第48話 アデリーは見た!

※またも更新遅れ申し訳ありません……

今回は話を進めたいからハイペース回です。あとちょっとえっちぃ場面があるのでこのお話だけR-15です。良い子は読んじゃいけないよ!!



前回のあらすじ


旅立つグレープを見送ったフルルは、またひとつ強くなったのであった。



 今日も今日とてお部屋に引きこもり、あ、皆さんこんにちはアデリーペンギンです。


 え? 知らない? はぁ、知られていたらむしろ困ります。地味なので。アニメにもアプリにもでてないですし、むしろ知っている人は誇ってもいいかなと。

 一説によると私が全てのペンギンの元で、ここにオプションパーツを付けていくことで他のペンギンになるらしいですよ。まぁ、嘘ですが。


 そして私の向かいに座っているのが、ヒゲッペことヒゲペンギンさんです。なんですか自分で愛称名乗って。イワビーさんへの対抗意識ですか、可愛いですねちくしょう。

 でもそんな彼女は今自作のメタルでドクロなアクセサリーを机の上にのせてボーッとしています。


 そしてあちらはキングペンギンのキングさん。ペンギン界隈では割りと古株の方で、私達と一緒にいてくれるのが不思議なくらい立派な方です。

 ジャイアント先輩と共に巨大セルリアンを撃破、ライオンとヘラジカのガチ喧嘩を仲裁、その他数々の偉大な逸話を持ち、セルリアンハンターランキングでも上から七番目に位置する実力者。しかし今日は穏やかな顔でコウテイさんフィギュアを眺めています。


 この三人が一つ屋根の下暮らしているのは、今度のPPPライブでの重大発表の為。私達3人が、新ペンギンアイドルユニット“UPPP“としてデビューする、その為です。


 最初はアイドルなんて大変なこと、やるつもりはありませんでした。私みたいに地味で、なんの取り柄もない、ペンギンであるというだけのフレンズ。だから凄いなー、とライブ等を見て思っても自分がやるなんてとてもとても……


 そうやって燻っていた私がヒゲッペとキングさんに会ったのは、偶然では無かったのかもしれません。ライブを聞いた足で何となく向かったけもマの、意味もなく足を運んだヒトが扱っていた楽器を取り扱うお店。そこでたまたま会った二人と打ち解け、少しずつ音楽を楽しむ様になり、あのフレンズに声をかけられて……


「おーい、いるんだろう! いい加減、顔を見せてくれ! ライブまでもう数日も無いんだぞ!」


 やってきました、お母さん(コウテイ)が。今日も私達に練習しようと声をかけに。

 でも私達は引きこもり続けます。コウテイさんも鍵は持ってますが無理には開けません。しばらく呼び掛けますがそのまま帰っていきます。ごめんなさい、でも今は練習出来ないのです。


 私たち、自信を砕かれ絶賛やる気ゼロ状態ですから。





「……という訳なんだ。何故か急に練習にも出ず、引きこもってしまったんだ」


「なるほど、貴方の悩みはそれだったのね……」

「きっとマリッジブルーってやつですね、幸せすぎて不安になってるんですよ」

「つなぎ……マリッジなんちゃらの意味は分からないけど多分違うわよ」


 アミメキリンとつなぎはコウテイに呼び出され、相談を受けていた。匿名である必要はない為、こうして面と向かって話しているのだ。


「それで、引きこもっている彼女たちを部屋から出して欲しいと」


「そうなんだ。やりたくないとかなら強要はしない。私が無理矢理アイドルやってみないかと引き入れたようなものだしな…… 正式発表したわけでもないから。ただせめて理由が知れたらと……」


