第25話 僕らの森の王

※更新遅くなり申し訳ありません。二次会三次会は悪い文明……


ボス戦回です。この作品はともかく、他のけもフレ二次創作の盛り上がる回は、アプリ版のボス戦BGMを流しながら見るとテンションMax間違いなしです。




 ヘラジカ達の本拠地で眠るセルレオンは、何かを感じて目を覚ました。時刻は夕暮れ。早ければ夜行性のフレンズが活動し始める頃だ。


 辺りを見回しても、何もいない。勿論何かの影に隠れていることは十分あり得る。だが、周囲は竹やぶ。物音せず近づいてくることはまずない。


ふと、地面に影が差した。それを受けて、視線を上にあげる。


 何かが、空に浮いていた。月の光を受けて、その姿は白銀に輝いていた。


 浮いていたそれはこちらに見付かったことを悟り、まるで流星のように、空から地上目掛けて落ちてくる。

 ズシィィン!とすさまじい音をたてて地上へと降り立つ。


 それは銀の鎧を纏い、堅き盾を携え、大きな槍をその手に抱えていた。



 傍らに立つものは誰もなく、しかし臆することはない。


 呼べ、叫べ、かの者の名を。広く広大な平原の、頂点に立つ森の王を。


「やあやあ! 私は……ヘラジカだぁ!!!

守りたいものその背に背負い、立ち塞がるもの推し通る!! へいげんの平和を守るため……いざ、尋常に勝負!!!」


 ヘラジカが槍を構えれば、鎧がジャキリと音を立てる。その音はまるで狙いをすました撃鉄の様に、相手を倒す、その意志が籠められていた。


 ここに、へいげんちほーの決戦の火蓋が切って落とされた。


────────────────────────────




「勝利の鍵は……これよ」


 アミメキリンは集まった皆の前に、何かを置いた。皆がそれを覗き見る。そこに置かれていたのは折れたヘラジカのステッキ(魔法少女仕様)であった。


「まさか魔法少女に勝利の鍵が……本気?」


「じっと見ないでハシビロコウ、私ふざけてないから、マジメだから」


 アミメキリンは全員の顔を見回して、再び説明を始める。


「良い? ヘラジカはこう言ったわ。“可愛いは作れる“。簡単に言えば可愛いものを身につけたりすればさらに可愛くなれるってことなんだけど……」


 実際にヘラジカが可愛いを作れていたかは別として、その言葉に間違いはない。


「つまり、セルリアンに勝てる“さいきょー“が必要ならそれも用意すればいい。“さいきょー“は作れるってことです」


 つなぎはアミメキリンの言葉の続きをつなぐ。

 ヒグマが聞いたらちょっと機嫌を悪くしそうだが、つまりはそういうことだ。足りない物は補うのだ。


「ヘラジカはこのステッキがメタメタになるくらいにはあのセルリアンの攻撃を捌けたわ。攻撃をちゃんと見ることが出来ているってことよ。あの速度にもついていけている、なら、何が足りないのか」


 アミメキリンは人差し指をピッと立て皆に言い聞かせる様に続きを話す。


「それは防御力。攻撃を受ける事を恐れて守りが続いてやられてしまう。つなぎ、例のものを」


「はい。ちなみにジャパリカフェで例のものっていうと秘密のメニューが……」

「そういうの今はいいから」

「アミメキリンさんがギャグに乗って来ないなんて……!? あ、これが例のものです」


 つなぎが取り出したのは、けもマに売りに出されていたシロサイの鎧だった。他にも様々な鎧、籠手といった身を守る道具が出てくる。


「ヘラジカの体は実はそこまで大きな防御力を持っている訳ではないわ。蹴りを受けて大きなダメージを受けてしまったことが物語っている。だから、守るのよ、弱点を」


「皆が(けも割引で)くれたこの防具で、ヘラジカさんを難攻不落の要塞にします」


「さあ! 作るわよ私達の“さいきょー“を! どんな攻撃にも怯まない森の王者。その名も…………アーマード・ヘラジカ!!」


 命名者はつなぎである。ヘラジカフォートレスと二者択一だったらしい。


────────────────────────────



 そんな誕生秘話も終わり、セルレオンVSアーマード・ヘラジカの戦いが始まった。


 先手を切ったのはセルレオンである。目の前に現れた敵が、先ほど戦った相手だと気付き、油断せず一撃目から勝負を仕掛ける。


 狙ったのは、脚。転倒を狙う脚払い。鎧で動きが鈍くなっていると判断し容赦なく行動不能に陥らせる攻撃であった。……だが、思惑通りにはならない。


「お前の攻撃はライオンに良く似ている!」


 そこに攻撃が来ると踏んだヘラジカは、脚を半歩程ずらす。

 芯を捉えられなかった攻撃は、シロサイの鎧のレギンス部分によって防がれる。痛い、だが耐えられない程では無い。


「ふんっ!」


 相手の攻撃を耐えた瞬間、ヘラジカはカウンター気味に一撃を放つ。槍の先がセルレオンを掠めた。

 セルレオンにこちらから初めて触れることが出来たのだ。


 セルレオンは距離をとると興味深そうにヘラジカを見て、やがて深く腰を落とし構えた。小細工無しの突撃、その構えである。


 ドッと音を立てて地を蹴り、必殺の右腕の一撃を放つ。それはまるで、ライオンがかばんを助けるために黒セルリアンに放った一撃のようであった。


「おおおおおおっ!!」


 ヘラジカはそれを左手に構えた盾(アルマジロその他もろもろ固いフレンズ素材)で受け止める。凄まじい勢いにそのまま後ろへと押されるが、吹き飛ばされずに何とか踏ん張る。


 ヘラジカの長所の1つは、推進力である。突進を受けても体制を崩さない足腰が、大きな長所だ。そして、それは決定的な反撃の機会を生む。


「そこだあああ!!」


 突進を止めた後、盾を使ってセルレオンを弾き飛ばす。今までずっと優勢だったセルレオンが、大きく体制を崩す。


「くらえぇぇぇ!!!」


 そのまま盾を捨て、両腕で槍を持ちセルレオンを思いきり突く。サンドスターも全力で開放した一撃は、セルレオンを本拠地に僅かに残る壁に叩きつけ、そのまま粉砕した。


「───手応えは十分、やったか………?」


 崩れた壁から立ち上る砂煙と、それに混ざってサンドスター・ロウの黒い煙が空に消えていく。


 煙が晴れたとき、そこには────



「う、嘘だろ…………?」





 ライオンを幼女にしたかの様な緑色のセルレオンが、ぽかんとした顔をしてそこに座っていた。



「あれ? 私ちっちゃくなっちゃった! 変なの! あはははは!」

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