第40話 チケットのお求めは正規販売店で

※更新空いてしまい大変申し訳ありません……

言い訳になりますがちょっと上手く書けないスランプに陥ってました……

今回はマーゲイのプロ意識高い回です。PPPはもう少しお待ちください。





 突如始まってしまった死闘を回避し、アミメキリンとつなぎの二人は、ジャイアントパンダの家に招待されていた。


 フレンズの家なので中に家具などは無く、家の主人も客人も床に座るしかない(PPPグッズはたくさん)。


 ジャイアントパンダの前にアミメキリン達が座り、つなぎの膝の上にはジャイアントパンダが座っている。


 良く分からない? つまり、ジャイアントパンダが二人、この部屋にいるのである。


 つなぎは膝の上に座るジャイアントパンダの頭を撫でながら、かつてトキに会ったときよろしく号泣していた。


「ひぐっ……ふぐっ……なんが、よがっだっでぎもぢど、なんでっでぎもぢ、が、わぎあがっでぎで、なみだがどまらないでず……」ズズズ


「ま、また泣いてる…… ああもう……はい、お鼻ちーんってしなさい!」つ みずべまんを包んでいた紙


「ううう……」チーン


 家に招き入れた人物が突然泣き出したら、家主にとっては、たまったもんではない。


「こ、これ私のせいですかー!?」


 事情が飲み込めないジャイアントパンダはあたふたするばかりである。


「いや、ちょっとつなぎはいきなり泣いちゃう時があるだけだから、気にしないで」

「ずみませんもうおさまりました……」


気を取り直してジャイアントパンダに話を聞き始める。膝に座ってない方に、である。


「今つなぎさん?の膝の上に座っているのは、私とおなじジャイアントパンダのフレンズですよー、名前は……」


「…………ジャンジャン」


「そうそう、名前を聞いたらジャンジャンだって、始めて会ったときに言ったんですよー」


 何だかカップ焼きそばチックであるが、どうやら彼女の名前の様だ。


「この家が立ったのはつい最近で、その前は私のねぐらだけがあったんですよー。で、彼女はある日私のねぐらの前で倒れていたんですよー」


 今に至るまでの経緯が彼女の口から語られる。ある日起きたら寝床の横に倒れていたもう一人のジャイアントパンダ。名前を聞いたら答えるが、それ以外は反応を示さない。時折思い出した様に涙を流しては、外へ行き木材で簡単な墓を作り、そこに祈りを捧げている。それの繰り返しで何も解決できぬまま今に至るとのこと。

 


「やっぱり、彼女はつなぎが島の外から連れてきたパンダでたぶん間違いないわ」


 アミメキリンはつなぎ達の様子を見ながら頷き、そう言った。

 ただ、さっきから、初対面の割につなぎとジャンジャンがめっちゃくっついているので、推理しなくても分かることである。

 いつの間にかジャンジャンはつなぎの膝を枕にして横になっていた。距離感の縮め方がエグい!


 そんな様子を見て、ジャイアントパンダは少し複雑そうな顔をする。


「私にも、他のフレンズにも反応を示さなかったジャンジャンが、そんなに反応するなんて……やっぱり、知り合いだってのは嘘では無かったんですねー」


 しかし、ジャンジャンと呼ばれる彼女の目は焦点が合っておらず、ボーッと遠くを見るばかり。言葉もほとんど発しなかった。


「彼女……セルリアンに輝きを奪われてしまったのかしら……」


 セルリアンに襲われたフレンズは、記憶の欠如や一時的な感情の消失、最悪はフレンズ化前の姿に戻ることがある。


「私も色んなフレンズに聞いたんですよー、ただ、こんな長い期間感情を失っていることはまず無いみたいで……」


 ジャイアントパンダも同じ種族のフレンズを放ってはおけなかったらしい。アミメキリン達が来るまで、色々手を尽くしてくれてはいたようだ。


「としょかんまで連れていって長達に相談したかったんですよー。でも、彼女ここから連れ出そうとしても出ていきたくない様子なんですよー……」


 ジャイアントパンダはおもむろにジャンジャンを立ち上がらせ、外へ出る扉の方へと押していく。そして、外へ出ると思われた直前、真横へスライド……サイドステップして外出を拒否した。


「ほらこのとおり」


「な、なるほど」


 ちなみに外へ出てもう一度はいると、所定の位置へ戻っている。パズルゲームチックである。



「しかし、つなぎと会ってもあまり状態が芳しくない……わよね」


 寡黙なフレンズもいるが、やはり例えていうなら心が抜け落ちているような、閉ざされているようなそんな感じである。


「それなんですけど、今までの間に彼女が少しだけ反応を示したものがあるんですよー」


 そういって取り出したのは、PPPライブのポスターであった。


「壁にかけてあったポスターを、じーっと見つめてた時があったんですよー」


 今も、ポスターの事を目で追っているように見えた。


「PPP……この子を元気にするヒントが隠されているんでしょうか……?」


 つなぎもポスターを見つめながら、そう言った。


「私は、この後ライブを見に行くつもりですよー、何かヒントが得られるかもですしー」


「いやライブは行きたいだけじゃ……」


 ジャイアントパンダはつっこみを気にせず先程持っていたPPP応援グッズを再び装備し始める。


「取り合えず、これ以上今ここで分かることは無さそうね…… おあつらえ向きに私達もPPPライブチケットを持っているわ、ライブを見に行きましょう!」





「はい、はいどうぞー」


 やってきましたPPPライブ会場。良い席を取るためにジャイアントパンダはダッシュで先行して行ってしまった。

 入り口でチケットを確認、回収しているのはもうベテランマネージャーの域に達しつつあるマーゲイだ。ちなみにチケットはジャパリまん3個と交換らしいが、販売開始すぐに売り切れてしまうんだとか。

