第22話 あるわけねーだろ!!
※シリアスゥ? なにそれ、これギャグ回。鈍いなぁシリアスは前回で終了だよ!! 楽しかったぜぇ? なんちゃってシリアスごっこぉ!!
アミメキリン達は全力で城内をかけ上がっていた。
「本当なの!? 最上階にライオンが居なくて、代わりに黒色のセルリアンが居たって!?」
「そうなんだよ! 大将、まさか寝てる間にあいつに喰われちまったのか……? 今、オリックスが足止めしていてくれるから早く行かないと!」
「うおお待っていろ! ライオン!」
ヘラジカは他のメンバーより遥かに早くかけていく。皆を置いて一人だけ先に行ってしまった。
「アミメキリンさん! 外をジャンプや飛んだりして登っていくのが早かったんじゃ……?」
「5階中4階登ったところでそれ言う!? もう着くわよ!」
一行は走る勢いのまま部屋になだれ込んだ。中は少し荒れているが、争った形跡は無い。そして足止めしていると言われたオリックスの姿が部屋の中央には居なかった。
「オ、オリックスはどこに……!?」
オーロックスは部屋を見回す。彼女は壁際にうつ伏せで倒れていた。自慢の槍が、真っ二つに折れてしまっている。
オーロックスは倒れている彼女を抱き上げ、声をかけた。
「だ、大丈夫かよ!? お前がここまでやられるなんて、そんな……」
オリックスは薄目を開け、絞り出す様な声で呟く。
「へ、ヘラジカ……」
「え?」
「ヘラジカに……吹き飛ばされ……ガクッ」
「ええ……」
さっきもオリックスが足止めしていると言っていた時にライオンの事しかヘラジカは言っていなかった。案の定である。
一行はオリックスを静かに寝かせ、部屋の奥を見る。
確かにそこにはオーロックスが見たと言っていたセルリアンがいた。ただその容姿は普通のセルリアンと違っている。手、体、足があり顔もある。フレンズを黒で塗りつぶしたかの様な、そんな見た目をしていた。
一行にとって予想外だったのは、そのセルリアンの肩をヘラジカが掴んで、前後にガックガック揺さぶっていた事である。
「何だライオン、いるじゃないか!? その格好はどうした! それがお前の可愛いってやつか!? 全然似合ってないぞ! 可愛さ加減でいけば元の方が全然よかったぞ! 早く脱いでしまえそんなもの! それ脱げ! やれ脱げ! 全部脱げ!!」
「~~~~!!!」イタイイタイ!
セルリアンがヘラジカに引っ張られて悶絶している。しかしヘラジカは止めようとしない。
あの勢い、このまま放っておくとヤバそうである。
アミメキリンは取り合えず取れる手段としてヘラジカを羽交い締めし、セルリアンから引き離そうとした。
……ぜんぜんうごかん!
「ヘラジカ!その手を離さないとぼーこーざいで逮捕するわよ!!」
最近アミメキリンの管轄が警察の範囲に食い込み始めている。しょっけんらんよーという奴である。
ちなみにジャパリまんのチケットを偽造して使用しまくる事もしょっけんらんよーというのです。重罪なのです。もしやったら……ちょい、ですよ。 by はかせ
「離せぇ! ライオンと戦うんだぁ! うおおおお!!」
「ス、凄イパワー……イヤチョット待ッテ止メラレナイ!」
つなぎの野生解放を持ってしても引き離せない。オーロックスとアルマジロ、ツキノワグマも加勢するが、ヘラジカは止まらなかった。
「ぬおおライオン脱げええ!!」
───脱衣への執着がヤバイ。
束になっても歯が立たない。このままではラチが明かないかと思われた。
その時、ヤマアラシが状況を変える言葉を放つ。
「あ!! あんなところに幻の本、“まんがで分かるライオンのつよさのひみつ これで君も今日から百獣の王だ! 著:タイリクオオカミ“が落ちてるですぅ!!」
「いやなにそれ!? オオカミ先生何描いてるの!?」
「なにぃ! あの幻の本が!?」
セルリアンから手を離し、ヤマアラシが指差す方へ飛び付くヘラジカ。
「あったぁ!!」
出任せかと思われたがまさかの実在である。
「今ですぅ!」
「やっちゃうですよー!!」
「犯人確保ー!!」
「悪いけど取り押さえさせてもらうよ!」
「ヘラジカお前よくもオリックスを!!」
