第20話 可愛いは暴走する

※メッタメタの作者暴走回です。1000PVの喜びに身を任せた結果がこれです、すみません。次回からテンション元に戻ると思います……




「私は……………………可愛くなる!!」



 そう宣言したヘラジカは、目の前のカメレオンをそっと横にどかす。


「行かねばならない…………」


 その目に、信念の炎が宿る……様な気がする。


「へ、ヘラジカ様! 良く分からないでござる!? ヘラジカ様はカッコいいでござる! ぶっちゃけ可愛さ要素が見当たらない程にでござる!」


 部下の割には容赦なく言いたいことを言うカメレオン。そんなことないぞヘラジカ、胸元のふわふわとかほっぺのもちもちが可愛さポイントですやんか、筆者はそう思います。


「色々言いたいことがあるのは分かっている………… これだけ伝えておく! よーく聞け!!」


「ご、ごくり……でござる」



「可愛いは……………………つくれる!! ウオオオオ!!!」



 そう言うと外へ向けて猛ダッシュを始める。


「あ! ま、待って欲しいでござる! 今の言葉の意味は……?」


 突撃するヘラジカは止められない。


「待ってくだサイですわ! ヘラジカ様! けもマの事で相談があるとハシビロコウが……!」


「今はそれどころではなーーーい!!」


 立ちふさがるシロサイにも容赦はせずそのまま突っ込む(手加減はしている)。


「きゃああああ!!」


 弾き飛ばされるシロサイ。


「あっ! 鎧が再生しかけでほぼインナー姿なのにヘラジカ様を止めようとしたせいで、インナーも鎧もボロボロで倒れるシロサイ! まるでオークにやられた女騎士のくっころ場面ですぅ!!」


 アフリカタテガミヤマアラシさん、解説ありがとうございます。



「アミメキリンさん、追いかけますか?」


 つなぎはアミメキリンを振り返るが、彼女は落ち着いていた。


「その必要はないわ。いい? 乗り物で逃走した犯人を走って追いかけても時間の無駄だわ。ヘラジカを追いかけるとはそういうことよ」


「の、乗り物……」


 猛ダッシュのヘラジカは多分乗用車並みの危険度である。速度も早く、確かに普通に走っては追いつけなさそうだ。


「だから、ここは残った中で事情を知っていそうなフレンズから話を聞くのよ!」


「……でもシロサイさん以外皆行っちゃいましたよ」


「嘘!? お、追いかけるわよ!」


「ええ!? だから言ったんですよ~!!」


 二人は大慌てでその場を後にする。



「うう…… 私の心配は誰もしてくれないのですわね……」


 皆に置いていかれて悲しみにくれるシロサイ。しかしその肩にそっと手が置かれる。


「大丈夫?」


「ハシビロコウさん……」


 シロサイをじーっと見つめるハシビロコウ。彼女だけはシロサイが心配で戻ってきたのだ。

 余りにもじっと見つめられる為、シロサイはたまらなくなって顔を背けてしまう。


「あ、あまり見つめないでくだサイな……///」


「あっ、ご、ごめんね。癖でどうしてもじっと見ちゃって」


「い、いいんですのよ…… 心配してくれてありがとうですわ///」


(ど、どうしましたのわたくし!? この胸の高鳴りは…… 行けませんわ! わたくしはヘラジカ様にお仕えすると心に決めていますのに!)


 彼女の心の天秤はヘラジカからハシビロコウへと傾きつつあった。勿論、憧れの対象としてである。



 所変わって朝のけもマ会場、早くから色んなフレンズがお店を出している。


「ヒメちゃんのアクセサリー、いりませんか? あなたの魅力をぐっとアップさせること間違いなし! 髪留め、ネックレス、色々ありますよ~!」


 こちらはヒメアリクイのアクセサリーショップである。彼女は自分を恐ろしく見せたいが、どうやっても可愛くなってしまい悩んでいた。

 そこで、開き直り可愛さ全開で、自身が身に付けているものの予備や、木の枝や花等を加工して作ったアクセサリーを売っており、見た目を気にするフレンズに大人気なのだ。


「気になるあの子への贈り物にも……あら?」


 彼方から地鳴りの様な音が聞こえてくる。それは、段々近づいてきている様だ。というかこちらにやってくる。


「な、何事なの……! ひっ!? 何かこっちにやってくる!」


 彼方から砂煙を巻き起こしながらこちらにやってくるのは、このへいげんのリーダーヘラジカであった。しかし、何だかいつもと様子が違う。何か、全体にピンクとホワイトっぽいのである。


