第50話 目覚めるヤミ

※本当にお待たせして申し訳ありません……!

単純に上手く書けませんでした、言い訳はしません……


 今回はつなぎちゃん泣き虫回です。たまにはよわぎちゃんでもいいかなって。あと、場面転換が非常に多く分かりづらくなってしまいました、申し訳ありません……




前回のあらすじ


 怪盗PPPにまんまとアデリー、ヒゲッペ、イワビーの大事なものを盗まれたアミメキリン。何かを思い付いて犯人を見つけるも、もう一人いた犯人に襲われてしまうのであった。

 あと、つなぎはサバカバン監獄に投獄中です。





「えぐえげおろえぐぅ……アミメギリンざんにみずでられだんだぁ……」


「はいはいそんなに泣かんと、元気にしないかんよ? えげつない泣き声でてしまってるやん」



 つなぎが投獄されてから4日目。未だにアミメキリンは迎えに来ない。とうとう泣き出してしまったつなぎは、看守のクロヒョウに慰めてもらっていた。


「うっ、うっ…… だって、遅くても3日で迎えに来てくれると思ったのに……」


「まぁまぁ、きっとなにかあったんよ。もし迎えに来なくても、決められた日数が終わったらだしてあげるやんか」


「…………何日ですか?」


「一週間やねぇ」


「あど3日もあるじゃないでずがぁぁ!!」


「うわわ泣かんといて! しゃあないやん決まりなんやもん!」


 ここサバカバンでは誰かが迎えに来ない限り、一週間牢獄(中は普通の部屋なので居心地は悪くない)に監禁され続けるのだ。脱出不可とは一体……


「とりあえずうちは入り口に戻るから……何かあったら呼んでな?」


 クロヒョウはそう言って監獄の側を離れていった。




「……どうすればいいんですか」



 つなぎは膝を抱えてうずくまる。何だかんだ今までアミメキリンに引っ張ってもらってきた。

しかし、今彼女はここにはいない。本当に見捨てられたのか、もしかして何かあったのではないだろうか。


「……弱虫」


 ふいに、自分以外の声が聞こえてきた。


「意気地なし……小心者……怖がり……腰抜け……」


 めっちゃ罵倒された。


「だ、誰ですか!?」


声は監獄の外、風景が見える小窓(格子つき)の方から聞こえてきた。


「パパはもっとアクティブだった……やっぱり……パパとは別者……」


 ひょっこりと顔を覗かせたのは、ジャイアントパンダの家にいるはずのジャンジャンであった。


「な、何でここに!?」


 つなぎは驚く。そう、彼女は自分の意思が希薄で、家の周囲から離れることはないはずなのだ。


「……理由は後、とにかく……ここを脱出する」


 そういうとジャンジャンは鉄格子の窓に手をかけ、力を込める。ベキリと音を立て、まるで粘土細工のようにそれは引きちぎられた。


「ええ……」


 さすがのつなぎも引いているが、自分もけっこう物理で解決してきた過去があることは都合よく忘れていた。





「この子を知りませんか~、私に似てとってもキュートなこの子を知りませんか~?」


 その頃ジャイアントパンダはジャンジャンを探していた。


「この子って、その似顔絵、あなたの事ですよね?」


「いやそうなんですけどー、そうじゃないんですよー!」


「???」


 捜索は困難を極めていた。





「な、なんやの! 今の音!?」


 派手な音を出してはそりゃあ気が付かれる。外からクロヒョウが駆けてくる音がする。


「……早く。」


 ジャンジャンは格子窓の外から手を伸ばし、つなぎを呼ぶ。今見つかったら、投獄期間が延ばされるかもしれない。


「……わ、わかりました!」


 つなぎはその手を取り、引き上げて貰う。とうとう脱獄まで経験してしまう彼女なのであった。



 みずべちほーの沿岸部を走りながら、つなぎはジャンジャンに問い掛ける。


「い、一体どうやってあの場所まで……」


「……気合い」


「そうなの!?」


 ジャンジャンはつっこみを無視して話を続ける。


「…………私の……輝きは……黒いセルリアン達に奪われた……」


「それはつまり、サンドスター・ロウを持った……」


 ジャンジャンは走りながら頷く。


「そのうちの一体が、近づいてる……私の輝きが近くなると……私も自分をある程度取り戻す………」


「だから動けるようになったんですね……」


 つなぎが納得すると、ジャンジャンは続けて話す。


「私の心を捕らえている、アイツ…………皆を……海に……引きずり込もうと…………また……犠牲者を増やしちゃ……いけない……」


────────────────────────────



「早く! 急いで運ぶのです!!」


 海上、謎の黒い海によって、多数の海洋性フレンズが力なく浮かんでいた。


「博士、この黒く染まった海は……」


 助手は博士の後ろをフレンズを抱えながら飛ぶ。二人の他にも、救助に駆けつけた鳥系フレンズの姿が見られる。


「恐らくはサンドスター・ロウ……しかし、この異臭と濃度、何もかも危険なのです。海底火山からサンドスターが涌き出ることもあると聞きますが、これは恐らくは違うのです」


