第49話 名探偵の敗北

※4000PV達成致しました! 本当にこんな拙作を継続して読んでくださってありがとうございます!!

その為、近々4000PV記念の小話及び各章を手軽に振り返れるまとめを追加致します、お楽しみに!!


今回から核心に入っていきます。初めての描写が多くわかりづらい形で申し訳ありません……

あと、お話の都合により前回の予告状に時間を記載致しました。修正になりますがよろしくお願いします。




前回のあらすじ


UPPPの3人がストライキしている理由を聞きに行っている間に、怪盗から予告状が届いたのであった。





“今夜20時 PPPに関する大切なものをいただく──  ~怪盗PPP~“


「よ、予告状……! 怪盗からの……!? くぅ~、なんて事件っぽいのかしら!!」


「よ、喜ばないでくれ!」


 コウテイのつっこみにより、アミメキリンは我に返る。


「あ……わ、悪かったわ。しかし、怪盗PPPとは安直な名前ね。そしてこの内容……大切なもの。何か思い当たることはあるのかしら?」


「ロックか!?」


 それはイワビーだけである。


「ライブハウスやコンサート会場でしょうか……?」


 固定資産はガチすぎる。確かに価値はあるが。


「歌と音があれば~、私達はアイドル出来るよ~?」


 そして会場無くても何とかなるフルルのプロ精神。グレープ君との邂逅は彼女を強くした。


「タイミング的には、新曲の音源だろうか…… ライブでも使うもので、盗まれたらライブ自体が成り立たなくなる…… 勿論スペアもあるが……」


 コウテイは机の端にある3枚のCDを手に取った。音声の無い、曲データだけのもの。実際に使う予定のものらしい。


「予告は今夜……どうしましょう? 何か良い案無いかしら、アミメキリン、つなぎ?」


 プリンセスは困った表情で二人に助けを求める。


「こんなとき……ホラー探偵ギロギロなら、どうするかしら……」


「大きな部屋の中央に透明なガラスケースに入れて皆で守りますか?」


「つなぎ……それね、博物館とかだからそうやって守っていること多いけど、別にこの場合その必要は……」


「でも怪盗PPPって言うぐらいだから多分PPPのうちの誰かなんじゃないですか?」


「いやそれは安直に考えすぎよ、名前なんてどうでも……」


「だってみずべちほーで文字を書けるのなんて、PPPの皆さん位しかいないですよね?」


「………………………………あ」


 アミメキリンとPPPのメンバーはその事実に気が付く。



「そうか……文字。書けるのは後は長くらいだがあの二人は多忙でこんなことしてる暇は無いだろうし……」


 長の可能性を否定するコウテイ。そうなるとやはりPPPの中に予告状を書いた犯人がいることになる。しかしイワビー、ジェーン、フルルは悩み相談を通していたずらにPPPをかきみだす事はしないと思うし、コウテイも新ユニットの事で悩みを抱えている最中。


「となれば……プリンセス?」


「ちょ、ちょっと待ちなさい! 私は自分で言うのも何だけどPPP再建の立役者よ! 自分から壊すことなんてしないわ!」


 プリンセスの言う通りである。やはり、予告状はPPP以外の誰かが送ったのか……


「いや待て! そう言うのなら、文字が書けてここに最近出入りしているフレンズがいるだろう!」


「え? ……それって」


 身近過ぎて、いや最初に文字の事を指摘してきた為見落としていた、ということだろうか。


 アミメキリンはゆっくりと彼女の方を見た。

 他のPPPのメンバーもゆっくりと彼女の方を見た。



「………………僕?」


 つなぎが自分を指で差すと、皆ゆっくりと頷いたのであった。




 ここはみずべちほーに唯一あるフレンズ収容所。そのあまりの脱出困難さから、フレンズ達は最も尊いコンビの名前に重ねてこう呼ぶ。けもの収容所──サバカバン。


 かつては悪いことをしたフレンズがお仕置きに入れられ、吸獣鬼(ミライさん)により精神力を限界まで削られたという、やべー場所である。

 今では派手に喧嘩してしまったフレンズが反省する場所に使われているのだが……



「アミメキリンさん!! なんで僕が収容されなきゃいけないんですか!! 」


 つなぎはとうとう逮捕、裁判、人質だけではなく、投獄まで経験することになった。


 トロフィーを獲得しました! 