 猛スピードで走るヘラジカは、両足でスライディングしながらヒメアリクイの店の前で立ち止まる。


「やあやあ! 私はヘラジカだ!」


「は、はい…… 知っています…… 多分けもマに来ているフレンズは大抵知っていると思います……」


「そうか! 所で、それは可愛いか!?」


 店に並ぶアクセサリーを指差すヘラジカ。ヒメアリクイは戸惑いながらも返事を返す。


「は、はい…… 可愛いと評判です、一応……」


「よーし!! 全部買おう!! 料金は、けも割引にしておいてくれ!!」


 そういって店の商品を全て身に付ける


「あ! ちょっと!」


「さらばだ!」


 バビュンと音を立てて走りさるヘラジカ。それからしばらく後に、アルマジロとヤマアラシがやってくる。


「ヘラジカ様どっちいった!?」


「あ、あっちの方に……」


「いくですぅ!」

「はい!」


 すぐさま追跡を再開する。

 あっちの店に行っては全て買って身に付け、こっちの店に行っては片っ端から身に付ける。

 そしてその都度アルマジロ達は後からやって来たフレンズがヘラジカの動向を聞く。


 しかし二人(+遅れてカメレオン)はかなりヘラジカから離されていた。買い物をしつつも凄まじい早さ。昔ライオンと合戦していた時は本気の突撃では無かったのだと思わされる。


 だが、アミメキリンとつなぎは、アルマジロ達より後から追いかけ始めたにも関わらずヘラジカとの距離を詰めつつあった。


「あっち、あっちよ! つなぎ、もっと早く飛んで!」


「これがげ、限界です…… ひぃ、ひぃ……」


 つなぎがアミメキリンを抱えて、ヘラジカまでの最短距離を進んでいたからである。

 野生解放によるトキモードは、神殿セルリアン戦以来、自由に使えるようになっていた。ただトキ本人ほど高度は出せず、何よりサンドスター消費が膨大なのであまり多用は出来ないのだ。


「つなぎ! ヘラジカの行き先が分かったわ! ライオン城よ、先回りしましょう!」


「簡単に言いますけど……もうサンドスターが……! ジャパリまん食べたい~!」


 それでもつなぎは頑張ってライオン城の門までたどり着き、フラフラと着地する。


ドサッ


「うわっ! びっくりした。この前の二人だね、大将の頼み事は終わったの?」


 ツキノワグマのちょうど前に着地した形となった。アミメキリンは急いでグタッとなっているつなぎから脱出する。


「まだよ! ヘラジカがこっち来るわ! 気を付けて、可愛いわよ!!」


「か、可愛い……? へ?」


「あ、あとジャパリまんください…… サンドスターが……」


「ええ~! 頭に羽根……君ヒトなのに飛べるの!」


 ツキノワグマ大混乱である。しかし、騒動は外からだけではなかった。



「おーい、ツキノワグマ、城内がやべーんだ、手伝ってくれ!」


 オーロックスが城内でなにやら発生したトラブル解決の為にツキノワグマを呼びに来た。

 だがアミメキリン達の事を見て、なぜ来たのか尋ねる。


「この前の二人じゃないか、何してんだ?」


「ヘラジカを待ち伏せしてるのよ…… 来たわ!」


 アミメキリンが指差す先、こちらに向かって猛ダッシュしてくるヘラジカの姿があった。


「何! ヘラジカめ、この大変な時に……!」


 オーロックスはツキノワグマやアミメキリン達よりも前に出て、ヘラジカを迎え撃とうとする。


「とーーーーーう!!」


 そんなオーロックスの前に、ヘラジカが空中宙返りをしながら着地した。


 その服は、フリフリリースでピンクの服とスカートのセットとなっており、頭には色んなアクセサリーを身に付け、尚且つ右手にはいつもの槍では無くハートが先端に付いたステッキの様な物を持っている。


 皆の視線を集めていることに気が付いたヘラジカは、左手を腰に、右手のステッキを前に付きだし名乗りをあげた。



「やあやあ! 私は魔法少女・マ鹿ジカル☆ヘラジカ!! ツノを使ってお仕置きだぁ!!」


 ──────日曜の朝8時30分より、ジャパリチャンネルにて放送中! ……なんて事は無かった。


 誰もが衝撃で口を開けないなか、オーロックスはボソリと呟いた。


「やべーよ、ヘラジカ、やべーよぉ……」

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