第四章

第四章

製鉄所

懍のスマートフォンが鳴る。

懍「はい、青柳でございます。ああ、華岡さん。どうですか、彼女の身元は?あ、そうですか。わかりました。じゃあ、彼女をここで預かれと。少しお待ちくださいね。」

と一度スマートフォンを机に置いて、

懍「水穂さん、空いている部屋はありますでしょうか。」

水穂「ええ、二つぐらいあると思いますけど。」

懍はもう一度スマートフォンを取る。

懍「今、水穂さんに聞いたらあるそうです。じゃあ、確認が終わり次第、連れてきてください。お待ちしていますので。」

と、電話を切る。

水穂「あの、彼女が、ここに来るんですか?」

懍「はい。彼女の両親に連絡をしてみたそうですが、一向に連絡がつかないので、とりあえず、こちらで預かってくれという、華岡さんの要請でした。」

水穂「彼女の名前は、、、?」

懍「高橋香織さんというそうです。相当衰弱しているようですので、調理係りに、滋養の着くものを作るように言ってください。何とも身長が五尺ほどあるらしいのに、体重は、20キロ前後しかないらしいので。」

水穂「ああ、わかりました。せめて、あの匂いだけはとれているといいのですが。」

懍「そこは、警察で何とかするでしょう。」

水穂「意思の伝達は、」

懍「それは、可能のようです。歩行も問題ないそうですよ。」

水穂「わかりました。じゃあ、ちょっと伝えてきます。」

と、厨房に向かって歩いていく。

数分後。セダンが、製鉄所の入り口の前に止まる。

声「さあここですよ。立てるかい?」

声「ええ。」

声「無理はしないようにね。」

声「大丈夫です。」

がらっと、製鉄所の引き戸が開く。

華岡「教授、連れてきましたよ!高橋香織さんです。」

華岡と一緒にやってきた女性は、骨と皮ばかりで、女性というより、髭のない小人と言ったほうが正しい表現と思われるかもしれない。あの時の強烈な匂いこそ取れているが、髪は相変わらず雀の巣だし、目の位置もどこかうつろで、焦点が定まっていなかった。立っているのもやっとという感じだ。

