石の上にも七年
生まれてすぐ神殿に渡された私はすくすくと成長していった。
巫女は男子禁制とされている神殿の奥深くで外界と隔てられ育てられる。王侯貴族ではないが巫女という身分は神殿に勤める人々からすればそれ以上の存在であり、周りにはお世話をする女性が数人いた。箱入り娘のような環境にとりあえず不満はなかった。
七歳になると巫女には神の声を聞く仕事が待っている。……と言っても簡単なもので神の話相手になるだけである。
神殿の奥には『神託の間』と呼ばれる筒状の部屋がいくつかある。
その名の通り神々のお告げを聞く場所であり手前から赤、黄、緑、青と各室内は一色で統一されている。最奥には白い部屋があり、どこも入れるのは巫女のみであるが全員が全てに出入り自由という訳ではない。奥に行くほどに高位神の声を聞けるが、それができる者とできない者がいる。巫女にもランクがあるのだ。
そもそも巫女とはただ神の声が聞けるだけの存在というわけではない。神に愛された者のことをいい、額に印されたひし形の色によってどの神位の加護を受けているのかがわかる。これもまた神託の間と同じ五色の色に分けられており、同様にランク付けされている。つまり、全ての間に自由に入ることが許されるのは額に白い印を持つ者・巫女姫だけである。だが、白の間はここ四百年ほど使用されていなかった。
お久ですぅ?
「リアちゃん。何故に疑問形?ですぅ?じゃなくて『ひ』『さ』『し』『ぶ』『り』だよ!」
いや~ほら私たち神からすればそんなに経ってなくても人間からしたら違いますから、久しぶりなのかなぁ~と。
再開を喜ぶ館内放送のお姉さんしかり女神の声とは反対に無礼な態度であることは重々理解しているが荒ぶる感情を抑えると無愛想になってしまうのは仕方のないことだろう。
あれ?あれれ??テンション低くないですかぁ~???
「リアちゃん。再会が七年後って聞いてないよ。今の私にはこれが限界の好意的な態度よ。お陰で文句も言えなかったわ。覚えてる?転生前の私の注文」
えぇ~!?文句ですかぁ。むしろ期待以上のギフトだったでしょ~。褒めてください。宣言通り頑張ったんですよ~。
「確かに『美貌』は今十歳にも満たないのに大陸一の美姫といわれるだけの容姿をしていると思うよ。正直、成長が楽しみだよ」
そうでしょ。そうでしょ~。
「『権力』これも巫女姫と言われる地位にいる私は無敵と言っても過言ではないわ。何せ私の背後には神様がついているからね。無謀にも神に逆らうバカはいないわ」
でしょ~。何所の家に誕生させるか悩んだんですよ。王侯貴族は嫌だけどそれなりに不自由しない生活がしたいと言っていたじゃないですか~。政略結婚をしない家となると平民しかないけど前世のような生活は無理なので巫女として生まれもらうことにしたんですよ。すぐに権力も手に入って不自由もないですし、何より私とお話しできるんですよ!!もうあの転生前の話し合いの時にこの選択しかないと思いましたよ!!!
「リアちゃん、色々考えてくれてありがとう。けど、ちょっと確認したいことがあるんだけど…………」
いえいえ~話し相手の為ですもん。で、確認したいことって何ですか?
「この世界の神様って神位があるよね。その神様の位によって巫女に与える印の色は違う。例えば緑の位の神様が与えられるのは緑の印だけ。ここまでは間違ってない?」
当ってますよ。
「じゃ、緑の位の神様って複数いるよね?一柱の神様が一人の子に加護を与えた場合、加護って緑の位の神様全員から貰っていることになるの?」
ア~~~。聞きたいことはわかりましたが、その疑問に答えるならば加護は一柱の神から与えています。基本、一人一柱です。
「……………………………………。私、リアちゃんのこと下位の神様。よくても中位だと思ってたんだけど……」
ア~~~~~~~。そうですね~。その考えは間違ってませんよ。私のランク赤なんで本来であれば赤い部屋で会話となりますが、特別にこの白の間で話すことを上から許されてるんですよ。というのも、実はですね~。要望があった『美貌』『権力』はすんなり決まったんですけど『知識』にすごく悩んだんですよね。というのもこの世界、ご存知とは思いますが魔法が使えるんですよ。つまり、知識を得るということは様々な魔法が使えるということで何処まで与えようかと悩んだんです。レベルMAXで誕生しても面白味がないかなぁ~と思ったんで最近再会した友神に相談したら『いいなぁ~。最初から俺様最強コースなんて面白そうじゃん』とノリノリになりまして彼女の希望で可能な限りの知識を授けてみました。それでですね~確かに私、下位の神なんですけどその相談した相手が高位の神でして自分も加護を与えるといいだしたんですよ。彼女の加護を得ると他の高位の神々の加護も得るという特典が付くんです!本人は知らないでしょうがね……アハハハハハハ。
「え、その彼女何神なの!?」
いや、なんといいますかぁ。彼女いうなれば天界のアイドルなんです。まぁ、彼女も会いたがっていたのでそのうちお話できると思いますよ。高位神である彼女が印すと私がお話できないので最高神様のにしてもらったんですよ。神位問わずお話できる方法はそれしかありませんからね。彼女のことはこれ以上私の口からはいえませんのでこの件に関しては終わりです。
「わかった。じゃ、その神様についてはもう聞かない。でも、私は普通の巫女でよかったのに凄い待遇なんだけど」
ア~。白い印持ちって数百年に一度しかうまれませんからね~。しかも、ひし形の左右に小さな羽のような模様が描かれているのは最高神様の声も聞くことができることを意味していますから。レア中のレア、スーパーウルトラレアですから大切に大切にされますよ。しなかった時の神の天罰が怖いですからね~。
「天罰って、高位の神になるほど凄いんでしょ?」
そうですね。高位の神が気に入る魂ってなかなかないんですよ。ただその分執着が凄くて大切に大切にしますよ。まぁ、今回は最高神様に気に入られたわけではありませんので呼び出しに応じてくれることはないと思いますが、人に対しては色々と役に立つでしょう。
「リアちゃん。ドヤ顔で『役に立つでしょう』って!これが私の不機嫌の原因だからね」
えぇぇぇぇぇ~~~~~。なんでですかぁ?
「ハクが付きすぎて生活しづらいよっ!!!普通の巫女で十分だったのに巫女姫になるなんて」
それは仕方ないですよ。相談した時点で最高神様の加護は約束されたも同然ですからね。でも、それなら簡単に解決するじゃないですか。持ってる力を最大に使って至福の異世界転生生活に変えればいいことです。
確かにその通りだ。言われた通りに行動するというのも天邪鬼な性格だと自覚しているリリアナにとっては癪に障るが決めた。生きたいようにしたいように暮らそうと決意を胸に彼女の異世界転生ライフは次なる幕を開けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます