第2話 じけんは橋で起こる
川をイカダを引いて泳いでいるフレンズがいた。スカートの丸っこいわっかの中に点々の模様がありますやんか、彼女がジャガーです。
普段から川をわたれない子を運んであげており、今日も何人か運んであげた帰りだが疲れを感じさせない元気な泳ぎである。
彼女は他のフレンズを運びながら他愛ない話を聞くことを楽しみにしていた。だが、最近は皆が同じことを口にしていることが気になっていた。
(ここ数日セルリアンに襲われるフレンズが増えている、でもどこにもセルリアンが見当たらない……か)
セルリアンはフレンズの天敵で、食べられるとサンドスターを吸いとられ、ただの動物に戻ってしまう。
その為危険なセルリアンの情報はすぐに広まり、大抵はハンターによってすぐ倒される。こんな風に何日間も放置されることはまずない。
(これ以上被害が増えるのなら、じゃんぐるちほーの皆で協力してしらみ潰しに探すしか無いかなぁ)
そんなことを考えながら泳いでいると、かつてかばん達と一緒に直したあんいんばしが見えてきた。
「このはしが出来てから渡りたい子もだいぶ減ったけど、ジャンプが苦手な子はやっぱり渡るのは辛いんだよねー」
独り言を呟きながら泳ぎ、やがてはしに近づくと、何かが引っ掛かっていることに気がつく。
青い服を着た見たことないフレンズと、そのフレンズの手をつかみもう片方の手でロープをつかみ流されまいとしているアミメキリンであった。
「だ、誰か……たすけて~!!」
かろうじて耐えている様子だが、いつ流されてしまうか分からない状態であった。
「もうだめ~! げ、げんかい……」
「う、うわぁヤバい助けないと!?」
引いていたイカダも放り出して急ぐ。力強い泳ぎは川に流されることはなく、ほどなく彼女達の元へたどり着く。
泳ぎの得意な彼女の活躍によって、アミメキリン達は九死に一生を得たのである。
「し、死ぬかと思ったわ…… ありがとう、ジャガー……」
川から引き上げられた体勢のままお礼を言うアミメキリン。助け出されてほっとしたこともあり、全く力が入らない。
「それはいいんだけど……」
ジャガーが視線を移した先には、未だに動かない青い服のフレンズがいた。こちらも川から引き上げたままうつ伏せに置いていたので、両手でよいしょと仰向けにひっくり返す。
「見たことない子だねぇ……」
黒く長い髪と白く透き通った肌、動かない彼女はそれだけならまるでお姫様の様であった。しかし、来ている服はお姫様には似つかない丈夫そうな青い布で出来ており、上下一体になっているそれはおよそフレンズの服とは思えない。
「私、心当たりがあるわ……」
いつのまにかジャガーの隣に立ち、話し始めるアミメキリン。先程までぐったりとしていたのに、なかなかのタフさである。
「前にロッジでボスが映像を流してそれが幽霊と勘違いされるじけんがあったわ。そして、その時の映像には似た服装のヒトが映っていたのよ」
過去にロッジで見た映像と結びつけ、ここに来て驚異的な鋭さを見せるアミメキリン。
ジャガーは「え? 本当にアミメキリン?」という顔で見返す。
しかし勘違いしないでほしい。彼女はフレンズの特徴を見分ける洞察力には優れているのだ。
「そう、彼女は………………ヤギね!!」
ただ、正しい結論が導き出せない……だけなのだ。
「ぜ、全然違うだろ…… 今ヒトって言ってたよね?」
「うっ!? そ、そうそれよ! ヒトって言いたかったのよ!!」
「えぇ~……」
その後もやいのやいのと言い合う二人。
そのやりとりは彼女が目を覚ますまで続けられた。
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