第15話 こはんちほーからの出発
※エピローグ回です、説明長めでごめんなさい!
こはんちほーにおける事件、その後の顛末である。
突如出現した巨大神殿が崩壊し、それを目的に集っていたフレンズ達には混乱が起こったが、ビーバーより直々に説明され、事態の真相は周知されることとなった。
フレンズ達はセルリアンの仕業、という理由はとても納得出来るようで、皆、特に疑問は抱かなかったようだ。
そしてフレンズ達の興味は、急遽召集された出張ジャパリカフェへ移っていた。
「体調悪い子はいない? この紅茶飲むと気分良くなるよぉ、みんな飲んでってぇ! はいどーぞ、はいどーぞぉ!」
神殿に通っていたフレンズ達にはアルパカによって紅茶が振る舞われ、知らない間にサンドスター・ロウに蝕まれた体は、こっそり浄化された。
同時に紅茶の美味しさも伝わってしまい大盛況だ。出張ジャパリカフェが終了し、こうざんへと帰る際に何人かはそのまま着いていってしまった。
仮面フレンズFOXは、戦いが終わった後忽然と姿を消していた。
後には「セルリアンある限り私は死にません」と書かれた紙と、いなり寿司が置かれていた。いなり寿司はつなぎによって他のフレンズに渡る前に完食されてしまい、謎は深まるばかりであった。つなぎ以外日本語読めないし。
謎のままだったセルリアンの出現経緯はビーバーから少し聞き出すことが出来た。
「プレーリーさんに催眠術をかけられた後、気分が良くなって森を散歩していたら、見馴れないピンク色の家みたいなものが建っていたんすよ。これは中を見てみようと思って、入ったら、段々と意識がはっきりしなくなって、この建物にジャパリまんをあげて育てたいって気持ちになってきて……」
「あげてるうちにあんなに育ってしまったと…… やっぱり、この事件の犯人はあのセルリアンだったのね」
ビーバーがセルリアンの力を借りて産み出した建物達は後から調べたが特にサンドスター・ロウは含まれていないようだった。
この時に作られた巣は、後にキョウシュウエリア随一の巣作りの名人、アメリカビーバーの生涯における中期作品にあたり、マニアなフレンズの間で超高額なジャパリまん数で取引されるようになるのだが、それはまた別のお話。
そうして事件のごたごたもあらかた解決した頃、アミメキリンとつなぎは次のちほーへ出発しようとしていた。
「もう行ってしまうでありますか……」
「ちょっと寄り道しちゃったけど、元々の目的地はとしょかんなの。そろそろ行かないと」
色々どったんばったんしていたこともあり、予定よりも遅れている。もう少しゆっくりしていたい気持ちもあるが、そうもいかないのだ。
「本当に助けてもらってありがとうッス。お礼を考えていたんすけど、お二人ともあちこち旅しているようなので大きいものは邪魔になるし、トキさん達とも相談して……これを受け取ってほしいッス!」
ビーバーは二人にチケットの様なものを1枚ずつ渡す。チケットには、ひらがなで“このは“と“みみ“と書かれている。
「これ……何ですか?」
「としょかんに行くのならへいげんちほーを通ると思うので、そこで役立つと思うッス。使い方については、向こうで直接聞いて下さいッス」
「……? 分かったわ、ありがとう」
二人はそれを受けとり、ポケットに入れる。お礼を貰うため戦った訳ではないものの、そう含みを持たせられると期待してしまう。一体どんな意味を持つものなのだろうか。
「これも持っていって欲しいであります! 自分達を助けてくれた、彼女を木彫りの人形にしてみたのであります! 旅先で本人に会った時、渡して欲しいであります!」
プレーリーから手渡されたのは、仮面フレンズFOXの木彫りフィギュアであった。迫真の出来のそれは、本人に渡したらすごく引きつった笑いをされるだろう。
「トキ殿達はカフェの手伝いで忙しく、顔を出せないそうであります。彼女達もありがとうと伝えてと言っていたであります!」
「はい、昨日ご挨拶したので、大丈夫です!」
実は彼女達にもお礼の品を貰っていた。大きめのサイズの水筒だ。中にはまた特製紅茶が入っている。
水筒があれば、これから先の旅でも水に困りづらくなる。フレンズでも使えるヒトが作ったアイテムは、このジャパリパークでは貴重品だ。
「じゃ、そろそろ出発ね」
アミメキリンがそう言うと、ビーバーとプレーリーは少し真面目な表情になり、最後に伝えたいことを話始めた。
「おれっちはビーバーさんとペアを組むようになってから、何だって出来ると思っていたッス。でも、二人でも失敗してしまったときにどうすればいいか分からなくなって…… そんな中でも助けてくれた、本当に感謝してるッス!」
「自分達と同じように、きっとお二人だけでは上手くいかないことがあると思うであります…… そんなときは、もっとたくさんのフレンズを頼って欲しいであります! 困難は群れで分け合え、と誰かが言っていたでありますが、そうすれば何だって出来るでありますよ!」
二人は最後に握手をしてくれた。プレーリーのご挨拶は回避した。
「ありがとう、二人とも。それじゃ、またね!」
「行ってきます!」
「「いってらっしゃい」ッス!」であります!」
ビーバーとプレーリーに見送られ、二人は歩き出す。次のちほーは、へいげんちほー。二人の強力なフレンズ率いる軍団による戦いが行われているというが、一体、どんなところだろうか? きっと、また何かが待っているだろう。アミメキリンとつなぎは不思議とそう確信していた。
離れたところの木の上から、出発の様子を観察しているフレンズがいた。オイナリサマである。
「彼女達を守ってあげるつもりだったのに、悪いことをしました……」
少し悲しそうに彼女は言うものの、あのセルリアン自体、もう倒す寸前までは行っていた。彼女がいなければアミメキリン達になすすべは無かったと言える。
「ま、あいつらも成長してるってこと! アミメキリンもちょっとずつ賢くなってるみたいだし!」
オイナリサマの頭の中に、さばくちほーの遺跡の中にいる彼女から、少しやかましめなテレパシーが入る。
けものプラズム100%の彼女達同士だから出来る、遠隔会話だ。動き回っているためかガシャガシャ鎧の音が響いてきて聞き取りづらい。
「それは結構な事です。手強いセルリアンも出てくる様になっていますし、あなたにも働いて貰わないと」
「やだやだやだ~! 私はセルリアンも殺したくはないんだぞ! セーバルの事知ってて良くそんなこと言えるな!」
「だからこそです。残念ながら悪いセルリアンが大半…… 私だって、理解し合えたらと思いますがすぐには難しいです。逆に言えば、必要なら他者を傷つけるフレンズも抑えなければと考えています」
そこまでいってオイナリサマは右手に持っていた何かを掲げる。
「あのセルリアンを倒した後、回収しておきました。これは動物を運ぶためヒトが使う、持ち運び用のケージ…… 今回のセルリアンの正体です」
「そうか、やっぱりな…… ヤギだったか、やっぱりー」
「………………………………きっと、他の物も島中にセルリアンとなって潜んでいます。それも、フィルターが機能しているにも関わらずサンドスター・ロウを持って。大きな災いを呼び起こさなければ良いのですが……」
強い風が吹き、木々をざわつかせる。それがおさまった時、オイナリサマの姿はそこには無かった。
こはんちほー 奇跡の紅茶と反逆のアミメキリン 完
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