第19話 ヘラジカを訪ねて
※アミメキリンちゃんぷんすこ回です。
「まったく、まったくもう!」
アミメキリンは、怒っている為、少し早歩きになっていた。
「ヘラジカの様子を見てきて欲しいって…… それだけならあんな怖い声で脅すこと無いじゃない! ジャパリまん100個の価値ある仕事とも思えないわ!」
逆の意味での“割に合わない“話であった。
「ライオンさん、ヘラジカさんのこと心配してるんですね」
つなぎはそう言って、ライオン城でのやり取りを思い出す。
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「このけもマはね? 最近セルリアンが急増してるからフレンズ同士で武器のやり取りをしたり、ごしんよー?の物を普及させるために開かれているんだ、実はさー」
アミメキリンはライオンに無理矢理、城の最上階の部屋まで引っ張られ、話を聞かされていた。
流れで厄介事を頼まれそうなので、ほっぺを膨らましてぶすっとしている。
「私と部下達はさー、運営、割と上手くやれてるんだよねー。でも、ヘラジカ達は皆自分でお店始めちゃって、運営してくれるっていうより参加者側になっちゃって…… ハシビロコウが頑張ってくれてるから、なんとかなってるけど」
「そういえばアルパカさんも言ってましたね、ハシビロコウさんにお願いされたって」
「…………そーね」
ほっぺを膨らませるのは疲れたのか、腕を組んでむすっとする方針に変更したらしい。
「どーしても聞いてほしいお願いがあってさ! 許してよ、ほらハチミツあげるからさー」
ライオンはそう言って下の売店にあった木の器にハチミツを少し入れ、アミメキリンに差し出す。
「………………」
アミメキリンはジト目でそれを見たあと、一口食べる。
「……………………………………名探偵は依頼人を選ばないわ」
チョロかった。
「ありがとー! で、頼みたいことなんだけど、最近はけもマのせいで合戦も出来なくて、あと私も忙しい時があるからヘラジカからの勝負の誘いを断ることが続いちゃってさー」
そこまで言ってライオンは少しうつむく。
「そしたら最近姿を見せなくなって…… ちょっと心配何だよねー。だから、様子を見に行ってくれないかな?」
「………………それだけ?」
「それだけだよー」
じっとライオンを見つめるアミメキリンだが、彼女はニコニコとこちらを見てくるばかりで、他意は感じられない。
「つなぎ、どうする?」
そう聞いたが、つなぎは大分前から話を聞いておらずハチミツと紅茶のハーモニーを楽しんでいた。「ん~、甘ーい! メープルシロップの方が僕好みですけど……」とか言ってる。何なのメープルなんちゃらって? ヤギなの?
そんな様子だったのでアミメキリンはつなぎを放置して話を続けた。
「まあ、そもそも断る権利も無いし、その依頼、受けましょう」
「おお、本当に!? 助かるよ~! 終わったらペンなんかいくらでも持っていって良いからさー! ほら、ハチミツもあげるよ!」
アミメキリンとつなぎの器にハチミツが山盛り盛られる。とうとうツキノワグマの分は無くなった。
「所で、そんなに気になるなら自分で行けばいいじゃない」
アミメキリンは訪ねるが、ライオンは頭をかきながらはぐらかす。
「あっはは…… 色々あるんだよ、色々」
聞かないでと、目で語っていた。
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「まぁこんなことであのお絵かきセットが手に入るなら安いものよ、オオカミ先生にも道中で報告しましょう」
タイリクオオカミは居なかった。
「な! ん! で! な! の! よーー!!」
「うーん、用事って何でしょうか……」
「絶対嘘よ! 適当言ってるのよ! きっと今もどこかで私が悔しがっているのを“いい顔いただき“とか言って笑って見ているんだわ!!」
半分当たりだがタイリクオオカミはもうへいげんを離れている。
「きっとペンだって手に入れる宛があるのよ…… もういいわ、つなぎ。ライオンが困ってるのは本当だし、ヘラジカの元へ行きましょう」