「海への接近は禁止しました。これ以上被害が広がらないと良いのですが……」



 しかし、嫌な予感はよく当たる。空を飛ぶ長達を、海中から大きな黒い影が追跡していた。


「!? 博士、下を!」

「な、何ですかあれは!」


 その何かは水中より弾丸の様に飛び出し、二人へ向けて突撃する。


「「うわああぁぁ!!」」


 巨大な黒い影が二人を飲み込もうとする直前、水上を疾走してきた一人のフレンズが、長達の前に飛び出し直撃を防いだ。弾かれた影は、そのまま激しい水しぶきをあげもう一度海中に潜る。


「危なかったようですね」


「た、助かったのです…… お前は……?」



「私は正義の味方…………仮面フレンズ FOX!!」


ここでテーマソング


 ギンのお面に~白ブレザ~♪ 昨日のご飯はあぶらあげ~♪



「……オイナリサマだとバレバレなのです……」


 長である彼女達はオイナリサマにも何回か会ったことがあるため、即行バレた。


「…………他のフレンズも見ているので、正体隠蔽中です…… それよりも早くお逃げなさい! アレは、貴方達だけでは手に負える相手ではありません!」


「一体何なのですか、アレは?」


「…………アレは人が乗ってきた船にサンドスター・ロウが宿った怪物」


 海の底から巨大なそれが姿を見せる。側面にセルリアンの目がまるで砲台の様に並び、船頭にはギザギザに開かれた口、船尾からは黒い液体を垂れ流す。


「過去にも他のエリアで、船にサンドスター・ロウが宿り海のフレンズに甚大な被害が及んだ事があります。────船のセルリアン、通称、セルシップと呼ばれるものです……!」


 海を疾走しフレンズを根こそぎさらう海賊な怪物、パイレーツ・オブ・セルリアンというわけである。


────────────────────────────



「そのセルリアンの接近を皆に知らせないといけないんですね……!」


 つなぎとジャンジャンはノンストップで走り続けていた。


「そう…………でも、皆聞く耳を持たない…………PPPが……ライブが……浮かれて危険な浜辺に集まっている…………」


「浜辺!? 何で!?」


「重大発表イベントがあるって…………皆が…………」


「そんなことやってる場合じゃないんですよね!?」


「そう…………でも皆おかしくなってる……ライブにいかなきゃ……それしか言わない……」


「と、とにかくアミメキリンさんも探さないといけないし、PPPの皆さんの所へ行きましょう!!」




 別の場所、PPPファンの仲の良い二人のフレンズが揉めていた。


「ね、ねぇ本当にライブに行くの?海沿いは危険だって話が……」


 片方のフレンズは、その言葉を受けもう一人の目の前に立ち、そして────


「…………」ガシッ チュウウウ

「~~~~‼?」


 ご挨拶を受けたフレンズは倒れるも、すぐに起き上がり二人して同じ方向へ歩いていく。


「…………ライブニ、イカナキャ……」




 走り続け、つなぎとジャンジャンはようやくPPP 達の家までたどり着く。


「私は……外で見張ってる……私の事を……説明するのも大変だから……」


「分かりました、すぐ戻ります!」


 つなぎは家に入り、居間へと向かう。そこには、イワビー、ジェーン、フルルの姿があった。


「皆さん! 何があったんですか!」


「あ! つなぎ! 大丈夫かよ今外歩いてきたんだろ!?」


 イワビーは姿を見せたつなぎにそう声をかける。


「外を歩いて大丈夫かって…………特に何もありませんでしたけど」


「本当ですか? 朝から顔に生気のないフレンズさん達が、あちこちを闊歩していたものですから……」


 ジェーンは心配そうにそう言う。


「生気のない…………それよりも、アミメキリンさんは!?」


「それが~…………隣の部屋のベッドで寝てるけど、ずっと目を覚まさなくて~……」


 フルルは俯いてそう言った。


「そんな…………怪盗事件は!?」


「まんまと盗まれちまった…………後輩達が大事にしてたもんを……アミメキリンは事件について何かに気が付いたみたいで、一人でブレーカー室に行ったけどよ……帰ってこないから様子を見に行ったら、倒れてて…………」


