第26話 ちびレオとパパとママ
※心の汚れちまった大人じゃあ純粋な子供は書けねぇぜ……回です。へいげんちほーはあとちょっとだけ続きますよ。
タイリクオオカミ先生、お元気でしょうか。私はぶっちゃけ疲労困憊です。
あ、これは私の心の中のタイリクオオカミ先生に話しかけています。私に嘘ついてどっかいっちゃう本物の先生なんか嫌いです、ふん。
前、先生がお話してくれた、セルリアンの姿をしたフレンズ事件とそっくりのことが起きました。
もしこんなことが起きたらどうなってしまうと思う?と私に聞かれたこと。今なら答えることができます。
夜に激しいバトルした後に子供が出来ます。
意味が分からないと言われても実際にそうだったんです。
誰の子供かって? 強いて言うならライオンとヘラジカの子供ですかね。ライオンが産みの親、ヘラジカが育ての親…… へ? 大人のどったんばったん大騒ぎ……? よく分からないですけど二人の子供です。
それと、つなぎは、逮捕されてしまいました。としょかんへ連れていかれ、そこでさばきを受けるそうです。彼女をとしょかんまで連れていくということが、こんな形で実現してしまうとは……
私も付き添いでとしょかんに行きます。楽しかった、けもマもしばらく来れないです。きっとロッジには当分戻れないです。あの子が立派に務めあげるまで、待っててあげるフレンズがいないと……
え? なにが起きたか全然わからん? …………分かりました、確かに結果だけお話し過ぎました。それでは順を追って説明します。
まずはヘラジカがセルリアンに必殺の一撃をいれた後────────
────────────────────────────
「強ーい! 負けちゃった!」
ヘラジカは困惑していた。先ほどまで戦っていた黒いライオン型セルリアンが、緑色の小さな幼女ライオン型セルリアンに変わってしまったのである。
「ヘラジカ様! 大きな音がしましたが、勝てたのですか!?」
シロサイ(インナーだけ2回目)を筆頭に皆がヘラジカの元に駆けてくる。
「あ、ああ……多分。だがこれは……?」
皆がはしゃぐセルリアンを見る。
「な、何だあれ大将をちっちゃくしたみたいだ……やべーよ」
オーロックスだけではない、皆困惑していた。
「緑色……多分サンドスター・ロウは持っていないってことだと思います。通常のセルリアン? でもしゃべってますし……」
つなぎの言葉に、アミメキリンは考え込む。
「うーん、ならこれで試して見ましょう」
アミメキリンは懐から水筒を出し、そこに紅茶を汲んでセルリアンの元へと持っていく。
「あ! こんにちは! マフラーのお姉ちゃん。さっきはやり過ぎちゃって、ごめんなさい!!」
近づくアミメキリンに気付き、元気よく挨拶をしてくれた。さっきのやりすぎというのは、皆を吹き飛ばした時のことだろう。
「お姉ちゃん……(感慨)。その事は気にしていないわ。こんにちは、私はアミメキリンよ」
ちなみに今は夜なので正しくはこんばんはである。
「でもね、すっご~く楽しかった! また、遊んでね!」
野生解放や、サンドスターのかがやきとも違う、子供だからこその瞳のかがやきをアミメキリンは見た気がした。
「分かったわ、また遊びましょう? 所で、美味しい飲み物、飲んでみない?」
「おいしい飲み物!? のみたーい!!」
「はい、どーぞ。熱いから気を付けてね」
「はーい! ふー、ふー、ごくっ……あちち」
「どうかしら?」
緊張しながらアミメキリンは尋ねる。
「うーん、何かへんな味。わたし、あんまりすきじゃなかった、ごめんなさい……」
「い、良いのよ謝らなくて! 好き嫌いはあるもの、仕方ないわ」
「あ、でも、のど乾いてたからやっぱりおいしかった! ごくっ、ごくっ…… ごちそうさまでした!」
「あっ、無理して飲まなくても…… ええと、なんともない?」
「え? よくわかんない……」
「そ、そう。分かった、ありがとう」
「? どういたしまして!」
アミメキリンは空になった水筒の蓋を持って皆の所へ戻る。その目はいまいち焦点が合っていなかった。
「何も反応なしでしたね。やっぱりサンドスター・ロウはもう無い……」