水穂「こんにちは、僕は磯野水穂です。ここには、だれも怖い人はおりませんから、骨休めのつもりでゆっくりしていってくださいね。」

香織は、まじまじと、水穂の顔を見つめる。

水穂「どうしたんですか?」

香織「右城さんだ。」

華岡「違うよ、この人は磯野さんだよ。」

水穂「確かに僕の旧姓は右城ですが、どうしてそれを前もって知っているんです?」

香織「クラシック、好きだったんです。」

華岡「何、それは本当か!なんで警察署で言わなかったの?」

水穂「聞いていたんですか?」

香織「ええ、小学生の頃でしたけど。」

華岡「詳しく教えてくれ。小学生のころに、なぜ、水穂の演奏を聴きに行ったんだ。それはいつどこで、だれと行った?」

水穂「華岡さん、ここは取調室ではないんですから、ここで根掘り葉掘り聞くのはやめてもらえますか。ほかの寮生もいますから。」

華岡「だって、警察署では一言も話さなかったのに、今になってやっとしゃべってくれたんだぞ!」

水穂「そうですけど、彼女は休むことも必要です。」

華岡「貴重な情報だったのに。なんで署で言ってくれなかったんだ。」

水穂「それは、華岡さんの取り調べが下手だから。」

華岡「すまん。俺は、華岡先生と同じ姓なのに、なんでこんなにダメな刑事なんだろう。」

水穂「まあ、よく振り返ってみることですね。」

華岡「とりあえず、俺はまだ捜査会議があるので、署に帰るが、もし、重要なことをしゃべったら、すぐに連絡をよこしてくれよ。じゃあ、頼むな!」

水穂「わかりました。でも、僕らは警察ではないのですから、しつこく聞いたりはしません。」

華岡「頼むぞ!」

と、軽く一礼し、足早に製鉄所から出ていく。

水穂「どうぞおあがりください。」

香織「お邪魔します。」

暫定的に、警察で与えられたジャージ上下を身に着けていたが、それはぶかぶかで、何とも歩きづらそうだった。

しっかりと靴を脱いで、製鉄所の中に入る香織。裏庭では作業をしているので、時折火がどうのと声が聞こえてくるが、彼女は怖がっている様子はなく、落ち着いていた。

水穂「こちらにいらしてください。」

彼女を応接室へ連れていく。

応接室。

水穂「教授、高橋香織さんです。」

ドアを開けて中へ入る二人。

懍「ずいぶん歩きにくそうですね。ジャージのズボンの裾が、汚れていますし、袖も長すぎます。普通の女性用の服では、明らかに大きすぎるのでしょうね。これでは、転倒する可能性もありますね。」

水穂「でも、子供服では、彼女の年齢にあいません。子供服のデザインは、幼稚ですし。それに、転倒したら、酷い怪我につながるでしょうね。」

懍「ではこうしましょう。女性の利用者さんに、小紋を持っている者がいないか、聞いてみてください。着物であれば、多少融通が利きますし。」

これを聞きつけた女性の寮生が、応接室にやってくる。

女性寮生A「あたしあります!こないだ、お和裁士さんが作ってくれた、あれをお貸しします。」

水穂「ああ、由紀夫さんが持って来てくれたものですか。」

懍「わかりました、由紀夫さんには申し訳ありませんが、少しの間、香織さんに貸してやることにしましょう。」

女性寮生A「すぐに持ってきますから!」

と、居室に走っていく。

戸惑った顔をする香織。

水穂「いいんですよ、ここの人たちは、みんないい人たちで、怖い人はいませんから。だって、現実問題、そのジャージでは明らかに歩きにくいでしょうしね。」

女性寮生A「持ってきました!」

と、例の小紋を見せる。

女性寮生Bも入ってくる。

女性寮生B「ついでに彼女に着付けと、髪を切ってあげます。だって、こんなぼさぼさではかわいそうです。わたし、外の世界では、美容師見習いですからね。」

水穂「ここは二人のお言葉に甘えてしまいなさい。そのほうがいいですよ。」

香織「わかりました。」

女性寮生A「じゃあ、男性の前で髪を切られるのも恥ずかしいだろうから、こっちに来てくださいな。」

香織はふらふらと立ち上がる。

懍「二人とも、作業は短時間にしてくださいね。彼女が、疲れてしまうと、かわいそうですからね。」

女性寮生B「わかりました。そうなるように心がけます。」

水穂「とりあえず、かわいくとか、あんまり意識せず、今回は簡素にしてあげてくださいよ。」

女性寮生B「いいえ、水穂さん、いくら短時間で簡素と言っても、私はかわいい髪形しか、できませんから!」

水穂「でも、気を付けてくださいね。」

女性寮生A「わかっております。じゃあ、香織さんだっけ、行きましょう。」

香織「はい。」

と、女性寮生たちと一緒に応接室を出ていくが、その背中は大人というより、虐待された幼児のようだった。

水穂「大丈夫ですかね。」

懍「そうですね。あの二人がやたらいじらないとよいのですが。」

水穂「見に行ったほうがいいんじゃありませんか?」

懍「いえ、ここは彼女たちに任せましょう。」


一方、女性寮生の部屋。

女性寮生B「帯もそんなに強く締めないから安心して。なるべく、楽になれるようにしてあげるからね。それにしても、本当にかわいい顔しているわね。」

髪を切った香織は、意外にもかわいらしい顔つきだった。いまどきのかわいらしさというより、ちょっと古風なかわいらしさといった感じか。

女性寮生A「でも、おは処理もこんなにだぼだぼに出るし、ちょっとかわいそうだわ。」

確かに、半幅帯の下に出る、おは処理は長く、尻まで達していた。

女性寮生B「まあいいじゃないの。これから、だんだんに回復していくでしょう。もう、貴女を、そこまで追い詰めた、悪い人だって、そのうち華岡さんたちが捕まえてくれるわ。」