 ──ポリスと顔見知り(銅)───


「だって貴方が一番可能性あるんですもの! …………PPPの秘蔵アイテムを手に入れて、ジャンジャンに見せてあげるつもりだったとしたら、動機もあるわ……」


「あるあ……無いですよ! もし僕が犯人なら予告状なんか出さないですよ!」


「あえてPPPの大切なもの、と曖昧にすることによって、今価値あるものを聞き出そうとしていたのね……」


「なんで僕の事になると推理力上がるんですか! 予告状の文字の事も僕が犯人なら言わないでしょうが!!」


 せっかく気が付いた真実が自分に牙を向く魔法の筒状態である。さすがのつなぎもおこであった。サバカバンの囚人は危険。


「ま、まあ今日一日だけだし我慢してちょうだい。もし怪盗なんか現れても私が華麗なマフラーさばきで捕まえちゃうわよ! つなぎは、ゆっくり昼寝でもして待っててちょうだい」


「…………アミメキリンさんの膝枕じゃないと安眠出来ないです」


「貴方ねぇ…… 最近じゃ私が先に起きて貴方の頭にマフラーをぐるぐるにした枕入れといても爆睡してるわよ?」


 ついでに言えば寝ようと思えばそれが無くても爆睡出来るのだ。


「ちぇっ…… 分かりましたよ。じゃあ今日はまだ一回しか使ってないマフラーで寝ますか……」


「えっ、ちょっと待って。今までマフラーちょくちょくあげてきたけど、まさか全部取っておいてる上、枕としての使用回数もカウントしてる何て言わないわよね……?」


「………………」


「やっぱり3日位入ってなさい」スタスタ


「い、いや冗談ですよ! 冗談だから戻ってきてください! 謝りますから! だから行かないでー!!」





 アミメキリンはPPPが住む家へと戻る。


「凶悪犯は無事収容されたわ」


 むすっとした顔で言うアミメキリン。


「い、いや半日ちょっとだろ? そんなロックじゃない言い方……」


 イワビーがたしなめるも意味無しである。


「3日位は放置で良いわ」


「何があったんだよ!?」




 UPPPハウス


 はい、昨日、衝撃の光景を目撃したアデリーです。

 まさかプリペンさんとコウテイさんがデキていたとは…… こんな事実誰にも話せません。すきゃんだるとかいう奴ですね、バレたらアイドルは終わりだとか……言いませんよ? 私は平穏を好むアデリーペンギンですから。


 しかしやってしまいました。キングさんが一時間位気絶しています。コウテイさんより気絶しにくいのですが、驚かせたりするとその後1時間は目を覚まさないのです。

 私が「うわああああ!」と叫びながら目覚めたせいです。起きる直前に昨日の光景がフラッシュバックしちゃったんです、ごめんなさい、キングさん。


「なぁ、アデリー」


 おや、何でしょうジャパリまんの食べかすをほっぺにつけたヒゲッペさん。


「わたしさ、思うんだ。キングが強いの、嘘なんじゃねえかって。あとイワビー、ロックて言葉使いすぎだよな。そんでアデリー髪型がペンギンっぽくてつけてるヘッドホンもペンギンの目に見えるからバックしてくるとめっちゃ怖い」


 ……始まりましたよ、ヒゲッペの謎トークマシンガン。本人はもっと楽しいこと喋りたいのに口が勝手に思っても無いこと言っちゃうらしいんです。

 可愛いのでちょっといじめましょう。私は立ち上がって、後ろを向いて彼女へ向かって真っ直ぐバックしていきます。


「うわああだから恐いんだって!!」


 よっしゃ、いたずら成功です!

