リリアナに金棒

 リアちゃんとの再会を果たして一年と数カ月。

 あれから毎日、午前中は神託の間にてリアちゃんと会話をして過ごしていた。今日も昨日と同じく呼びかけようすれば、驚くことにいつもと違い先にあちらから声を掛けてきた。


 あーあーあー。ただ今マイクのテスト中。ただいまマイクのテスト中。


 私は衝撃を受けた。今までにない出だしである上に、その館内放送の声が内容とマッチして懐かしくもある。


 「!?」


 あの~聞こえてますかぁ?


 「あぁ、ごめん。ごめん。懐かしかったもので思わずフリーズした」


 この出だしの方が喜んでもらえると聞いたもので、さっそく試してみました。


 「いや、喜ぶというか、なんというか。懐かしくはあるけど一発芸披露された感じで………って、リアちゃん聞いたって誰に?」


 ふふふふふ。気になります?気になりますよねぇ。長い間お待たせしました。では、ご紹介しましょう。という前にくれぐれも無礼のないように接し方に気を付けて下さいね。ではでは、今度こそ本当にご紹介しましょう。私の相談相手であり友神であり高位神であるフィーネリーネリア様です。


 はい、初めまして。ただ今ご紹介に預かりました。フィーネリーネリアです。少し長い名前なので略して呼んでもいいですよ?


 わー、なんか嘘臭い番組みたい。リアちゃんと比べて親近感が沸く声音だけど最後何故に疑問形?


 あ~命が惜しいならお勧めしませんねぇー。


 え!?そこまでのことじゃ……。


 フィーネリーネリア様。恐れながら下位ではありますが神である私ですらその呼び方ができないのですよ……と、何やらごにょごにょ話している。果たして神々が巫女と話すのにマイクを使用しているのか不明であるが、二柱の話は丸聞こえである。指摘するほどのことでもなさそうなのでとりあえず無言のまま聞き耳を立て様子を伺うことにした。きっと触らぬ神に崇りなしだろう。


 じゃ、しゃべり方はリアちゃんと同じように接してくれれば嬉しいです。無礼講。無礼講。じゃないと息抜きでこのおしゃべり会に参加しているのに堅いと意味がないんですよね~。


 「初めてお声を拝聴できる喜び恐悦至極にございます。まさか彼の有名な慈愛と豊穣の女神フィーネリーネリア様より加護を頂いていたと今の今まで知らずご挨拶が遅くなりましたこと深くお詫び申し上げます。ご存知とは思いますが私リリアナと申します」


 堅い!!!いや、それより慈愛と豊穣の女神?え、誰がですかっ!?


 「……………………………………」


 あ~。フィーネリーネリア様、自覚なかったんですねぇ。言われた通りフィーネリーネリア様は慈愛と豊穣の女神ですが、今までのまま知らなくても何も問題ないので大丈夫ですよ。


 …………………。リアちゃん、これって……。


 そんなことないですよ。あるわけないじゃないですかぁ。仮にそうだったとしてフィーネリーネリア様が怒ったら私へとばっちりがくるのでぜひその考えは捨てて下さい。


 微かに焦っているリアちゃんの様子から話の内容事態はよくわからないが助けた方が良さそうだと結論に至り、間に入ることにした。幸い声を落として二柱で話していた為、この件には触れず話を変えても問題ないだろう。


 「とりあえず自己紹介はちゃんとしておこうと思ったので堅苦しくなったけど、これからよろしくお願いします。ところで、フィーネリーネリア様は崩して話さないの?」


 はい。よろしくお願いします♪これは癖なんで何時もこの話し方なんです。気にしないで下さい。


 「わかった。ちょっとずっと疑問に思っていたこと聞きたいんだけど……」


 なんですか?


 「なんでフィーネリーネリア様は私に加護を与えようと思ったの?」


 それは、ほら……同郷のよしみ?