「つなぎ」
「はい?」
「私を、逮捕してちょうだい……」
「何で!?」
「あんな子供を疑って……騙して…… 私は、名探偵失格よぉ!」ウワァァーン
「あぁー泣かないでくださいアミメキリンさん……」
皆もセルリアンの様子を見て、段々と今までの事がどういうことだったか理解し始める。
「あの子は、遊んでいただけだったのか……」
「だからかがやきを奪ったりしなかったんでごさるね……」
「多分、サンドスター・ロウを持っているうちはパワーが強すぎてコントロールがきかなかったんですぅ」
小さいライオンのセルリアンは駆け回ってヘラジカ達の本拠地を探検している。その姿に皆が胸にほっこりしたものを抱いた。
「どうやら、無事に解決したみたいだねー、良かった良かった」
先ほどまでは城で療養していたライオンが、動けるようになったのでこちらの様子を見に来たようだ。しかし、はしゃぐセルリアンの姿を見て混乱する。
「あ、あれ? セルリアンは倒したんだよね? じゃあこの子は……?」
「あっ! ママ!!」
「ママぁ!?」
とんでも発言が飛び出し辺りが騒然となった。皆に動揺が広がる。
その混乱の中、セルリアンはライオンに向かって駆けていき、その腰の辺りに両手を回してがっしり抱きついた。
「わたしがおきるまえ、ママの中にいたことわかったの…… 黒い恐い物が私を飲み込もうとしたけど、ママがね、まもってくれたの……」
「私が、守った……?」
「でもね、何かが私と、ママと、黒い物を離ればなれにしたの。黒い物は少し私にもくっついてきて…… ぐすっ、もう、はなれちゃやだぁ……」
「よしよし、恐かったねー…… おうお前らこの子は私の娘だ! 誰にも文句は言わせん!!」
「た、大将……」
「駄目だ群れ(プライド)守るモードに入ってしまってる……」
もうしょうがなかった。だって可愛いんだもの。
「よ~しよし、お前の名前はちびっこいライオン……ちびレオだぁ!」
「私ちびレオ?」
「そうだよ~♪」
大きくなっても“ちび“で通すのだろうか。
「ちびレオ、ちびレオ……分かった! ……あっ、そうだ!」
ちびレオはライオンから離れトテトテと走り出す。
そうしてたどり着いたのは、ライオンとちびレオの様子を腕を組みながら見ていたヘラジカの元だった。
「パパ! わたしを止めてくれてありがとう!」
今度はあまり動揺は広がらなかった。
「あぁ予想してたけどやっぱりパパはヘラジカですぅ」
「わたくしはお姉さんが良いですわ……」
ヘラジカの部下たちは割りと好きかって言っていた。
「私はお前を倒しただけだ。ライオンと違って、関係があるわけではないし……」
ヘラジカはかぶりをふって否定する。が、ちびレオは臆せず続けた。
「わたし、本当はあそべてないの、わかってた。みんな倒れて、どうしようって。でもパパ、止めてくれた。わたしの中の黒い恐いの、やっつけてくれた。すっっっごく強くてかっこ良かった! だからパパ。また恐いのきても大丈夫なように、いっしょにいて……?」
ちびレオは、顔を伏せているヘラジカの事を覗き込んでそう言った。
ヘラジカは顔をあげる
「やぁやぁ私がヘラジカパパだ!!」
「瞬殺でござる」
「きっとヘラジカ様、親バカになっちゃうですよー」
まぁ抵抗意味無いよね。パパになっちゃうよね。
皆がわいわい騒いでいるなか、つなぎだけは少し冷静に考えていた。
「ライオンが守った……黒い物が飲み込もうとした……彼女は、サンドスター・ロウの発生元ではない…… うーん、分からないですね……」
「本人も覚えてない感じよ、あれ…… 生まれてすぐなんだから無理もないわ…… 私は疲れたから寝るわね、おやすみ……」
「あ、おやすみなさい……」
その場に集っていた面々も、皆自分の寝床に帰っていく。ちびレオはライオンと一緒に城で寝るようだ。
つなぎは、何かが引っ掛かりつつも疲れているから気のせいであろうと思い、自分も寝ることにした。
アミメキリンの膝枕を借り、多少の違和感は忘れ眠りに落ちていくのであった。
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