 しかし、そうこうしていてもアミメキリン達は来る様子がありません。


「おーい、アデリー、ヒゲッペ、キングいるかー?」


 あ、この声はコウテイさん……アミメキリンさん、伝えてくれなかったんですかね?行き違いだったとか……


「実は、大変な事が起きたんだ。なんかPPPに関する大切なものを盗むって予告状が来てな……危険かもしれないから、お前たちも私達のハウスの方まで来てくれないか?」


 なんと、そんなことが起こっていたとは。私達のことよりも大変な事が合ったんですね。これはワガママ言ってる場合ではなくちゃんと行かないと……


「……分かりました、キングさん起きたら行きますね」


「頼んだぞー!」


 そういってドアの向こうからいなくなるコウテイさん。

 行かなくては……キングさん、いつ起きるんですかね。


────────────────────────────


 その頃、みずべちほー沿岸の海でたくさんのフレンズが浮いているのが目撃された。


 現場は、海が黒くなりながらも7色に光っており、嗅いだことのない異臭が漂っていたという。


────────────────────────────


「さて、皆に集まって貰ったのだけれど」


 夜、予告時間の少し前。アミメキリン、PPP5人、UPPP2人はPPPが住んでいる家の広い居間に集まっていた。


「ってあれ?キングは?」


「気絶から復帰しないので隣の部屋のベッドに寝かせてます」


 アデリーがぼそりと言った。


「そうなのね……というかコウテイもソファーで寝ているのね」


「時間が来たら起こして欲しいってよ」


 イワビーがそう言うとヒゲッペが突っかかる。


「時間だけにクロックってか?笑えねぇぜ」

「言ってねぇだろそんなことー!」


「ふふ……いや、彼女達はいつもああなんです、ご心配なく」


 仲悪そうに見えることをジェーンが訂正、喧嘩するほど仲が良いタイプらしい。二人で楽器を引いてることもあるんだとか。


「しかし、緊張するわね……ライブよりもドキドキするわ……」


 プリンセスは落ち着かない様子だ。


「予告状の時間まであと10分位前だねー、ジェーン、すぐそこにボスがいたから一緒にジャパリまん貰って食べて待ってよ~」

「そうですね、1分もあれば戻ってこれますし」


 予告状の時間は20時。現在時間19時59分。なのに彼女達は出ていってしまう。


「あれ? 何で10分前なの?」


「ああ。この時計、PPPメンバーが遅刻しないように10分進めてあるんだよ」


 イワビーの言葉にアミメキリンは驚きの声をあげる。


「え!? 私ズレてると思って正確な時間に合わせちゃったんだけど!?」


「え!? じゃあもう時間じゃない!?」

「嘘だろ!? ロックかよ!?」

「マジかよ!? メタルかよ!?」


 3人の叫びと共に、時刻が20時に変わる。


 バンッという音と共に、部屋の証明が消え真っ暗になった。


「嘘!? 本当に怪盗の襲撃!?」


 アミメキリンは手探りで移動するも、机にぶつかってあいた!と声をあげる。


「うわ、起きたら真っ暗だぞ! 何が起こっているんだ!?」


「その声……キングね!?」


「はぁはぁ、私もいるぞ!」


「コウテイ! フルルとジェーンは!?」


「外に行きっぱなしだぜ! 俺はいるぜ!」


「あ! イワビー足踏むなよ! わたし、ヒゲッペもいるぞ!」


「皆! 動かないで! 実は私、CDの側にいるの! 怪盗には手出しさせないわ!」


 そう言ったのはプリンセス。



 その後、数秒の静寂、そして───


バタン!


「!! 今の音は!?」


 あぁ~! 出入り口が閉まった音ぉ~!


