第23話 セルレオン

※ボス戦直前回です。皆さんそろそろお気づきかもしれませんが1ちほーに1ボスで進んでいく予定です。その為後半だけちょっとシリアスです。ちょっとだけ!ちょっとだけだから!



「今日も出張ジャパリカフェは大盛況ね」


「誰も来なかった頃からは考えられないよぉ。やっぱりフレンズが沢山いるところにお店をだすと違うねぇ」


「私が手伝っていて流行らない訳が無いんですけど!(ドヤァ)」


 ここはけもマでも、最も盛況かも知れない。

 午前中に紅茶売り切れが相次いだので、トキ達が手伝って紅茶の提供量を増やせる様に工夫していた。


「色んな子に紅茶を飲んでもらえて嬉しいな♪」


 彼女の本心からの声を聞いて、トキ達も自然と笑顔になる。


「喜んでるアルパカ可愛いわね」

「悔しいけど私並みに可愛いですけど!」


「みーんなおいでぇ! 大きい子も、小さい子も、トゲトゲな子も、ツルツルな子も、可愛い子も、乱暴な子だって、みーんな紅茶を飲ませてあげるよぉ♪」


 ただ自分が良いと思うものを振る舞う。美味しいと言ってくれた子にはお代わりを、苦手だった子には気に入りそうな別の飲み物を、一緒に“これすき“を探してくれるのがアルパカなのだ。


「アルパカ、あなたの皆を包み込むような心意気、頭が下がるわね……」


「トキちゃんに誉められると照れちゃうよぉ///」


「そんなあなたの心意気を試すようで悪いのだけれど……お客さんよ」


 アルパカとショウジョウトキは、トキの視線の先を追う。




「おーし、大将! そのまま真っ直ぐ真っ直ぐ!」


「馬鹿! 大将っていったらバレる! はーい、謎のフレンズさん、こっちこっち! 足下に石あるぞー!」


 布を被ったお化けみたいなフレンズを誘導するオリックスとオーロックス。


「武器を無くしてしまったがこのマジカルステッキもなかなか降りやすいなぁ!!」


 ハートのステッキを音速で振り回すヘラジカ。


「皆おいていってヒドイでござる…… 拙者疲れすぎて体の色のコントロールが効かないでござる……」


「カメレオンが七色になってるですぅ!!」


 ケバすぎるカメレオン。


「ふぁげしい戦いだったうぁ」

「ぶぉうし、かえひて……」


 顔がぶっくぶくに腫れてるアミメキリンとアルマジロ。


「うま……ハチミツうま……蜂の子うま……」

「はぐっ、むぐっ、がぶっ!」


 多少のハチの攻撃をものともせず蜂の巣をしゃぶっているツキノワグマとつなぎちゃんの姿があった。




「絶対ふしんしゃなんですけどーーー!!!」





「あれぇ? 皆どうしたのぉ?」


 多少の不審者ではアルパカは動じなかった。


「あ、サンドスターが聞いてきてちゃんとしゃべれるようになったわ。この顔の事は気にしないで頂戴、ちょっとここに来る途中城の屋根のところに蜂の巣を見付けて、取ろうとしてヘマしただけだから……」


 アミメキリンはそういうが、気になるのは多分顔の事だけではない。


 ちなみにツキノワグマはハチから攻撃されてもダメージ0であった。


「皆でお茶しに来たのぉ? 大丈夫だよぉ、紅茶はまだまだあるからねぇ。あ、でも椅子は足りないからそこら辺の好きな所座ってねぇ」


「あ、大丈夫よアルパカ。あの布を被ったフレンズに紅茶を飲ませて欲しいのよ」



────────────────────────────


 サンドスター・ロウへの対処に頭を悩ませている彼女達に、アミメキリンはこう言った。


「あるわ、めっちゃお手軽にサンドスター・ロウを浄化する方法。───アルパカの紅茶よ。彼女が淹れた紅茶を飲めば、体内のサンドスターが浄化されるのよ」


 そう、彼女達が散々お世話になったアルパカの紅茶。これにはアルパカの愛情が込められており、その力が大気中のサンドスターと混ざって小さなけもハーモニーを云々かんぬん。

 とにかく飲むだけかけるだけでサンドスター・ロウを浄化出来るのだ。エリクサーかな?