意外とタイリクオオカミの事を理解しているアミメキリンであった。
結局ヘラジカの所に行くことにしたアミメキリン達だったが、芳しい成果は得られなかった。
「あら、留守なの?」
普段ヘラジカ達が集まる城の跡地的な所に行ったところ、ハシビロコウとオオアルマジロが対応してくれたが、肝心のヘラジカは留守であった。
「うん…… 相談したい事があるからとしょかんに行くって」
「パンカメちゃんも任務だって言ってどっか行っていないよー」
「なるほど……」
「どうしますか?」
「うーん、明日また来ましょうか?」
ぶっちゃけ急ぎの用は無いため、ゆっくり待ってても問題ない。ライオンも、留守だったと聞かされても心配は解決しないだろう。
「じゃあ、また明日来るわ」
「分かった、ヘラジカには帰ってきたら伝えておくね」
ハシビロコウはそう約束してくれた。彼女が実質ヘラジカ陣営のブレインになっており、ヘラジカ不在の際は彼女が指揮を取ることになっているそうだ。つまり現在その状態である。
結局、アミメキリン達はその日へいげんの草原で眠ることにした。
けもマは、夜も夜行性のフレンズで賑わっている。
「うーん、夜も眠らない、けもマ…… 昼とは別のお店が出ててちょっと楽しそうね」
アミメキリンとつなぎはお店の密集地から少し離れたところで横になっていた。
「見に行かないんですの?」
近くには他のフレンズ達も眠っている。アミメキリンは、そこを見回りしていたシロサイに声をかけられた。
「……寒くないの?」
シロサイはまだインナー姿であった。
「……少し」
「やっぱり」
へいげんちほーは温暖な方だが、夜は風が吹いて寒いことがある。
「見回りの間だけ貸してあげるわ」
アミメキリンは、マフラーを外してシロサイに手渡した。
「あ、ありがとうですわ。あなたは平気なのです?」
シロサイはアミメキリンも冷えてしまうことを心配する。
「私は、これがあるから……」
膝の上を指差す。そこにはだらしない笑顔で、アミメキリンの膝を枕にして眠るつなぎの姿があった。
膝枕しながら眠るのも、旅の中で当たり前になってしまった。ひとりで寝るより、幾分か暖かい。
「逆に言えばそのせいでお店も観に行けないからちょっと残念だわ」
そう呟いて、アミメキリンは暇なので夜空を見上げる。満天の星空が輝いていた。
そんな夜に他の場所では戦いが起こっていた。ここはライオン城、門の側でライオンと、オーロックスとアラビアオリックスのペアが対峙していた。
「大将、訓練に付き合ってくれて、ありがとうございます!」
オーロックス達の感謝の言葉に、ライオンも言葉を返す。そして、武器の代わりの棒を構える。
誰も知らない中、こっそりと秘密の特訓が行われていた。
「…………見たでござる」
誰も知らない筈の特訓であったが、それを見ているフレンズも居たのであった。
翌朝、二人はヘラジカを訪ねたがまだ不在であった。予定では明日帰ってくるとのことなので、もう一日待つこととなった。
そうして更に翌日
「流石に、今日は居るでしょう」
「居なかったら一度ライオンさんに報告に行きましょうか」
アミメキリンとつなぎは元気一杯であった。なんだかんだ激しいバトルをしたりした次の日別のちほーに行くことを繰り返していた為、見えない疲れも溜まっていたようである。
「あ、おはよう。ヘラジカ戻ってきたよ」
入り口近くにいたハシビロコウにヘラジカが居ることを確認し、奥に進む。
そこではヘラジカが、パンサーカメレオンから何やら報告を受けていた。
「…………だったでござる」
「そうか…………」
ヘラジカは目を瞑ってカメレオンの話を聞いていたが、急に目を見開く。
「決めた! 私は………………」
「ん? ヘラジカが何か言おうとしているわね……」
アミメキリンはヘラジカの言葉を聞こうと近づく。そしてそのあと、ヘラジカの口から驚愕の言葉が発せられた。
「私は……………………可愛くなる!!!」
ヘラジカ、おしゃれ宣言である。
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