第13話 仮面フレンズ

※全話から転じて終始ギャグになります。仮面フレンズの使用許可を下さった気分屋様、ありがとうございます!


そして物語は2章冒頭のシーンへと繋がる。


 ありったけのジャパリまんを食べ、一晩ぐっすり休んだ一行は神殿の二階テラスに集っていた。



「ああ、何でこんなことになったのかしら」  


 アミメキリンは考える。ビーバーがおかしくなってしまったのはプレーリーの催眠術のせい──────ではないはずだ。


「そもそも、催眠術とセルリアンは関係ないと思います。暗示でセルリアンを産み出せる何て、流石に常識はずれとしか……」


 サンドスターは何でもありのとんでも物質だが、基本的に分け与えることは出来ない。物質に自らのサンドスターを与えセルリアンを作り出し操れたらすごく強そうだが、そういう使い方はできない。

 つまるところ、フレンズがセルリアンを作ることは出来ないのだ。


「そう、この事件のポイントはそこよ。ビーバーがセルリアンを作ったのではなくセルリアンがビーバーをあの状態にしている」


「あとはビーバーさんに聞いてみるってことですね」


「そうよ。……皆、準備はいいかしら!」


 アミメキリンはそう呼び掛けると、周囲のトキ、ショウジョウトキ、プレーリードッグはうなずいた。


「よし……とつげき!」


 2階の扉より全員で中に突撃する。全員で吹き抜けから飛び降り、一階の玉座の前へと降り立つ。


「……決まったわ!」


 ホラー探偵ギロギロの中でも名シーン、逃げる犯人の前に降り立つ場面そっくりに登場でき、アミメキリンはご満悦であった。

 ちなみにそのシーンは、オオカミ先生によって、良い子の真似するフレンズが出ると危ないと思い、後に改稿されている。真似したのでアミメキリンは悪い子のフレンズである。


「フッフッフッ………… そろそろ来る頃だと思っていたッスよ」


 不敵に笑うビーバー、その様子は自信たっぷりであった。しかし傍らには誰もいない。


「この前みたいに守りのフレンズはいなくていいのかしら?」


 アミメキリンの指摘にも、ビーバーは動じない。


「あんなやつら何匹いた所で、そこの鳥二匹が自慢の美声とやらで歌ったらすぐ使い物にならなくなるッスよ」


「むふ、美声だなんて……照れるわね」

「どーしてもって言うんだったら歌ってあげないこともないんですけど!」


「ほめてねーッスよ!!」


 悔しそうに地団駄を踏むが、トキ組は自分達の世界に入ってしまっていた。


 しかし、本題に入らなければ話は進まない。

 アミメキリンがプレーリーの方を見ると、彼女は頷き前に出てビーバーに訴えかける。


「ビーバー殿! 何故ビーバー殿はこんなことをしたのでありますか!」


「もう二度と、あんな風に悲しいことを起こさないために、絶対的な建築の力を手に入れる為ッスよ!」


「家はどんなに丈夫でも、壊れるものであります! だからおれっちが建て直すんだって、いつも言っていたではありませんか!」


「いいや、壊れるのは不幸ッス! 絶対壊れなければ、誰も悲しまないッスよ!」


「そのためにセルリアンの力を使って、最後に泣くのはビーバー殿であります!」




「ねぇ、貴女たち白熱してるところ悪いけど……………… 距離、近くない?」


 先程から白熱の舌戦を繰り広げている二人だが、その顔と顔の距離は約10センチであった。


 フレンズ同士の互いの距離感を、パーソナルけもスペースというのですよ。近づいても不快感を抱かない距離の事で、15センチ以下だと“つがい“並みと判断しているのです(by はかせ&じょしゅ)



「ええーい!! ビーバー殿はわからず屋であります!! こうなったら……」


 プレーリーは懐から、アルパカ特性ブレンド紅茶を取り出す。つなぎからこっそり水筒ごともらっていたのだ。


「な、なにッスかそれは……?」


 怯むビーバーも気にせずその紅茶を口に含み、そして────────



「ひっはふほ、ほはひはふへはひはふ(必殺の、ご挨拶であります)!!」









 数十秒後、ぐったりとしたビーバーをプレーリーが抱え、一行は神殿を後にしようとしていた。


「ぶっちゃけビーバーもプレーリーに止めて欲しかったのね。本気で抵抗されてたら凄い事になっていたわ、きっと」


「そうですね、皮肉にもサンドスター・ロウで人格が少し変わっていたせいで、トラウマも吹き飛んでいたようです。プレーリーさんだけに止めて欲しかったから、止めに来た他のフレンズは拒絶していたと」