女性寮生A「あんまり警察の話はしないほうがいいんじゃない?」

女性寮生B「ごめんごめん。じゃ、帯結びをしよう。まだ若いんだし、お太鼓風の結び方はやめるね。」

女性寮生A「文庫のほうがいいわ。そのほうが、彼女には似合うと思う。」

女性寮生B「おっけ!じゃあ、かわいらしいく、二重文庫にしよう。」

と、赤い色の半幅帯を手際よく二重文庫に結ぶ。

女性寮生B「ようし、できた!ほら、ずいぶんかわいくなったじゃない。今までとは全然違うわよ。これで少しは心が癒されたかな?外見を劇的に変えることは、トラウマに効くって本に書いてあったわ。」

女性寮生A「まあ、これから癒されていくんだろうけど。」

香織「ありがとうございました。」

女性寮生B「いいよ、敬語なんて使わなくて。私達、そんなに偉くなんかないわよ。」

香織「は、はい、、、。」

ドアをたたく音がする。

調理係「お食事ができましたよ。」

女性寮生A「あ、お食事だって。」

調理係「食堂へ案内するから、来てくれる?」

女性寮生B「ほら、行ってきなよ。」

香織「ありがとうございます。」

調理係「あんたたち二人も食べる?」

女性寮生A「あたしはもう少し受験勉強をしてからにするわ。」

女性寮生B「私はこれから夕方の仕事が。」

調理係「二人とも熱心なこと。なんでそういう姿勢が、外の世界では評価されないのかしらね。不思議でしょうがないわ。じゃあ、香織ちゃんだったよね。一緒に食堂へ行こう。」

