第21話 魔法少女への取り調べが行われました

※ネタバラシ&スイッチ回です。

前に応援コメントへの返しにへいげんちほーは日常回多めバトル少なめって書いたよな……? あれ書いたの、4月1日の午前中だったんだ……






「さあそこをどけ! 可愛くなった私をライオンに見てもらうんだぁ!!」


 ヘラジカはずんずんとこちらに向かってくる。

 武装したフレンズが近づいてくる、それは怖いだろう。しかし、意味不明な格好でこちらに近づいてくるフレンズ、それも怖い。


「あ、あああ……ヘラジカ、こっちくんなよぉ……!」


 オーロックスは完全に腰が引けてしまっていた。可愛いのに恐ろしい。


「待ちなさい!!」


 しかし、そこに割って入るは我らが名探偵、アミメキリンである。

 なお、つなぎはサンドスター切れなので放置してきた。ジャパリまん補給はさせたが、しばらく動けそうにない。


「ヘラジカ! ライオンはあなたの事を心配していたわ! しばらく姿が見えないから。その事と、あなたの行動、繋がりがあると見たわ……何があったか、はきなさい!!」


 事件を最速で解決する方法は2つ。現行犯逮捕か本人の自白を得る事である。探偵もへったくれもないが。


「ライオンが私を心配していた……?」


 その言葉だけで、今まで止まらなかったヘラジカが大きく怯む。


「そうよ! 私を詐欺に引っかけてあなたの所にけしかけるくらいには心配していたわ!」


 ライオンとのことを思いだし再びぷんすこモードに入る。


「けも割引を了承したのはあなたでは……」


 ツキノワグマがボソッというと、アミメキリンはそちらをバッと振り返る。


「ろくに説明せずに売り付けるのが詐欺だって言ってるのーー!!」


「ご、ごめんなさいー!」


 ぷんすこモードのアミメキリンはいつもよりちょっとだけ口が立つのだ。


「私は…………ライオンと戦いたかっただけなのだ………… 私には、けもマ運営は上手く出来ない、だからこそハシビロコウに任せつつ力仕事を引き受けていた」


 ヘラジカは俯いていた。いつのまにか木製の机と椅子に座らされている。ツキノワグマの休憩用の物だとかで近くに置いてあったのだ。

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 アミメキリンによる取り調べが始まった。探偵は取り調べしないとか思ったそこのあなたに伝えたい、知恵ブーストを受けててもアミメキリンはアミメキリンだと。そしてフレンズに細かい所まで再現を求めることは酷なのだと。


「ライオンに久しぶりに戦いを申し込んだとき、あいつは忙しいからと断った。当然だ。あいつは部下含め4人で回している。しかし、私は6人もいてこのザマだ……」


 魔法少女を取り調べしている様子はさすがにシュールである。


「あのヘラジカが反省している……?」

「しっ、今良いところですぅ」

「あれヤマアラシ達いつの間に!?」



「だから我慢した。そして、お互い少し余裕が出てきた頃、そろそろ戦いを申し込んでも良いかなと思ったとき、ふと思ったんだ。ライオンは戦いを嫌がっていないだろうか、と」


 アミメキリンはヘラジカの供述を静かに聞いていたが、ふと机の前を離れるとアルマジロの元まで行き、その帽子を取って自分で被った。


「え!? なんで!?」


 アミメキリンは帽子で少し探偵っぽくなった事に満足すると机の前に戻った。


「だから、カメレオンに調べて貰ったんだ。そしたら、可愛いやつとなら戦うと聞いて、それで可愛くなろうと……」


「なるほど…… 戦いに飢えたけものの、悲しいどーき、だったのね……」


 その言葉を受け、頷きヘラジカは何も言わなくなってしまう。


 その時、門の影から何かがヘラジカの元へとことこと歩いてきた。ラッキービーストである。頭に抱えたかごに、ひとつのジャパリまんをのせている。


「オナカ、スイタデショ? ジャパリマン、カツドン味ダヨ」


 倒れていたはずのつなぎが顔だけそちらに向け、何それそんなのあるの!? という表情をする。


「何はともあれ何となく話が見えてきたわ。……次はカメレオンをこちらに」


「しょぼーんでござる………」


 カメレオンはトボトボ歩いてくる。そしてヘラジカと交代した。


「あなたは何をヘラジカに報告したの?」


「拙者は、ライオン達が夜訓練していた様子を報告したのでござる」


────────────────────────────



「大将、訓練に付き合ってくれて、ありがとうございます!」


「夜は眠いんだけど……可愛いお前たちに頼まれたら戦わない訳には行かないよねー。ちょっと本気でいくぞ?」


 そうして訓練は始まった。



────────────────────────────


「……………………それだけ?」


 アミメキリンの問いにカメレオンは頷く。そして席から離れた所にいるヘラジカが付け足した。


「そうだ! だから私は…………可愛くなろうと思ったのだ! 可愛ければ仕方ないと言って戦ってくれると……!」


「………………そう、可愛いの部分だけ切り取った事がしっかり分かったわ」


「それは分かりましたが……アミメキリンさん、もうひとつ謎が残っています」


 つなぎがサンドスター切れから回復し立ち上がった。


「そうね、それは」


「ジャパリまんは、何味か、です!」


「チョコ(ラム酒風味)とキーマカレーよ!! そうじゃなくてなんで魔法少女とかいうものに行き着いたかってこと!!」


 アミメキリンの言葉を受けてヘラジカは再び話し出す。


「そ、それは…………カメレオンに偵察に行ってもらっている間、としょかんにも行ったんだが…………そこで見た“テレビ“とやらでやっていたんだ」


 可愛いはつくれる、もそこで覚えたらしい。しかし他のメンバーはテレビが何か、今一ピンと来なかったようだ。


「ま、まぁ長達に何か見せられてそれに影響されたってことがわかったから、それで良いわ」


 色々ながったらしくなってしまったが、要はヘラジカの勘違いである。

 ライオンも戦いを嫌がっていたわけでは無いのだろう。ただ、タイミングが悪かっただけなのだ。お互いに道を譲り合ってしまうような、歯痒い思いやりが起こした、それこそ可愛いじけんであった。



「とにかく、ヘラジカ。ライオンに姿を見せてあげてちょうだい。変なことしなくても大丈夫よ。むしろ全部外していった方が良いわよ」


「そ、そうか……」


 そう言われ、ガチャガチャと可愛くなる為に装備したもの全てを外していく。

 ところで、これ全てけも割引で買ったようだが大丈夫なのだろうか。後日が怖いぞとアミメキリンは考えていた。


「よし、外したぞ! 行こう、ライオンの元へ!!」


 外されて見るとやはり結構な量であった。元の服の上に着ていたりもした為、少し伸びてしまっている。


 勢いを取り戻したヘラジカを筆頭に一行はずんずんと進み出すが、そこで我を取り戻したオーロックスが皆を引き止めた。


「ちょ、ちょっと待ってくれ! 俺が来たのは城内でやべーことが起こったからなんだ! 皆、行くのは待って俺の話を聴いてくれぇ!」


 そうして、オーロックスは皆に事情を話す。


「つまり、どういうこと……?」


 それは、今まで平和に行われて来たけもマに、一筋の不穏な気配をもたらす物であった。

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