 上手く話題を変えれたことに内心微笑んだが、意味がわからない。


 「???というと?」


 私とあなた……リリアナちゃん………。


 「あ、リリで大丈夫」


 こちらの名前に慣れてないから助かります。実は、私とリリちゃん前世は同じ世界で育ってるんですよ。つまり、懐かしき地球。懐かしき日本ですよ。ただ私の場合、死後異世界転生して新たな人生を歩むのかと思ったら実はこの世界の女神様でした~というオチで今に至りますがね。


 「それは……驚き」


 そうなんですよ。そうなんですよ。異世界転生、異世界召喚とか流行っていたから私も!?と期待したらすでにしていたという事実ですよ。それに納得いかないのが異世界転生していた時が普通の人間で戻ってきたら女神様って一体どういうこと!?って思いませんか。だから、リアちゃんに相談された時に憧れの俺様Tueeeeeeeeeeeee~を私の代わりにぜひ体験してもらおうと思ってスキルやギフト与えたんですよ。まぁ、代わりにというとあまりいい気はしないと思いますけど、力なんてないよりあった方が何じゃないですか‼だから、この際そこは気にしないで欲しいです。ただ与えておいてなんですが、私も加護といってもどの位の影響があるか知らなかったんです。まさか一国が滅びそうになるなんて…………実におもしろい‼


 「予想外の反応。……まぁ、こちらとしては有り難い話だよ。実際問題あっても実力行使で何でも解決できるんでね。でも、これからの生活こちらの指示に従えとか言わない……よね?」


 ないですよ。ないですよ。いいませんよ。思う通りにこの世界を堪能してもらって構いません。寧ろ応援します。


 「それならよかった」


 女神様のお墨付きならこの先の人生頼もしすぎだ。


 富と権力を手に入れたら後は結婚ですかね。まぁ、それも王子にアプローチされてるみたいなんで時間の問題ですかね。


 「いや、アプローチされても結婚するとは限らないから」


 えっ!?しないんですか‼


 「今のところ予定なし。例え婚約しても100%結婚するなんて断言しない」


 何故ですか?


 「ん~~。何て言うか…………前世もだったんだけど私好きって感情がよくわかんないんだ。女として年頃になっても恋をしたいというよりそのメカリズムを知りたいという気持ちが強かったかな。だからって調べようとも試そうとも思わなかったし、様々なことに関して興味もなかった。他人どころか自分にさえ無関心だったようにも思うし。異世界転生しても前世の記憶がある為か性格を分析すると似ている所があると思う。別にいつ死んでもいいと思って前は生きてた。でも、実際体験したためか今は生きたいと思ってる。これって私的には凄い変化だと思う。まぁ、人事態違うから変化というと変な感じがするけど……」


 けど?


 「今は自由に生きたい。思うままに行動したい。あの世界は産まれて年を重ねるごとに何かに縛られるでしょ。だから余計に違う世界に来てそう思うのかも」


 つまり……


 「まだ、未来はわからない。好きになったらする!ということ」


 なるほど。まぁ、私としては王子とのハッピーエンドを見たいですが本人がそれを望まないのなら仕方ないですね。影から王子を見守ることにします。


 「…………あっちに加勢しないでよ」


 えぇ、見守るだけです。


 「……………………。リアちゃん、ちょっと聞きたいんだけど」


 何ですか~?


 「フィーネリーネリア様が見守る場合、無意識に影響を与えることってない?」


 あ~~。無いとは言いきれませんが、ほぼありえないので気にしなくて大丈夫ですよぉ~。


 「100%ありえないじゃないのに何を根拠に断言できる!?」


 まぁ~~色々とあるんですよ。察して下さい~。


 「察せない‼寧ろその色々の詳細を教えて」 


 う~ん。私的には話してもいいんですが知ったことにより天罰があるかもしれませんが、いいんですかぁ?


 チラリと見せる闇を帯びた笑顔に背筋が一気にゾゾゾ~ときた。私にとってリアちゃんはクレーマー対応係くらいの認識だったが改める必要がある。


 「わかった。聞かない。リアちゃんとフィーネリーネリア様を信じる」


 それが無難ですぅ。


 ???とりあえず話もまとまったみたい?で良かったです。そろそろ時間ですかね。


 あ、そうですね~。


 では、リリちゃん。今日は楽しかったです。毎日は無理ですが、またお邪魔させて頂きますね。では、失礼します。


 「私も楽しかったので、ぜひまたおしゃべりしよう」


 では、私もまたそろそろいきますね。また明日ぁ~。


 「はいはい。また明日~」


 二柱との会話は無事終わり、こうして強力な後ろ楯を得たリリアナは満足げに自室へと戻っていった。

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