「信じられないが…………この場で嘘を言うとは思えん! いくぞ皆! カフェへ突撃だぁ!!」



────────────────────────────


「かくかくヘラジカ」

「これこれシマウマってことなんだねぇ、分かったよぉ。トキちゃぁーん! 一杯持ってきてあげてぇ!」


「そう思ってもう淹れているわ」


 トキも練習して紅茶を淹れられる様になったらしい。ここでは大きなタンクからボタンを押せば出てくる為、技術は要らないが。


「布の中が気になるんですけど……」チラ


「あっ! 大将の布めくんなよぉ!」


「真っ暗でよく見えないんですけど……」



「ショウジョウトキちゃぁん、そこまでにしておいてあげてぇ。はいどうぞぉ、気を付けて飲んでねぇ」


 アルパカが紅茶を中に差し入れると、ライオンはそれを受け取った。しっかり渡せたことを確認したアルパカは、布から離れて回りで様子を見ている皆の所へ合流する。


「これで、元に戻ればいいのだけれど……」


 皆が固唾を飲んで見守る。


 何も起こらないか、と思われたとき、布の中心部からボム!と真上に布が爆発したかのように持ち上がる。


「うわぁ!」

「なに?」

「爆発したんですけど!?」


 そのまま何かが布を被ったまま、アミメキリン達の居ない方向へと逃げ出す。


「何か逃げ出したわ!」


「お、おいあれ見ろ!」


 オーロックスの指差す先に居たのは、布が逃げ出した後に仰向けに横たわるライオンであった。


「ライオン!!」


 誰よりも先にヘラジカが駆け出し、倒れたライオンを抱き抱える。


「あ、あれ……? 戻った……本当に……?」


 ライオンは自分の両手を見て、そう呟く。そして傍らのヘラジカに視線を移す。


「迷惑かけたみたいで、ごめんねー…… ちょっと疲れたから、今は寝るねー……」


 ライオンは静かに目を閉じる。やがて、すぅすぅと可愛らしい寝息を立て始めた。


「……………………ライオンンンンゥゥゥ!!!」


「うわぁっ!!!」ビックゥ!


 ヘラジカの物凄い叫び声に、心地よい眠りに誘われていたライオンが目を覚ます。


「あ、す、すまん……嬉しくてつい……///」


「わ、分かったけど/// でもめちゃくちゃびっくりしたよ…… 眠いからまた寝るね…… アレは、任せたよー……」


 再び眠るライオンを地面にそっと置くヘラジカ。


「ヘラジカ、ライオンはどう?」


「大丈夫そうだ。かがやきが奪われたとかも、無さそうだな」


 問いかけてきたアミメキリンだけではなく、後ろで心配そうに見ているフレンズ達全員に伝わるようにヘラジカは言った。更に言葉を続ける。


「ライオンはアレを任せると言った。私はアレを追う。ライオンを悲しませたセルリアンを、私は許さない!!」


 走り出すヘラジカ。


「あ! 待って!」

「着いてくですよ!」

「大将汚されて黙ってられっか!」

「突撃ですぅ!」


 遅れて皆その後を追いかける。



 布を被った何かは、かなり速かったが布がある分逃げ足が落ちていた。本気の全力で追いかけるヘラジカからは逃げられない。

 やがてヘラジカは、そいつの頭上を飛び越え回り込んだ。


「もう逃げられないぞ!!」 


 ヘラジカがそう言うと、遅れてきた皆もソレの回りを取り囲んだ。


オーロックス、オリックス、ツキノワグマ、アルマジロ、ヤマアラシ、アミメキリン、つなぎ…… もしかしたらこのメンツだとアミメキリン最弱あるかもしれない。


 取り囲まれたソレは、回りを見渡して逃げ場が無いことを理解すると、その場に立ち止まる。

 そして、おもむろに布を取り払った。


「!?」


 その下に居たのは、案の定と言うべきかライオン型のセルリアンであった。しかし以前よりも顔がくっきりと、表情までよく分かる。その顔は……笑っていた。


「ケラケラケラケラ!!」


 彼女の声は風邪を引いたかの様に掠れていたが、笑い声はよく響いた。


 そして、姿勢を低くしその目に野生解放の光を灯す。 


 それを見た皆も警戒して野性解放を行い、攻撃が来ても良いように身構える。

 

 しかし、その行為は無駄であった。


 次の瞬間、ヘラジカを除く全員が一瞬で吹き飛ばされた。瞬きの暇も無く、一方的に。

 

────皆が吹き飛ばされる寸前に見た彼女は、不思議そうな顔をしていた。まるで、なんで抵抗しないんだろうとでも言いたげな顔であった。

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