「それで閉じ込められ続けたこっちはたまらないんですけど……」


 ショウジョウトキは恨みを込めた目線でビーバーを見るがビーバーは安らかな顔で眠っていた。


「……怒る気力も無くなったんですけど」


 ははは、とアミメキリンもつなぎもプレーリーも笑う。


 しかし、トキは笑っていなかった。元より、一連の話を聞いておらずじっと上を見上げている。


「ねぇ、この神殿って実はセルリアンなのよね? この後どうするの?」


 トキの質問に、アミメキリンは少し考えて返す。


「うーん、壊したいけど暴れられたら嫌だし、腕利きを集めて万全の態勢でぶち壊しましょう。へいげんちほーには強いフレンズが多いはずだから、声をかけて……」


「そうなのね。……でも、その余裕ないかもしれないわ。この神殿の天上って、目玉なんてついていたかしら……?」


 その言葉を受け一行は上を見上げる。

 そこにいるフレンズ全てを飲み干せそうなほど巨大な目玉が、天上から彼らを見つめていた。



「たたた退却でありまーす!!」


 プレーリーの言葉に従い出口へと急ぐ一行。しかし、そう簡単には出られるはずもない。


「嘘! 出口が塞がって行くわ!」


 先程ビーバーを倒したときに開いた一階の出口が、閉まり始める。


「ガアァッ!!」


 一足早く扉にたどり着いたつなぎが、野生解放し扉をこじあけ退路を確保する。


「早ク!」


 他のフレンズは急いで扉をくぐる。最後のプレーリーが外に出た瞬間につなぎも手を離し扉から出るが、その足に黒い触手がまとわりつき、中へと引き込もうとする。


「グッ…… 舐メルナ!! 引キチギッテヤル……!!」


 まとわりついた触手を力業でどうにかしようとするが、それを察知したセルリアンに、逆に遠くへ投げ飛ばされてしまう。


「ウワアアァッ!」


 叫び声と共に、遥か彼方へ飛んでいく。


「た、大変であります!」


「つなぎなら大丈夫、頑丈だから! それよりあれはヤバすぎるわ! 逃げないと……!」


 割りとヒドい扱いではあるが、実際遠くに飛ばされたつなぎよりも自分達の方が近くにいて危険である。巨大なセルリアンはそれだけ直線移動も早い。

 そしてその素早さは予想以上であった。


「無理ね…… 頭上に回られたわ……」


「え!?」


 見上げると、そこには先程まで神殿に扮していたセルリアンが浮かんでいた。しかし、もう擬態はしていない。黒い塊は底に付いた目でこちらを捉え、真っ直ぐに上から落ちてくる。


「ビーバー殿…… 最後まで一緒であります……」

「プレーリーさん…… おれっち、プレーリーさんの事が……」


「やめてそれダメなセリフー!!」 


 アミメキリンが突っ込むも、無情にもセルリアンは止まらない。


「いやああああぁぁぁぁ!!」


ドスゥゥン……!!



「…………あ、あれ? 私、生きてる?」


 もうもうと砂煙が立ち込めるも、傷ひとつついてはいなかった。

 事情が分からないアミメキリンはキョロキョロと辺りを見回す。すると、つなぎ以外の落下地点にいた他のフレンズもまとめて落下地点の真横に移動していた。


「危ないところでしたね」


 声を受けてアミメキリンは後ろを振り返る。砂煙が徐々に収まり、そこにいた何者かの姿が見え始める。


 キツネ耳で全身を白い制服で包み、そしてギンギツネのモチーフのお面で顔を隠した謎のフレンズが立っていた。


「あ、貴女は……?」


 アミメキリンの問いかけに、そのフレンズはこう答えた。


「“ギン“の仮面に白ブレザー…… 私は、仮面フレンズ FOXフォックス!!!」



 ─────突如現れた謎のフレンズ、彼女の正体とは……

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