 人気もヤバイが会場設営、受付、その他もろもろ全て一人でこなす彼女の仕事量もヤバイ。


 アミメキリン、つなぎの二人もチケットを渡しにマーゲイの元へと向かう。


「こんにちは、マーゲイ。かばんのパーティの時以来ね!」


「おお、アミメキリンさん、お久し振りです! お元気そうで何よりです」


「それにしても、こちらは凄い盛況ね」


 今までも、けもマ等フレンズが多い場所はいくつもあったが、ここはなんというか熱気が違っている。


「もうすぐ新曲の発表も兼ねた大きいライブがあるんです! ここだけの話、さらに重大発表もあるんですよ、それで、皆さん我慢出来なくて通常のライブも満員御礼状態で……」


 えへへ、と笑うマーゲイも少しだけ疲れているようだった。


「そうなの…… 今が頑張りどころなのね。私達もライブ楽しませて貰うわ!」


「はい! ところで、そちらの方は……」


「あっ、初めまして。ヒトのフレンズで、つなぎって皆から呼んでもらっています」


「えぇ! ヒトのフレンズ、かばんさん以外にもいたとは…… 私も含めて、たくさんのフレンズがかばんさんにはお世話になりましたから、皆さん貴方の事は歓迎してくれると思いますよ!」


「そ、そうですか……? えへへ」


 確かに様々なハプニングがあったが、基本的に優しく対応してもらってきたと、つなぎは改めて思い返す。


「ととっ、他の方のチケット拝見もありますので、そろそろ……」


 マーゲイはアミメキリンの手からチケットを受け取る。通常ここでチケットは回収され、中へと入ることが出来る。ちぎって半券が渡される事はない。紙が貴重だからだ。


 しかし、受け取ったものを見た瞬間、顔色が変わった。


「…………アミメキリンさん、つなぎさん、このチケットは残念ながら使えません」


「え?」


「このチケットは、今回のライブのチケットではなく3回ほど前のライブチケットです」


「え?そうなの?」


「そうです、そして、毎回チケットは全部回収して博士たちにお渡ししています。3回前のライブチケットも1枚も回収漏れは無かったはずです…… このチケットを、どこで……?」


「え、ええと……」


 ……雲行きが怪しくなってきた。アミメキリンは思わず数歩後ずさる。しかし、その背中がドンッと何かに当たった。


「あ、ごめんなさい!」


「構わん、それよりもマーゲイ、何か揉め事か……?」


 そこにいたのは、顔が普通でぇ……足も普通でぇ……ちょっとずんぐりむっくりな感じもしない真っ黒ボディのブラックジャガーであった。


 やってきた彼女を見て、マーゲイは顔を少し伏せメガネをクイッと指であげながら静かに呟く。


「警備担当のブラックジャガーさん、このお二人を事務所までお連れしてください……」


「え!?」

「あ、アミメキリンさん取り合えず謝った方が良さそうですよ……」


 しかし、マーゲイは冷酷に告げる。


「PPPが人気になるにつれ、トラブルも増えてきてしまいました。例え知り合いでも、心を鬼にして対処しなければいけません」


 そう、マーゲイは本当に大事なPPPを守るためにやらなければいけないことはやる、闘うマネージャーでもあるのだ。


「そういうわけだ、話は事務所で伺わせて貰うぞ」


 ブラックジャガーに腕を取られ、連れていかれる二人。


「あ、あわわわわ。わ、悪気は無かったのよ!」


「アミメキリンさん、こういうときは抵抗してはいけません。本当に反省していると分かってもらうために……」


 数々のやらかしをしてきたつなぎは連行のプロであった。主にされる方の。つなぎちゃん、なんて事を……


 しかし、捨てるけもあれば拾うけも有り。ブラックジャガーの前に、突如空から二人のフレンズが降り立った。



「全く……アミメキリン、お前というフレンズはどこかで活躍してもその活躍を帳消しにしないと気がすまないのですか?」

「頭が痛いのです……二重の意味で。マーゲイ、ブラックジャガー、この二人を連行する必要は無いのです、こちらの手違いです」



 颯爽と登場した博士と助手。ちなみに、助手は頭を打ったたんこぶを隠すために灰色のニット帽を被っている。

 そして博士の斜め後ろにくっつくようにして立つこの位置関係は、由緒正しきギンキタポジショニング。前に立つものに全幅の信頼を置いていることを示す立ち位置なのであった。

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