めてね?」



 温泉の探索を始める3人。怪しいところはすぐに見つかった。



「部屋の障子戸が、壊されてる……?」



 温泉の宿泊用の部屋のひとつ。

 強い力で開けられたのか、ぐしゃりとつぶれてしまっていた。


「誰がこんなことを……」


 近寄った時、部屋の奥のタンスからガタリ、と音がした。


「何か、いるのかしら……?」


「気をつけて……壊した張本人かもしれないよ……」


 その言葉にアミメキリンは静かに頷き、つなぎを地面に置く。


 ゆっくりとタンスに近づく。


「───えいっ!」


 意を決して開けたそこには…………


「よよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよ……」ガタガタ



「カピバラ!?」


 頭を抱えうずくまり、震えているカピバラの姿があった。

 なぜか、ふわりと博士の毛皮がかけられている。


「よよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよ……」ガタガタ



「ボクだよ、キタキツネだよ、何があったの?」



「よよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよよ……」ガタガタ



「ダメだ、怯えきってる……取り合えず温泉の備品の手拭いで冷や汗拭ってあげるね……」



 キタキツネは一面に“ぬ“とかかれた手拭いを取り出す。



「“ぬ“!? けもフレだから“の“にしましょうせめて!!」



「でもこれしかないから……ちょっとところてん臭いけど我慢してね?」


 キタキツネがカピバラの事を拭いてあげると、彼女はようやく少し落ち着きを取り戻した。



「あ、ありがとねねね…… もうダメかと思ったよよよ……」


「その怯えようと言い、この壊れた入り口と言い、何があったんですか?」


「ううう…………私は……世にも恐ろしい怪物のフレンズに会ったんだよよよ……」




 あちらこちらで騒ぎが起きている中、カピバラはのんびり部屋でくつろいでいた。


「ふふふ、皆毛皮盗りに手を焼いているようだけれど、私の毛皮は暖かくなさそうだから盗られる心配は無し、安心して温泉を楽しめるよよよ。ところでさっきからずっと揺れてるのはなんだろねねね、地震かななな?」


 この極寒の地にて短パンなのマジっすかカピバラさん。北国の小学生には年中短パンの子供いたりするから慣れの問題なのかもしれない。


「それにしてもこの部屋はお洒落だねねね、綺麗な柄の障子と、廊下側の壁の一番上に付いた覗き窓みたいな所。鳥のフレンズがあそこからひょっこり覗いてたら面白いよよよ」


 そういった矢先、見覚えの無いフレンズがその覗き窓にひょこっと現れる。この温泉施設にいるのは、基本はギンキタだけである。

 年中入り浸っているカピバラは、他にたまに訪れるフレンズも知っていたが、どうしても今見ているフレンズに心当りが無かった。


「……フードを被っててよく見えないよよよ、あんな子いたかななな……?」


 下の障子に目を移す。そこには地面から天井まで伸びる大きな影があった。


「覗き窓の真下の障子に大きな影……?」


 そう、つまりそれが意味することは────


 身長が3メートルはあろうかというフレンズが、扉の前にいるということであった。





 そしてその頃のギンギツネ。


「カミヅマリデス、ツマッタカミヲトッテクダサイ。ヨウシガアリマセン、トレイニアタラシイヨウシヲセットシテクダサイ」


「全然分かんないわ助けてぇぇ!!」ビェェーン‼

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