第42話 秘密のお悩み相談室
※有能な博士と助手回です。PPP書くのがこんなに難しいとは思わなかったのです。
博士と助手に連れられて、アミメキリン達はPPPライブの最前列まで来ていた。おこぼれでジャイアントパンダも最前列に来ていた。がっつりかぶりつきである。
「我々も彼女達がアイドルを復活させるのに尽力したのです。アイドル活動開始前のリハーサルで一回、かばん達が去ってから一回、計2回見ているですが……」
博士は腕を組み、ふむふむと頷きながらそう言う。
「最近は開催頻度が多く、負担が増えていないか心配していたのです」
助手はそういいながら頭を気にしている。結構なたんこぶらしい。凄まじい勢いで頭をぶつけたので、それは仕方ない。
フレンズではない人間の皆さんは強く頭を打ったら必ず病院にいくこと、アミメキリンとの約束よ!!
「セルリアンの驚異に怯える皆に元気を分けてあげたい、プリンセスはそう言っていたらしいですが…………」
「なかなか立派な事ね、感心するわ! 私もたくさんの事件を解決してみんなに安心感を届けないと……」
アミメキリンは博士と助手にそう返すが、二人は微妙な表情であった。
「そう思うならチケットをちょろまかしたりはしないことですね」
「その時気まずかったなら翌朝にでも取りにこれば良かったのです、我々、助けてくれた相手は無下にはしないです」
「「ごめんなさい……」」
アミメキリンとつなぎが素直に謝ると、二人はやれやれと肩をすくめ許してくれたのだった。
「しっ! 始まるですよー!」
そんなやり取りそっちのけのジャイアントパンダがそう声をかけた時、ステージの脇から、PPPのメンバー達が登場した。
「みんな! 今日は来てくれてありがとう! ロイヤルペンギンのプリンセス!」
「イワトビペンギンのイワビーだぜ!」
「ジェンツーペンギンのジェーンです!」
「フルル~、フンボルトペンギン!」
「コウテイペンギンの、コウテイだ!」
「早速一曲目から飛ばして行くわよ! 大空ドリーマー!」
PPPライブが始まり、会場は熱狂に包まれる。素晴らしい歌とダンスの数々に、皆が一体となるのを感じる。終わったとき、アミメキリンとつなぎは思わず拍手していた。
「わたし、音楽って殆ど聞いたこと無かったのだけど感動したわ、ファンになっちゃいそう! 新曲も出るってマーゲイも言ってたし、PPPはどんどん躍進していくこと間違い無しね!」
「そうですね! 凄く元気いっぱいのダンスでした、思わず一緒に踊りたくなっちゃいましたよ!」
「……やはり少し、違和感があったような……」
博士達は過去見たときと比べて、違和感を感じているようだった。
「うーん確かに、おかしいですよー……」
ジャイアントパンダも同じように少し違和感を感じている。
「ジャイアントパンダさん、どこら辺がおかしいと思いました?」
つなぎは軽い気持ちで聞いてみた。
「うーん、気のせいかもしれないですけどー、プリンセスさんが最初観客に向かって握りこぶしをつきだしておーっ、て感じで大空ドリーマーがスタートするんですよー。でも、今日はその拳の加減が弱いし角度も10度ほど上がっていなかったですよー。イワビーさんは、必ずライブの途中で2回はジャンプしてくれますがー、ソロ曲のRockin’ Hoppin’ Jumpin’の時で一回ジャンプしたのみ。イワビーだぜぇ!のだぜぇ!の部分の最後は元気よくイントネーションが上がるんですが半音ほど低かったような気もするですよー。ジェーンさんは曲の合間合間に観客がジェーン!って呼ぶと笑って微笑みかけてくれるですよー、でも普段は一回呼んだだけで気が付いてくれるのに今日は3回ほど呼ばれてようやく気が付いて微笑み返してくれたですしー……ダンスの指先が一番きれいに伸びているのは彼女ですが今日はダンスのこだわりが普段よりも薄く感じたような…… フルルさんにいたっては、やくそくのうたのサビの部分は目を瞑り、両手を胸に当てて、誰かに届きますようにー、って感じでいつも聞いてるこちらもはやおき?してしまうですよー。でも今日はサビを目を開けて、手を空に伸ばして歌っていたですよー。パフォーマンスの変化だ、といえばそれで片付くかもしれないですがー、あの歌はフルルさんの思い入れの強い歌、セルリアンで亡くした誰かへの歌だとファンの間ではひそかに囁かれる名曲、簡単に振り付けを変えるともおもえないですー…… そして、必ずライブのどこかで4.73秒気絶してしまうコウテイさんが、今日は6.81秒も気絶していた。途中で気絶してイワビーさんが起こす、までがテンプレ。いつもより長い気絶時間に、イワビーさんも焦っているように見えましたよー。ただ、私個人の意見なので、ぜひ皆さんの意見も聞かせて欲しいですよー!」
要約 : なんか普段通りじゃなく感じた。
ジャイアントパンダはPPPの事を話すとき超早口です。
「まぁ、それほど些細な変化に抑えていることに関心すべきなのかしら……」
アミメキリンも少しだけ苦笑い。キョウシュウエリア唯一のアイドル、ファンの研究もそれだけ熱心である。
「やはり、手助けしてやるとしますか、助手」
「そうですねコノ……博士。問題の芽は小さいうちに対処するのが良いのです」
慌てて言い直す助手。物語的にはVSダークミミちゃん戦は昨晩の出来事であるので、体だけではない治りきっていない傷があったり。
という訳でライブ終了後少ししてからPPPに会いに行くことになった。ジャイアントパンダには一旦帰って貰うことになったが、残りたいとごねるかと思えば……
「PPPのこと、元気にしてあげて欲しいですよ」
と、すんなり引き下がってくれた。
「みんな、お疲れ様! 今日も最高だったわよ!」
プリンセスは部屋に戻ったメンバー達に水を渡しながら、微笑みかける。
「ありがとな、プリンセス。かーっ! やっぱりスケジュールが詰まってるときっついなぁ……!」
イワビーは額の汗を拭う。
「ふぅ……それも新曲&重大発表イベントまでの辛抱ですね、もうすぐです」
ジェーンは荒い息づかいながらも皆を励ます。
「…………お腹空いたね~、ジャパりまん食べよー」
「フルルは相変わらずだな、私は今日も気絶してしまったよ」
「いや気絶すんなよっ!」
コウテイの言葉にイワビーがつっこみ、みんなふふふ、と笑う。
何てことないやりとり、しかし影からみるマーゲイは気が付いていた。
「やっぱりおかしい……プリンセスさんが皆の失敗したところを指摘して、直す流れなのに……」
こちらもマネージャー兼生粋のPPPファン。やはり違和感を敏感に感じている。そして、マネージャーである彼女にだけわかることもある。
「確かに、皆さん疲れているかも知れませんが、しかしもっとハードなタイミングでももっと普段通りでした。問題は体力面ではない……?」
「なるほど、お前の見立てでもそうですか」
隠れて覗いているマーゲイに後ろから声がかかる。
「うわっひゃわわ! ……って、博士達ですか、驚かさないで下さいよ」
「まあまあ、そんなあいつらの為にこんなものを用意したのです」
「これは?」
アミメキリン、つなぎ、マーゲイはしげしげと目の前に取り出された箱を眺める。南京錠がつけられており、上にはポストの用な横長の切れ込みがあった。
「相談用BOXです」
博士は続けて話す。
「他のメンバーの前で悩んでいる事を打ち明け辛いこともあると思うのです。幸い、マーゲイは字をかけませんがPPPメンバーはサインの為に字が書けます。そこを利用して字で相談できる場を設けます」
「ただの鍵つきの箱ですが、それゆえ開けられません。これに、相談内容を書いた紙を入れて貰えば他のPPPメンバーには確認出来ず、とくめいせー、とやらが守られるのです。来た相談は、アミメキリン、つなぎ、お前達が解決してやるのですよ。誰から来たか分からなければ、返答だけ貼り出しておけば本人はわかるはず。鍵は、お前達に渡しておきます」
博士達は他に調べたいことがあるという。PPPの力になってあげれば、ジャンジャンの事に関して力を貸してくれるかもしれない。アミメキリン達は協力することにした。
「早速PPPに伝えて設置するのです。私の予想ですが、2,3日中に最初の悩みが来ると思うのです」
その後、博士が部屋に入っていき、PPPに箱の事を説明しても、皆特に相談は無いけど……といった反応であった。しかし、相談BOXはしっかりと設置された。
「というわけで一晩経ったのだけど、箱の様子はどうかしら?」
次の日、アミメキリンとつなぎは早速箱の中身を確かめに来ていた。
アミメキリンはあまり期待せずに持ち上げる。しかし、中からカサリと紙が入っている音がした。
「もう相談来てるじゃない」
実はかなり思い悩んでいるメンバーがいたのかもしれない。早速、中から紙を取り出す。
一枚目は……白紙であった。なんかハンバーガーとか挟めそうな感じの紙である。
「ちゃんと入るかなと思って食べ終わったジャパリまんの包み紙を入れてみました!」
「紛らわしいから止めなさい!!」チョップ!
アミメチョップはおしおき力。それでもやらかしチャレンジャーつなぎの挑戦は終わらない。
「気を取り直して……まだ相談の紙はあるわ、こっちにはちゃんと相談が書かれているようね。つなぎ、悪いんだけれど読んで頂戴」
「はーい……」
つなぎはチョップされた所を擦りながら読み始める。
“私はロックを愛しています。そして、それを誇りに思っています。ただ、ロックがPPPファンの皆に嫌われていないか、グループの輪を乱すことになっていないか心配です。こっそり調べて貰えないでしょうか“
匿名性とは何だったのか。
「誰が書いたかバレバレだけど割と対応可能な悩みね……」
アミメキリンはその紙をびりびりに破いてこっそり処分する。幸いファンは沢山いるので、後に聞き込みすれば問題ないであろう。
「箱の中身は、もうそれで終わりですかね?」
「いや、もう一枚あるのよ」
アミメキリンは箱の中から丁寧に4つ折にされた紙を広げる。中々綺麗な字で綴られている。つなぎが横から覗き込み、先程と同じように読み上げ始める。
「えーと、どれどれ……? 私は、とあるフレンズに漫画の書き方と、カップリングについて教えて貰いました。………………それからは、悪いとは思いつつも私以外のPPPの他のメンバーを頭の中でカップルにする妄想が止まりません。推しはコウテイ×イワビー、いやプリンセス×フルルも捨てがたいです。どうすればいいのでしょうか。大切なメンバーでこんなことを妄想する私は、間違っているのでしょうか……?」
読んでいる途中からアミメキリンの顔がひきつり、手がわなわな震えてい始めた。つなぎが読み終え、沈黙すること三秒。
「………ォオオカミせんせええぇぇっっ!!」
叫びながら相談の書かれた紙を左右に引きちぎる。かつてアミメキリンもその話をタイリクオオカミにがっつり聞かされた事がある。自分もアリツカゲラも適当に流していたのだが、ついに染まってしまうフレンズが出てしまった。
ああジェーンよ、せめて推しカプで自分以外のメンバー全員上げなければ誰からの相談か分からなかったのに……
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