第46話 紫色の尋ね人(後編)

※たいっっっへんお待たせして申し訳ありませんでした。言い訳はしません、上手く書けなかっただけなのです。

今回は後編とは名ばかりの中編です。なので裏で本筋の物語を進めております。描写飛んで分かりづらかったらごめんなさいなのです。






 みずべちほーで最も綺麗な砂浜と言われる所に、簡易的なステージが設営されつつあった。

 それを傍らで見守るのは、プリンセスとマーゲイである。


「ばっちり休息して気合い十分です! さぁ、次のライブは重大発表も兼ねて、ビーチの特設会場! ペンギンなのに夏っぽい! 海で踊るPPP! ぐふふ楽しみです……!」


 充電完了したマーゲイはフルスロットルであった。今までの反省を活かしてスタッフを増加。作業は急ピッチで進められている。

 なお、口が固いメンバーだらけとのことだが、万が一イベント内容について口を滑らせるとスペシャルなお仕置きがあるらしい。


「私達もダンスと歌はほぼ完璧に仕上げているわよ! まぁ、大空ドリーマーよりもだいぶ踊りやすいし、そちらは多分大丈夫ね。問題は重大発表の方…… コウテイが私に任せろって言ってたけど、大丈夫かしら?」


「そうですね、こちらが形になったら、一度様子を見に戻りましょう……あ、ライトの位置が歪んでますね、少し直さないと」


 セットの骨組みをひょいっと登るマーゲイ。上にいるスタッフに修正を伝えようとしたとき、後ろにある海に何かが見えた。


「あれ何かしら…………?」


 少し遠い為によく分からないが、何かのフレンズがぷかりぷかりと浮かんでは波にのまれ、また浮かぶを繰り返している。




「大変です! プリンセスさん! 海に気絶してるっぽいフレンズさんが!」


「ええ!? ……本当だわ! ちょっと助けに行ってくる!」



────────────────────────────




 フルルたっての願いにより開始されたグレープくん捜索作戦。アミメキリンはどうやって探すかについて思考を巡らせる。


「この腕輪が落ちていたということは、彼が会場に来たということ……そこから探るべきね」


「というわけでいつもの?」


「聞き込み調査開始よ!」


 ジャイアントパンダハウス前より出発!


「ちょぉっと待つですよー!!」


 歩き始めようとした二人の肩をむんずと掴むジャイアントパンダ。


「数日帰って来なかったのは良しとしても家の目の前まで来て踵を返すなー! まったく、このおどろおどろしい墓のせいであんまりフレンズ来ないんだから、近くまで来たら寄ってけですよー!」


「ご、ごめんなさい、そんなつもりじゃなかったのよ」

「早く聞き込みしたかっただけですから……」


「まったく……悪いけど、話は聞かせて貰ったですよー。その探しているフレンズ?に関係しているかは分からないけど、PPPファンの間でひとつ噂になっていることがあるんですよー」


「噂?」


「そう、それが…………」




「それが、ライブ途中に突如現れそして消える謎のヒト……」


 アミメキリンとつなぎはジャイアントパンダに教えてもらった情報の検証の為、ライブハウスのモニターの前へと来ていた。

 なお謎のヒトはタイトル回収ではありませんあしからず。


「次のライブが始まるのを待っていると日にちが開いてしまう為、過去のライブ映像を入手しました」


 腕輪が発見された日のライブ映像だという。


「この映像の時にライブ会場に来ている可能性は高いわね……。でも、観客席にいるたった一人なんて分かるかしら……ちょっと待って! 今、画面の端、フレンズとは思えないしわくちゃのヒトが見えたわ!」


 秒速で発見。巻き戻して確認、確かに、紳士服のようなものを身につけた老人がカメラに背を向けて立っている。


「しわくちゃって……そういえばフレンズに老人って概念は無かった、いや、いないと言うべきですかね?」


 そもそもフレンズにはオスと老人の外見的特徴をもつ者は今のところ発見されていない。もしいたとしたらかなり目立つ。四神等のフレンズも年齢こそ重ねていても外見は可愛い少女なのだ。


「しかし問題のご老人、現れたはいいけれどすぐカメラに映らない範囲に歩いて消えてしまいましたね」


「これ以上この映像から得られる手がかりは無さそうね…… でも取り合えず、これでグレープくんとやらが確かにジャパリパークに存在することが分かったわ! 次はこの老人を知らないか聞き込みよ!」