「ふむふむ……じゃあ出てきてもらうところからね」

「部屋から出すだけなら手段はいくつも……」


 ひそひそと話すアミメキリンとつなぎ。


 ケムリダマヲホウリコンデ……

 イヤ、ヘヤヲサウナジョウタイニシテ……


「て、手荒なことはやめてくれよ!?」


 慌てて制止させるコウテイにアミメキリン達はじゃあどうやるの!?という目を向けたのだった。




「さて冗談はさておき……どうすれば良いのかしらね……?」


 頭をひねるアミメキリン。


「良くあるのは天岩戸作戦ですかね」


「アマノイワト?」


「日本神話で、引きこもった神様を外へ出すために行われた作戦です。めっちゃ楽しい催し物を家の前でして、外に出てきて貰うってやつだったはずです」


 ざっくばらん過ぎる説明により、伝えられる神話内容。


「なるほど……」




「というわけで用意しましたバーベキューセット。これで彼女達の家の前で肉を焼きましょう!!」


「美味しそうな肉の匂いで誘い出す……何て恐ろしい作戦なの……!?」


 勿論、彼女達がジャパリまんをあまり食べていない情報もコウテイから得ている。空腹へ焼肉はさぞ効くだろうという考えも含まれているのだ。


 さっそく肉を焼き始めるつなぎ。美味しそうな香りが辺りに漂い始める。


 ところでバーベキューは煙がめっちゃでる。家の前でやる、それテロと変わらない。



もくもくもくもくもくもくもくもく……


「………………別のところでやってください!! ケムいです!!」


 耐えかねたアデリーが扉を開けて文句を言いに外へ出てきた! 作戦成功である。


「あ、食べます? 美味しいですよ?」


「…………食べますけどまずは場所を移してください!!」




 というわけで場所を移してバーベキュー再開。アデリーだけでなくヒゲッペもキングも一緒です。


「もぐ……そうですか、貴方達はコウテイさんの差し金でしたか……」


 ジト目でアミメキリン達を見つめながらお肉を食べるアデリー。


「ごめんなさい、でも彼女心配してたし……引きこもった理由も知りたがっていて」


 その言葉を聞いて黙るアデリー。代わりにヒゲッペが話始める。


「最近、精細を欠いていたPPPのライブが、一段とレベルを上げて戻ってきたんだ」


「あ、そうそうそれ私達が……!」


「それを見て、私達が敵うわけないと、同じアイドルを名乗るのもおこがましいと思ってしまって……」


「…………」


 キングがそれに言葉を続ける。


「練習量も、才能も、熱意も何もかも劣っている。勝てるところなんかない。メンバーの数だって少ないし…… 彼女達の足を引っ張ってアイドルのイメージを下げるくらいなら、やらない方が良いのかと、不安になってしまうんだ。勿論最初から上手くいくわけないし、練習しなきゃ上達出来ないのは分かっているが、心のどこかで自分を責める声がやまないんだ……」 


 ヒゲッペもどんよりとした声で話す。


「マーゲイさんが多忙にしている姿や、深夜まで練習中するPPPや……あそこまで頑張れる自信が無いんだ……」


 アミメキリンとつなぎは顔を見合わせる。彼女達の気持ちも分かる。しかし、過去のPPPもデビュー直前は緊張していただろう。だったらそれこそ────


「……コウテイに直接相談するべきじゃない?」

「本当はアイドルやりたいんじゃないですか?」


「「「う……」」」


「……とりあえず私達からコウテイに伝えてみるわ。そして彼女の返答を明日、貴方に伝えるから、それから考えてみて」


 メッセンジャーアミメキリン。ヤギでは出来ない仕事です。



 夜、アミメキリン達はコウテイに彼女達の気持ちを伝えるため探したが、姿が見当たらなかった。残っていたイワビー、ジェーン、フルルに行方を聞いてみる。


「ん~、コウテイ……? さっき出ていったぜ」


「なるほど、相談事……お二人が話があると言っていたことお伝えしておきますね?」


「夜遅いから気を付けてね~。それにしても今日プリンセス帰ってくるっていってたし~、コウテイもこんな遅くにいなくなるし~、どこ行ってるんだろ~?」



 UPPPハウス


 アデリーです。昼間アミメキリン達に不安な気持ちを話して少し楽になった自分がいます。ヒゲッペとキングさんもそうなのか、早めの時間なのにもうぐっすりです。


 私は枕元にある衣装を取ります。マーゲイさんが用意してくれたUPPP用の衣装。地味な私にも似合う、落ち着いた色合いのアクセサリーの数々。


 本当はこれを身に付けて今すぐでもライブをしたい。でも、やっぱり否定されるのが怖い気持ちもあるんです、コウテイさんは分かってくれるでしょうか……


「わ、わかった。分かったから!」


 そう、分かったとコウテイさんに言ってもらえ……え、本物のコウテイさんの声!?


 驚いた私はカーテンを開け部屋から外を見ました。



「ねぇ……コウテイ? もっと上を目指したくない?」

「ちちち、近いぞプリンセス!?」


 えええ! 暗くて良く見えないですが、あの木の影でコウテイさんに壁ドンを仕掛けているのは……プリンセスさん!?


「本当は分かっているんでしょう……? 」

「な、なな何のことだ!?」


 ああっ! プリンセスさんがコウテイさんの首に腕を回して、耳元で何か囁いてます!?←静かな夜+野生の聴力で全部聞こえてる


「私の気持ち、分かってるくせに……もう我慢出来ないのよ……?」


 ああっ! 耳元から顔を離して、プリンセスさんがコウテイさんの目をじっと覗きこんで!!←夜行性じゃないけどガッツリ見えてる


「じっとしてよコウテイ……上手く出来ないから」

「だ、だからプリンセス何を……んむむむむ!!??」


「あ、あわわわわわわ!?」


 ふ、二人の顔が、顔が0距離に!!


「ぷはっ……プ、プリンセスぅ……」

「んはっ……ふふ、そんな切なそうな声をあげなくても、もっと……もっと…………んむっ」

「んっ……ちゅぷ……ぷは……はむ…………」


「音が! 音が激しいぃぃ!」


 その光景のあまりの強烈さに、アデリーは目を回し気絶してしまった。


 しかし、コウテイとプリンセスのやり取りは、その後も続けられていた……



 翌朝、アミメキリン達はコウテイの元を訪れていた。プリンセスも帰宅し、数日ぶりにPPPが勢揃いしている様子であった。

 しかし、5人の顔色は優れない……


「ねぇ、コウテイどうしたの? 私達貴方に昨日の相談の件で話したい事があるんだけど……」


「そ、それはとりあえずもう良いんだ! それよりもこれを見てくれ!」


「これ?」


 コウテイが差し出した手紙を受けとる。


「どれどれ……」


 そこには、ペンギンの足跡のスタンプと共にこう記載されていた。




“今夜20時 PPPに関する大切なものをいただく ──  ~怪盗PPP~“

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