 というおふざけをする間もなく、一同が動揺する中再び部屋の電気がつく。


「………………終わったの?」


 アミメキリンは辺りを見渡す。取り合えず、プリンセスの側にあるCDは一枚も取られていない。


「皆! 何か取られていないかチェックして!」


 アミメキリンの叫びに、一同はハッとして調べ始める。


「凄い騒ぎですが、もしかして何かありましたか!?」

「怪盗来た~?」


 ジェーンとフルルもすぐに合流。


「二人とも、誰か出ていくのを見なかった!?」


 しかし、その言葉に二人は首を振るのみ。


「たまたまの停電……? いや、あり得ないわね……」


 居間、台所、風呂、ブレーカーのある部屋等々PPPハウスを探しても、何も盗られてはいなかった。


 しかし、意外なところで失ったものが判明する。



「あああ! 私達の家のドアが、開いています!?」


 アデリーが叫ぶ。元はライブ関連の小物が入っていた小屋の為、PPPハウスからかなり近い位置にあるアデリー達の家、そのドアが開いていた。


「カギはかけたの!?」


「かけましたよ!」

「わたしも確認した!」


 アデリーとヒゲッペはそう言う。


 急いで中に入る一同。そして……


「わたしのメタルドクロアクセサリーが……」

「私のコウテイさん人形が……」



「私の、マーゲイさんがくれた衣装が……」



「「「──────無い……」」」



 PPPとはペンギン・パフォーマンス・プロジェクト。今はまだ正式発表されていなくても、アデリー達3人も、その中の一員。彼女達の大切なものが盗まれた瞬間であった。




 しかし、アミメキリンは冷静であった。犯人は、致命的なミスをいくつも犯している。犯人が誰かは、目星がついていた。


(でも彼女一人では無理。だとすると………………)


「ごめんなさいPPPハウスに戻るわ!」


「アミメキリンさん!?」


 アミメキリンは、途方にくれるアデリー達を尻目にPPPハウスへ走る。急げば、まだ間に合うはず。証拠が逃げてしまうその前に。



 しかし、彼女は見誤っていた。この事件の裏に隠された、大きな悪意を。あるいはつなぎと一緒であれば、何とかなったかもしれない。



 バン!と扉を開けブレーカーの設置された部屋へと入る。案の定、そこに彼女はいた。



「やっぱり……一度探した時には気が付かなかったけど、そこにいたのね。貴方が…………共犯者ね!」


 アミメキリンは彼女に指を突きつけ、そう宣言する。しかし、指摘を受けても、そのフレンズは動かず、何も答えなかった。


 代わりに、答えは後ろから返ってきた。


「正解にタどり着くのが、早いなァ」


「───誰!? もがっ!?」


 アミメキリンは後ろからやって来たフレンズに口を塞がれる。そして、部屋に居たフレンズに羽交い締めにされ、完全に動きを封じられてしまう。


「動かないでクれ? 上手く出来ナいから……」


 そのフレンズは、アミメキリンの顔に自分の顔を近づけ、そして─────


「はむっ………………」

「~~~~!!!!」



 数秒の後、アミメキリンは解放される。しかし、立つことは出来ずそのまま地面へと崩れ落ちた。倒れ付した彼女の口からは、黒い何かが流れ出していた。



「まずハ一人……あと、一人」


 そう言ってそのフレンズはニタリと笑う。傍らに佇むもう一人のフレンズは笑わない。


 そしてアミメキリンは動かない。ここにはいつもピンチを助けてくれるつなぎも、長も、他の仲間もいなかった。



────────────────────────────


「アミメキリンさん、遅いなぁ…………本当に3日放置は、しないと思うんですけどね…………」



 つなぎは、アミメキリンが迎えに来ないまま2日目の朝を迎えていた。結局、そのまま1日経っても、アミメキリンは来なかった。





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