その場の全員が掛け声と共に一斉に飛びかかる(つなぎちゃんは何言わせてもしっくり来なかったので省略です)。
「何!? 止めろお前たち……うわあああああ!!」
ヘラジカは皆に覆い被さられた後も激しく抵抗する。大きく三回揺れたが、やがて静かになった。
「やったわ……ヘラジカを……捕まえたわ…………」
初めて捕まえたフレンズの為、図鑑に情報が記載された。図鑑No. は234でも586でもお好きな方で。
あまりにもなんやかんやあったがひとまず皆落ちついて座り、情報を整理することとなった。
「セルリアンに見えるけど、あなたはライオンなのね?」
アミメキリンの問いにセルリアン(ライオン)は首を縦にぶんぶん降り肯定する。
「ヘラジカは何でライオンだって分かったの?」
「こんな強そうなオーラを放つやつはライオンしかいない!」
「そ、そう……」
ぶっちゃけ予想通りの返答であった。だがヘラジカが居なければ分からずに倒してしまったかもしれない。そういう意味ではファインプレーだ。
「あと本題に入る前にこれ何か聞いていい?」
タイリクオオカミ著、まんがで分かるライオンのつよさのひみつ(以下略)を持ちながらアミメキリンは聞いた。
「大将がタイリクオオカミから買ったんだ。ヘラジカに読ませては強くさせてしまうから私が回収する、って言ってたぞ」
オーロックスの証言にライオンはまたも首を縦に降り肯定する。しかしアミメキリンには気になることがあった。
(見せたくないなら処分しちゃえばいいわよね……?)
あの時のヘラジカの反応から、ヘラジカ自身がその本を読みたがっていた。つまり……
(ライオンがもしその事を知っていたとしたら、自分でこの本を渡してあげたかった、そして一緒に読みたかった……?)
もしそうだとしたらツンデレ甚だしい。後で本人に問い詰めてやろう、けも割引の時の報復である。そしてこの一連の流れが本当にいらん推理である。
ちなみにつなぎは、この本が相当高く売れただろうからタイリクオオカミはペンを買うの何て余裕だろうなと思ったが、何も言わなかった。
「話を戻しましょうか。ライオンさんがセルリアンになってしまった。取り合えずそうだと仮定すると、一体何故……?」
「そう言えば、昨日大将は寝る前にけもマで買ってきた物を身につけて寝てたから、それかも」
彼女の証言によると、帽子、手袋、靴下等を身に付けていたようだ。それらのどれかが怪しい。
しかし、今となっては分からない。何が原因か特定出来ても、全身真っ黒な今の打開にはつながらないだろう。
「このセルリアンの色、思い出すな…… かばんを助けたときに倒したセルリアンもこんな色をしていた……」
「特殊なサンドスターを吸収していたらしいですぅ」
「サンドスター・ロウのことね…… セルリアンを凶暴化させたり、特殊な能力を与えたりするみたいだわ」
アミメキリンの言葉に一同はざわつく。
「大将の体からそれを取り除くことは出来ねーのかよ!」
「そうだ! サンドスター・ロウが原因なら対処法は無いのか!」
そんな言葉を、ヘラジカが一喝する。
「落ち着け! 私は長達に聞いた事がある。火山の山頂に四神と呼ばれる石板が設置されていて、火山から出てくるサンドスター・ロウをフィルターにてサンドスターに変えていると。そこに連れていけば、何とか……」
「こんな状態の大将を火山の山頂まで連れていくのかよ! もっと悪くなるかもしれねーんだぞ!」
「時間の問題はハシビロコウや他の飛べるフレンズに頼んでみるしか……」
「そもそも触っても大丈夫なんですぅ……?」
「私達もセルリアンになっちゃうですよ!」
皆、色々意見を言い合っている。セルリアン(ライオン)はそれをじっと聞いている。
そんな状況を見て、オリックスは呟く。
「ああ、私が昨日大将に寝る前に外すように進言しておけば…… 無いのか? すぐに手配出来て簡単確実にサンドスター・ロウを除去出来る……そんな方法は無いのか!?」
────そんな方法、あるわけねーだろ!!
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