女性寮生A「たくさん食べてきてね!」

女性寮生B「おばちゃんの料理は天下一よ!」

香織「ありがとうございます。」

と、寮生の部屋を出ていく。

調理係と一緒に食堂へ歩いていく香織。食堂には、何人かの寮生たちと、懍と水穂が座っていた。

調理係「はい、そこに座って。」

と、指さされた椅子に香織は座った。

調理係「はい、今日のご飯ですよ。」

暖かい雑炊の入った皿が彼女の前に置かれた。そのおいしそうなにおいに我慢できなくなったらしく、香織はすぐにさじを取って、勢いよく食べ始めた。

水穂「すごい食欲ですね。」

懍「それさえあれば、大丈夫ですよ、彼女は回復します。」

水穂「そうですね。」

調理係「お代わりなら、まだあるからね。」

いうより早く皿を渡す香織。

調理係「はいはい、今持ってきます。」

皿を受け取り、厨房に行って、また雑炊をたっぷり入れて戻ってくる。香織は、あっという間に食べてしまい、これを四回繰り返す。

寮生A「へえ、四杯も食べてらあ。」

寮生B「俺らより食べているよ。」

寮生A「何かわけがあるんだろ。」

寮生B「きっと重大なわけがあるんだな。おい、急いで食べろ。でないと、夜の作業に間に合わなくなる。」

寮生A「また村下さんに怒られるぜ、鉄は待っててくれないぞって。」

寮生B「そうだったそうだった。急ごう!」

急いで雑炊を食べて、製鉄現場である、裏庭に戻っていく二人。

懍「しばらく彼女はそっとしておいてやりましょう。もしかしたら、深く傷ついていたかもしれません。」

水穂「しかし、教授。着物一枚では彼女がかわいそうでしょう。せめて、もう一枚か二枚用意したほうが良いのではないでしょうか。」

懍「ああ、そういえばそうですね。何か用意しなければいけないですね。」

水穂「リサイクルショップ、当たりましょうか。」

懍「それでもいいのですが、この際ですから、明らかな古着ではかわいそうです。なるべく、未使用に近いものを与えたほうがよいですね。」

水穂「そうですね。あした、彼女を近隣の呉服屋さんに行かせましょうか。」

懍「水穂さん、ここから呉服屋さんは少し遠いでしょう。彼女は疲れてしまうかもしれません。かといって、通販では、すぐに入手ができない。」

水穂「それなら教授、あの佐藤由紀夫さんに、試作品で余っているものを譲っていただけるように、お願いしてみましょうか?」

懍「ええ、僕もそれを考えていたところです。食事が終わったら、電話をしていただけますか?」

水穂「わかりました。では、そのようにいたします。」

懍「宜しくお願いします。」


翌日。タクシーが製鉄所の前にやってくる。大きなカバンをもって「たたらせいてつ」と貼り紙された門をくぐる由紀夫。

と、玄関の引き戸がガラリと開く。

懍「お待ちしておりました。こちらにお入りください。」

由紀夫「は、はい。また、制作したものを買っていただけるなんて夢のようです!」

懍「理屈はよろしいですから、お入りなさい。」

由紀夫「は、はい!」

応接室に入る由紀夫。

由紀夫「改めまして、こんにちはです。今日は、また買っていただけるということで、自分でも驚いております。」

水穂「そんなに驚くことではありませんよ。必要がなければ、注文なんかしませんよ。」

由紀夫「すみません、、、。今回、なるべく小さいサイズを持ってきましたが、」

水穂「四つ身をもってきていただけました?」

由紀夫「四つ身?四つ身は、成人女性のサイズではありませんよ?」

水穂「いえ、事情があって、それで十分なサイズの方なのです。」

由紀夫「ええ?でも、裄の長さとか足りないんじゃないですか?それに、おは処理も足りなくなるのではないですか?」

水穂「まあ、その心配はありません。とりあえず、柄を拝見させていただけないでしょうか?」

由紀夫「そんな、この製鉄所には、子供さんはいないと聞いたので、大人用しか持ってきませんでしたよ。」

水穂「あれ、電話した時には四つ身でよいといったんですがね。」

由紀夫「僕の聞き間違えでしょうか、そんなことは聞いてきませんでした。わあ、どうしよう。」

水穂「普通の大人用では大きすぎるのですよ。おは処理が、おしりまでかかってしまいます。」

由紀夫「わかりました!急いで四つ身を縫いまして、また出直してくるようにします!今回は本当に申し訳ございません!」

懍「お待ちください。何しろ、明日着る着物がない状態なので、何とかして一枚は入手しなければなりません。なので、四つ身を作っていただくのを待っている暇はないのですよ。まあ、確かに一尺袖が二尺袖に見えてしまう可能性がありますが、幸い今であれば、二尺であってもさほど気にならないでしょう。」

水穂「教授、いいんですか?」

懍「小紋であれば、裾を縫うとか、おは処理を縫うとか対策はできるでしょう。」

水穂「そうか、総柄ですからね。」

由紀夫「よかったです。幸い普段着とはうかがいましたので、持ってきたものはすべて小紋にいたしました!とりあえず、十枚持ってきましたので、この中から好きなものを選んでください!」

と、カバンの中から、着物を一枚ずつ取り出す。

水穂「へえ、かわいらしいですね。」

由紀夫「ええ、おかげさまで、注文はなかなかこないものですから、普段の練習として縫ったものがこうして溜まってしまう状態でして。それに、毎日暇だから、着物を縫うしか時間つぶしがないんです。」

懍「なるほど。はじめのうちは誰でもそうですよね。」

由紀夫「よろしければ、これ、全部差し上げましょうか。素材はばらばらですが、小紋であることは変わりありませんので。」

確かにその中には正絹だけでなく、紬や、冬用のウールなどもあった。

懍「まあ、確かに反物もリサイクルショップで安く買えますよね。それでこうしていろんな生地で試作品をつくれるわけですね。どれもかわいらしいものですから、いただいておきましょう。彼女も喜ぶでしょう。」