「め、メチャクチャじゃないですか……! こんな状態でライブをやるって言うんですか!?」


「やるわけねぇだろ!! でもよ、中止にしようって言ったらコウテイとプリンセスはやるって言って聞かないんだ! 付き合ってらんねぇって言ったらだったら二人だけでやるからって…………でもそんなこと出来ねぇだろ!? だからマーゲイに相談しようと思ったら何処にもいないし……何が起こってるんだよ……!」


 取り乱すイワビーの肩にジェーンはそっと手を置きたしなめる。


「つなぎさん、とりあえず取ってきたというお薬を、アミメキリンさんにあげて下さい」


 ジェーンがそんなことを言い出すが、しかし当然、つなぎは何のことか分からない。


「えっ、薬……?」


「そうです、コウテイさんが言っていましたよ? つなぎさんは倒れたアミメキリンの為に数日薬を取りに行って帰ってこないって」


「…………まさか」


 嵌められたのだ。アミメキリンが倒れればつなぎがサバカバンに入っていることを知っているのはPPPのみ。そこにつなぎはもうサバカバンにいないと伝えられては、誰も自分を迎えに来ない。


「怪盗PPPは、コウテイさんだった……?」


 分からない、判断材料が無さすぎる。

 アミメキリンがなぜ意識不明か分からない、自分は事件の時いなかったからその事に関しても力になれない。そして何より、危険なセルリアンがやって来るかもしれない浜辺でコウテイとプリンセスは大勢のフレンズを集めてライブを行おうとしている。



「……薬、見つからなかったの~?」


 フルルの言葉にも、何かを返す気力が出なかった。つなぎは、とぼとぼとアミメキリンが寝ているという部屋に入る。


 先程いた部屋のすぐとなり。隅のベッドでアミメキリンは寝ていた。ほんの僅かに苦しそうな顔をしている。


「アミメキリンさん……ごめんなさい、もっと早く来てあげていれば……」


 二人であればこんな事にはならなかったかもしれない。寝ている彼女の手を取るが、握り返される事はなかった。


「僕一人では、どうにもなりませんよ…………」


つなぎは、握った手を自分の額に押し付けた。アミメキリンの手の暖かさこそ感じるが何も起こらない。


 と、その時、そのマフラーの中から白い何かがもぞもぞと這い出てきた。


「これは……?」


 つなぎは、それを指で摘まみあげる。


「……」ジタバタ ハナセー‼


「これは、セルリアン!? 何でマフラーの中から?」


 慌ててつなぎはマフラーの中を漁る。すると、その中から出てきたのは────


「これは…………ホワイトセルペッパー!?」


 ダークミミちゃん事件の時に元暴走ボスが作り出してくれた、サンドスター・ロウ浄化作用を持つミニセルリアンである。


「律儀にまだ持ってたんですね……いや、それよりも、もしこれをマフラーにしのばせたのがアミメキリンさん自身だったら……!」


 つなぎはホワイトセルペッパーを数粒取りだし、アミメキリンに無理矢理飲ませる。


 その途端、アミメキリンの体からサンドスター・ロウが霧の様に抜け出す。


「さすがアミメキリンさん……! 何者かにサンドスター・ロウを盛られ、それに気が付いて意識を失う前に対抗措置を講じておくなんて……!」


 サンドスター・ロウの排出が終わり、アミメキリンがゆっくりと目を覚ます。


「アミメキリンさん!!」


 しかし、つなぎとアミメキリンはひとつだけ間違いをおかしていた。


「私の事を助けてくれたのは、貴方?」


「はい、そうです! アミメキリンさん、僕が分かりますか!?」


「ふ、ふふ、クフフフフフフフフ……!」


「あ、アミメキリンさん?」


 横になっていたアミメキリンは、上半身だけがばりと起き上がり、つなぎの方を向きなおす。


「褒めてあげるわ! この暗黒探偵ヤミメキリンを、この地上に召還したことを!!」


「いやちょっとどうしたんですか!?」


 一見いつも通りのアミメキリンだが、よく見ると茶色の網目模様が黒く変色している。


「光栄に思いなさい! 貴方を私の第一の手駒に任命してあげる……! クフフフフフフフ……! 黒いヤギの悪魔が私に囁くのよ!! この地には、断罪されるべき事件が渦巻いているとね!!!」




 つなぎとアミメキリンはひとつだけ間違いをおかしていた。


 ────お薬は、用法・容量を守って正しい症状に使わなければいけないという事を。

 

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