────────────────────────────



「さ、先程はありがとうございました!」


 ペコリとお辞儀をする彼女、さっき海で溺れていたところをプリンセスに助けられたフレンズである。


「どういたしまして。見たところイルカかクジラのフレンズだと思うんだけど、溺れちゃうなんて珍しいわね?」


「お恥ずかしい限りです…… あのままだと危なかったので、本当にありがとうございました!」


「ふふ、これからは気を付けてね」


 うっかりさんもいたものだ、とプリンセスはクスリと笑う。

 この間寝ぼけたジェーンがジャパリまんを包み紙から取りだし、包み紙の方に間違えてかじりついて目を白黒させていたが、それに勝るドジっ子だなとプリンセスは思った。


「それで、助けていただいたお礼をしたくて……」


「お礼なんて良いわよ?」


「そういうわけにはいきません、貰っていただかないと私の気がすみませんし! えっと、驚かせたいので目を閉じて貰っても良いですか?」


「うーん、そこまで言うなら…… はい、目を閉じたわよ?」


 言われた通り、目を閉じて両手を前に差し出しお礼の品を受け取る体勢を整える。


「じゃあ、お渡ししますね?」


 ザッザッと砂浜を歩く音がして、彼女が近づいてくるのを感じる。


「今お渡しするので、動かナいでくださいね?」



チュッ



────────────────────────────


「聞き込みの結果、この辺にいることが多いようです。パークでは目立つ容姿なので、覚えている方が多くて助かりましたね」


「ジェーンに描いてもらった似顔絵が超ハイクオリティだったのも大きかったわね」


 こっそり描いてるPPP同人誌のおかげでかなりの画力がついているジェーン。今度のイベントのポスターも彼女の描き下ろしらしい。なにそれめっちゃ欲しい。


「目撃証言が普通にあるので、探さなくてもそこらへんにひょっこり……」



「なるほど。私を追っているフレンズがいたと……」


「はい、アミメキリンと良くわからないフレンズがセットでしたよ? 気を付けてくださいね、彼女達のせいでひっそりとやっていたレストランが満員御礼てんてこまいになってしまいましたので……それでは」


 確かに探さなくてもいた。サーベルタイガーが謎の老人にアミメキリン達の情報をリークしている真っ最中であったが。

 彼女は、けもったーの件でつなぎに対して若干おこなのである。何でもバズらせれば良いとは限らない。国際信州学院大学?知らない大学ですね……


「教えてくれてありがとう。ふむ、ならこの辺にいると見つかってしまう……む?」


 アミメキリン達と老人の目が合った。


「…………」

「…………」


 老人は何も言わないが、やっべ早速見つかった、みたいな顔をして冷や汗をかいている。


(多分あの人ですけどめっちゃ警戒してますよ、アミメキリンさん、どうしますか?)


 つなぎはこっそりアミメキリンに問う。


 彼女は少し目を閉じて考え、頷くと老人に向かって少し近づいた。そして……


「…………こんにちは! わたし、ロスチャイルドキリンよ、よろしくね!」


 彼女がとった行動は、まさかの他のキリン成り済まし作戦であった。




「お、お嬢さん、私に何か用かね? ロスチャイルド?」


 老人、めちゃくちゃ警戒してます。そりゃそうです。


「そうよ! キラキラでお馴染みのロスチャイルドキリン! ロスっちって呼んでね!」


 アミメキリンは(借り物の)知識の中にあるキリンを全力で演じる。


「アミメキリンが貴方を探していたわ! 逃げないと不味いわよ!」


 どことなしかギャルっぽく振る舞いながら、老人に近づく。


「そ、そうです! 血眼になって長い舌で舌なめずりしながら、“あの老人はどぉこぉだぁぁ!“って練り歩いてます、危険です!」


 つなぎは偽の情報で援護する。しかし内容が酷い。アミメキリンは文句を言いたくなる気持ちをぐっとこらえる。あと舌は他のフレンズよりも確かに長い。


「な、なぜ私が鬼の形相で探されなければならないのですか……何かしでかしてしまったのですかな?」


 ごもっともな意見である。ある日突然やべぇ奴が貴方を探していると言われたとき、何かやらかしてしまったと真っ先に疑うだろう。


「そ、それは何故か分からないけど、私いい隠れ場所知ってるのよ! こっちよ、着いてきて!」


「い、いや着いてきてと言われましてもな……」


 困惑する老人。さすがに怪しすぎる。


「早くしないと来ちゃうわよ!」


 本当はもう目の前にいるのだが。


「おーい!」


「ほら、貴方を追うフレンズが……って、あら?」


「アミメキリーン! つなぎー! 老人の情報が手に入ったですよー!」


 ジャイアントパンダが笑顔で手を振り二人の元へ駆けてくる。大声でアミメキリン達の名前を呼びながら。



「今…………アミメキリンと、そう、呼ばれましたな?」


「…………そうね」


 第三者に呼ばれては誤魔化しがきかない。

 アミメキリーン第三の爆弾発言、コイツァ・ゴート!(あなたはヤギね)が打ち破られてしまった瞬間である。


「…………嘘ついてごめんなさい、話を聞かれる前に逃げられる様な気がしてしまって」


 やはりきっちりと話をした方が良いと、アミメキリンは嘘をついたことについて弁明しながらも話を続ける。


 「貴方をグレープくんと仮定してお願いするわ、フルルが貴方を探しているの。知っているでしょう? フンボルトペンギンのフルル。死ぬ前、貴方がじっと見ていたパネルの彼女に、会ってあげてくれないかしら?」


「…………知っていますをしかしなぜ、逆に彼女が私の事を知っているのでしょう?」


 その質問に、後ろにいるつなぎが答えた。


「ずっと夢でみていたそうですよ、動物園にいる貴方と過ごしている様子を。亡くなって、みんなの声に導かれて大好きなフルルの元へ向かうところも」


「そう……ですか。夢で……みんなの声……大好きなフルル……」


 顔を伏せ、悲しそうに呟く。


「やはり……」


「「やはり?」」


 アミメキリンとつなぎの声が被る。

 グレープは、そんな二人をチラリと見た後こう言った。


「やはり私は…………彼女には会えませんっ!!」ダッ


「あっ! ちょっと!?」


 二人に背を向け、突如走り去るグレープ。アミメキリン達は慌ててその後を追うのであった。

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