水穂「そうですね、どれもかわいらしいがらばかりですしね。四つ身ではないので、少し彼女には大きいかもしれませんが。」

由紀夫「それは、申し訳ないので、もし、可能であれば、その方に直接お会いできないでしょうか。」

水穂「直接?大丈夫ですかね。」

由紀夫「お願いできませんか。僕、間違えてしまった責任を感じているんです。」

水穂「怖がったりしないでしょうかね。」

懍「彼が、通常通りに接していれば、大丈夫でしょう。水穂さん、連れてきていただけますか?」

水穂「わかりました。では、由紀夫さん、彼女を連れてきますが、彼女はとても傷ついていますから、強引な売り方はやめてくださいよ。」

由紀夫「わかりました!気を付けます!」

水穂「では、行ってきます。」

と、応接室を出ていく。

由紀夫「どんな事情がおありの方なのでしょうか。」

懍「会ってみればわかります。」

由紀夫「相当傷ついているとは、どういうことでしょう、、、。」

懍「百聞は一見にしかずです。暫くお待ちください。」

と、足音がして、応接室に、水穂と香織がやってくる。

水穂「彼女が高橋香織さんです。どうですか、四つ身でいいといった理由がわかるでしょう。」

香織「こんにちは。」

懍「水穂さん、彼女の体のことを強調してはなりません。」

水穂「すみません、失礼しました。」

由紀夫「ちょっと、一枚試着していただけないでしょうか?」

と、そばにあった、正絹の小紋を一枚とる。

香織「わかりました。」

それを受け取って、羽織ってみる。

由紀夫「ああ、確かにぶかぶかですね。これでは、、、。」

水穂「そうですね。でも、着付けに工夫をすれば着られるのではないでしょうか。どうでしょう?」

懍「ええ、僕もそう思います。女性ものの着物は男性と違い、多少サイズが合わなくても工夫次第では着ることができますからね。」

香織「かわいいです。」

由紀夫「香織さん、花柄はすきですか?」

香織「ええ、私鈴蘭って大好きなんです!牡丹とかバラよりも、かわいらしいと思います。」

水穂「感性の良い方ですね。鈴蘭に美しさを見いだせるとは。」

確かにその小紋の柄は、鈴蘭であった。

由紀夫「じゃあ、これ、着ていただけますか?」

香織「着てみたいです!」

懍「わかりました。香織さん、この中から、好きな柄の着物を選んでください。」

香織は、十枚の着物をじっと見る。花柄だけではなく、青海波や、七宝などの伝統文様をまんべんなくいれたものも。

由紀夫「いいですよ、教授!どうせ、資格もない人間が作ったんですから、これ、全部香織さんに差し上げます!値段は、材料費さえあればいいので、一万円で十分です!」

水穂「そう謙遜しなくても。しっかり作られているのに。」

懍「水穂さん、二万円持って来てくれます?」

由紀夫「二万円なんてそんな大金、、、。」

懍「いえ、お受け取り下さい。」

水穂が、机の引き出しから財布を出して、二万円を取り出し、茶封筒に入れ、テーブルに置く。

懍「もっていってください。」

由紀夫はしばらく黙ってしまったが、香織の笑顔を見て、

由紀夫「ありがとうございます!領収書を書きます!」

と茶封筒を受け取り、急いで領収書を書いて、水穂に手渡す。

懍「はい、確かに受け取りました。」

香織「ありがとうございます!」

深々と頭を下げる。

由紀夫「いえ、お礼はこちらのほうです、何度いっても足りません。本当にありがとうございました!」

水穂「では、お気をつけて帰ってね。」

懍「売れたからと言って、浮かれないでくださいよ。」

由紀夫「はい、わかりました!」

と、嘘みたいに軽くなった鞄をもって、入口へすっ飛んで行った。






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