第11話 神殿の正体
アミメキリンが目を覚ましたとき、それが分からないくらい真っ暗闇の中にいた。
「いてて…… 酷い目にあったわ……」
体中がズキズキ痛む。
「確かビーバーとその仲間(?)に囲まれて、その後……」
起き抜けで混乱している為、少し頭の中を整理する。
「そうだったわ、脱出出来ず穴に落とされたのよね」
起きたからかサンドスターが活性化し、怪我した部分がキラキラと輝いている。擦りむいた手を上にかざすと、暗闇の中をサンドスターが照らしてくれた。
5メートルほど上に天井が見え、しかしそれが神殿の壁と同じような石で出来ているのを見て顔をしかめる。
「出口はないみたいね…… つなぎは近くにいるのかしら」
軽く探すと、少し離れた所で横たわっているのを見付けた。まだ目が覚めてはいないようだ。
「大丈夫? 起きて」
軽くゆさゆさ揺すると、小さなうめき声と共につなぎも目を覚ました。
「ううん…… あれ、ここは……」
「ビーバー達に落とされた穴の下よ」
「そうでした、落ちて、それで……」
つなぎも天井が塞がっていることに気がつき、項垂れる。
「出られないんですね……」
それもそうだったが、アミメキリンはそれよりも彼女の怪我を治すサンドスターの光がほとんどないことが気になった。
「つなぎ、貴女どこか怪我していないの?」
「え? えーと、あちこち擦りむいているみたいです……いたた」
「さっきの野生解放の影響かしら…… 怪我した所を治すサンドスターが少ないわ」
アミメキリンはつなぎが擦りむいた所に手を当てる。アミメキリンの手から溢れたサンドスターが、つなぎの怪我も治していく。
「気持ちいいです…… でも、アミメキリンさんのサンドスターが……」
「気にしなくて良いわ。名探偵ってのはね、体が資本なのよ。この程度、問題じゃないわ」
そのまましばらく沈黙した時間が続く。真剣なその表情を見て、つなぎはぼそっと呟く。
「アミメキリンさん、黙ってるとかなり美人なんですよね……」
つなぎが起きて彼女を見た瞬間もそうであったが、暗闇の中サンドスターの煌めきをまとう姿は美しすぎた。天使か。
「何か言ったかしら?」
「いえ、何も……」
「そう? ならいいわ」
治療を続けながらポケットを漁り、そこに入れていたジャパリまんを取り出す。
「潰れちゃってるけど、食べておきなさい。体力が復活したら、脱出手段を探すわよ!」
「ですけど……」
「ですけど、何て言っている暇はないわ!」
「え? 今僕喋ってませんよ……?」
「あら、そう?」
そう言われ、アミメキリンは横を見る。すると、そこには満身創痍でこちらに這ってくるフレンズがいた。
「い、いちゃつかないで……欲しいんですけど………… あと……そのジャパリまん……欲しいんですけど………………」
トキとそっくりだが全身朱色、探していたフレンズ、ショウジョウトキがそこにいた。
「ま、まぁ半分感づいていたわ、いるとしたらここしか無いものね」
「もぐもぐ…… 実に5日ぶりのジャパリまん…… もぐもぐ…… 激ウマ(ドヤァ)!」
ショウジョウトキはだいぶ元気を取り戻していた。
「落ち着いたところで、話を聞いても良いですか?」
アミメキリンは絶賛穴の中を調査中なので、つなぎが代わりに事情聴取を行う。狭い穴の中なので、どちらにしろアミメキリンも聞いているのだが。
「分かったんですけど。ビーバーに注文した物を取りにログハウスに行ったのだけど、誰もいなかったんですけど。そしたらビーバーがここにいるって他のフレンズに聞いて─────」
───────────────────
「こんにちはー 誰か返事して欲しいんですけどー?」
神殿の入り口は閉まっていたが、2階から入れるショウジョウトキには関係無かった。
「うーん、留守なのかしら」
キョロキョロと探し回っていると、玉座の後ろに怪しげな穴が空いていることに気がついた。
「まさか、床が抜けて落ちてしまったとか……いやまさかですけど、でも万が一……」
穴の中に入っていくと、奥に通路が延びていて、その先に小部屋があった。入り口には扉等は無く、ビーバーの後ろ姿が見える。
「やっぱりいたんですけど!」
急いで飛んで近づくが、距離が近くなるにつれ何かが奥にあることに気がついた。黒くぶよぶよしていて、どくん、どくんと脈打っている。
「ふふふ…… 皆から献上されたジャパリまんで、この神殿はもっともっと大きくなるッス…… そしておれっちも強くなる…… そうすれば、もっともっと……」
あまりの異様な光景に、見付かればまずいと思ったがつい呟いてしまった。
「な、何あれ……?」
その瞬間、ビーバーが後ろを振り返った。
「見たッスね…………?」
───────────────────
「その後の事は、覚えていないんですけど。気がついたらここにいたの」
ショウジョウトキは話終えて疲れたのか、ふぅと溜め息をつきその場に横になる。
長い間の監禁に精神も限界に近かったのかも知れない。自分以外のフレンズが現れたことに安心したのか、そのまま5分もしないうちに、すぅすぅと寝息をたて始めた。
「なるほどね…… 半分くらい謎は解けたわ」
周囲を調べていたアミメキリンはつなぎ達の元へ歩きながらそう言った。
「僕も分かりました。あの神殿の正体は恐らく……」
「セルリアン、それも大型の。そして、黒いということは、サンドスター・ロウから生まれたということになるわ」
サンドスター・ロウは火山から発生するが、通常は四神と呼ばれる石盤によって張られたフィルターにより、サンドスターに浄化されるため通常には存在しない。
「もし神殿の正体が黒セルリアンだとしたら、火山のフィルターが無くなっていたら倒せないわ。かなりまずい状況かも……」
アミメキリンはそこまで言ってふと、自分はなぜ聞いたこともないサンドスター・ロウや四神のフィルターについて知っているんだろうかと疑問に思った。しかし、実はどこかで聞いていたのだろうと、あまり深くは考えなかった。
「フィルターとかはよくわからないですが…… なぜビーバーさんはセルリアンを育てるようなことをしているんでしょう? セルリアンはフレンズ共通の敵だと思っていたのですが……」
「その辺を推理するには、まだ情報が足りないわ。ひとまず、ここから脱出しないと……」
そう言ってアミメキリンは壁を触る。固い壁だが、土なので掘れなくはない。
だが、アミメキリン達が掘る必要は無かった。アミメキリンが触った壁が、ボロボロとくずれだす。
「な、何かまずいことしちゃったかしら!?」
慌てるアミメキリン、しかし、すぐに崩れはおさまり、フレンズ一人がちょうど通れそうな穴が開く。そして、その向こうからひょこっと一人のフレンズが現れた。
「こんにちはであります! 自分はオグロプレーリードッグ、トキ殿の要請を受け、助けに参上したであります!」
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